総合健診
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40 巻 , 5 号
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原著
  • 加瀬澤 信彦, 徳高 平蔵
    2013 年 40 巻 5 号 p. 495-503
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/01
    ジャーナル オープンアクセス
     地域住民の健康に関する安心・安全に一層寄与するために、我が国の総合健診システムにおいては優良施設機能評価を向上させる取り組みが行われている。その内容は、生活習慣病の早期発見・早期治療に有効な診断技術の革新を進めること、そして健康増進・保健支援のための一次予防を充実させることであり、これらの目標達成に向けて努力がはらわれている。
     著者らの本研究においては、総合健診の受診者を対象として、“異常なし”の診断比率に対してこれに関与する機能評価項目の相互の関係についてクラスター解析を行って明らかにすることを目的とした。さらに、全国7地域における健診施設の類似性を俯瞰することを目的とした。これらの目的のために、本学会会誌に掲載された2010年度の全国施設の集計結果を資料として解析が行われた。分析法は、データが複雑な交絡因子から成ることを考慮したうえで、自己組織化マップ(SOM)が採用された。
     その結果、「異常なし」と判定された施設の比率においては性差が認められなかったが、地域差が以下のように認められた。7地域のうち、「関東」と「東京」、「東海・甲信越」と「中国・四国」、「北海道・東北」と「九州・沖縄」のそれぞれが機能評価項目における地域特性において互いに近似した関係にあった.
     健診で“異常なし”と判定された人の比率は、SOMの要素マップ解析によって、「近畿」地区で最も高く、「東海・甲信越」ではやや高く、一方「北海道・東北」では最も低い状態にあることが示された。
     “異常なし”の比率と関係が近い機能評価項目を以下に列挙すると、ヘリカルCTやMRIおよびマンモグラフィの検査機器を導入している施設、専門医が充実している施設、健診フロアが独立している施設、禁煙体制を実施している施設、医師の結果説明がある施設、実施規模が大きくない施設、生活指導・支援やフォローアップを実施している施設、事務職員が多くない施設、特定健診保健指導を実施している施設、特定健診をドック以外の単独では多数を実施していない施設、総合判定における精密検査の指示率が30%未満である施設等であった。
     これらの分析結果から、健診実施規模の大小と職員数の充足度に関しては、単に数が多ければ良いとするのでなく、各施設の健診サービスの中身の充実を点検することがより重要な課題となることがあらためて示唆された。すなわち機能評価の各項目の向上に向けて、各健診施設が積極的に取り組むべき内部課題のあることが考察された。
  • 高橋 敦彦
    2013 年 40 巻 5 号 p. 504-511
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/01
    ジャーナル オープンアクセス
     慢性腎臓病chronic kidney disease(CKD)は末期腎不全の予備群として、あるいは、心血管疾患の発症や死亡の危険因子として注目されている。総合健診受診者におけるCKDの認知度、自己申告による食塩摂取量と尿中食塩排泄量、CKDスクリーニングとしての推算糸球体濾過率(eGFR)評価法を横断的に検討した。
     2010年10月~2011年8月に総合健診を受診した治療中疾患・経過観察中の慢性疾患のない男女107例(49.6±11.4歳)を対象とした。
     通常の健診項目に加え、本研究用に作成したCKDに関する自己記入式質問紙を施行し、健診当日に回収した。さらに血清シスタチンC、随時尿中Na濃度、随時尿中アルブミン濃度、随時尿中クレアチニン濃度を測定し、推算式により随時尿中NaCl排泄量、eGFRを求めた。
     対象の56.1%がCKDを認知していなかった。尿中NaCl排泄量(7.8±2.0g/日)は、3.3~12.0g/日に分布した。自己申告による食塩摂取の多寡による尿中NaCl排泄量に差はなく、一日の食事量が多いと回答した者の食塩摂取量が多かった(p=0.02)。クレアチニンによるeGFR(eGFRcreat)値とシスタチンCによる(eGFRcys)値は正相関(r=0.576、p<0.0001)を示した。eGFRが 60mL/min/1.73m2 未満であったのは、eGFRcreat値が5例、eGFRcys値が1例であった。尿蛋白とGFRとは直接関連がなかった。
