地域住民の健康に関する安心・安全に一層寄与するために、我が国の総合健診システムにおいては優良施設機能評価を向上させる取り組みが行われている。その内容は、生活習慣病の早期発見・早期治療に有効な診断技術の革新を進めること、そして健康増進・保健支援のための一次予防を充実させることであり、これらの目標達成に向けて努力がはらわれている。
著者らの本研究においては、総合健診の受診者を対象として、“異常なし”の診断比率に対してこれに関与する機能評価項目の相互の関係についてクラスター解析を行って明らかにすることを目的とした。さらに、全国7地域における健診施設の類似性を俯瞰することを目的とした。これらの目的のために、本学会会誌に掲載された2010年度の全国施設の集計結果を資料として解析が行われた。分析法は、データが複雑な交絡因子から成ることを考慮したうえで、自己組織化マップ(SOM)が採用された。
その結果、「異常なし」と判定された施設の比率においては性差が認められなかったが、地域差が以下のように認められた。7地域のうち、「関東」と「東京」、「東海・甲信越」と「中国・四国」、「北海道・東北」と「九州・沖縄」のそれぞれが機能評価項目における地域特性において互いに近似した関係にあった.
健診で“異常なし”と判定された人の比率は、SOMの要素マップ解析によって、「近畿」地区で最も高く、「東海・甲信越」ではやや高く、一方「北海道・東北」では最も低い状態にあることが示された。
“異常なし”の比率と関係が近い機能評価項目を以下に列挙すると、ヘリカルCTやMRIおよびマンモグラフィの検査機器を導入している施設、専門医が充実している施設、健診フロアが独立している施設、禁煙体制を実施している施設、医師の結果説明がある施設、実施規模が大きくない施設、生活指導・支援やフォローアップを実施している施設、事務職員が多くない施設、特定健診保健指導を実施している施設、特定健診をドック以外の単独では多数を実施していない施設、総合判定における精密検査の指示率が30%未満である施設等であった。
これらの分析結果から、健診実施規模の大小と職員数の充足度に関しては、単に数が多ければ良いとするのでなく、各施設の健診サービスの中身の充実を点検することがより重要な課題となることがあらためて示唆された。すなわち機能評価の各項目の向上に向けて、各健診施設が積極的に取り組むべき内部課題のあることが考察された。
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