     総合健診受診者におけるCKDの認知度は低く、健診を通じた啓発が必要である。自己申告による食塩摂取量と尿中NaCl排泄量とは乖離があり、問診による食塩摂取量評価の信頼性は低いことが示唆される。CKDスクリーニングには尿蛋白とeGFRの両者を測定する意義があり、加えてeGFRcreat値を用いることにより、CKDの見落としを減らせる可能性がある。
  • 片山 友子, 水野(松本) 由子, 稲田 紘
    2013 年 40 巻 5 号 p. 512-524
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/01
    ジャーナル オープンアクセス
     厚生労働省の2011年の人口動態統計によると、わが国の全死亡数におけるがん死亡数の割合は28.5%で、死因別では第1位となっている。2012年に閣議決定された第2次がん対策推進基本計画に、年齢調整死亡率が上昇している女性のがんへの対策への取組を推進することが掲げられているが、最近、とくに20-30歳代の子宮頸がんの罹患率が増加する傾向にある。
     子宮頸がんの発生原因はヒトパピローマウイルス感染であり、細胞診検査という早期発見に有効な子宮頸がん検診が確立されている。従ってその他のがんとは異なり、その多くは予防可能であり、撲滅が期待されるがんとして注目されている。
     本研究では、この子宮頸がんについて、短大生を対象に、子宮がんや子宮がん検診に関する知識、子宮頸がん予防ワクチン接種について講義を行い、講義前後での意識変化を調査した。その結果、子宮がんに関する知識は低いが、子宮がん検診を受診したいと思っている割合が高いことが認められた。しかし、検査内容がわからないことを不安に感じている者が多いこともわかった。また、子宮頸がん予防ワクチンの認知度も低かった。
     講義前には受診したくないと回答した者のうち半数以上が、講義後、受診したいと回答した。受診したいと回答した者のうち、講義後、受診したくないと回答した者もいた。しかし、無料クーポン券があれば受診すると回答した者もいた。また、同時に行った心理検査の結果、講義を聴講したにも関わらず、受診したくないと回答した者は不安度が高値を示した。
     こうしたことから、がん教育・普及啓発の必要性とがん教育のあり方を工夫することにより、検診受診率が向上する可能性のあることがわかった。
     教育により検診受診率が向上すれば、がんの早期発見に繋がり、さらに、子宮頸がん予防ワクチンの接種ががんの予防に繋がることになるものと期待される。
大会講演
日本総合健診医学会 第41回大会
  • 鈴木 建一
    2013 年 40 巻 5 号 p. 525-533
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/01
    ジャーナル オープンアクセス
  • 松森 保彦, 藤原 悟
    2013 年 40 巻 5 号 p. 534-537
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/01
    ジャーナル オープンアクセス
     頭痛は日常診療や総合検診、脳ドックにおいて遭遇する機会の多い症状の一つであり、頭痛が症候名であると同時に疾患名でもある一次性頭痛と、器質的疾患に起因する二次性頭痛に大別される。国内では約3,000万人以上が日頃頭痛に悩んでおり、そのほとんどが一次性頭痛ではあるが、つらい頭痛が繰り返し起こることは生活の質を低下させ、さらには生産性の低下などにより社会的にも悪影響を及ぼしている。一方、「頭痛には鎮痛薬」という旧来の単純図式的治療から、現在では片頭痛に対する有効な急性期治療薬の開発や頭痛予防治療の確立、また診療技術の進歩などにより、患者の病態に応じたテーラーメード治療を行うことで症状の改善が見込めるようになってきている。しかしこれまでの頭痛診療は、生命予後や後遺症に直結することのある二次性頭痛の鑑別に偏重しがちであり、問診が主体で正しい診断のために時間や手間のかかる一次性頭痛はやや軽んじられる傾向にあった。
     多くの慢性頭痛患者は日常生活支障度の高い頭痛を有するにも関わらず、これまで医療機関において十分な診療を受けることができなかったが、日本頭痛学会は2005年より専門医制度を発足させ、また2006年に発行した慢性頭痛の診療ガイドラインにおいても、頭痛専門医および頭痛外来の設置を推奨し頭痛診療レベルの向上を図っている。
     当院は東北地方における脳神経疾患の基幹病院としての役割を果たしているが、頭痛を訴えて来院する患者の割合も30-40%と多い。頭痛診療は2009年度まで一般外来で非頭痛専門医が対応していたが、2010年度から頭痛専門医による頭痛外来を設置し診療を行っている。この頭痛外来の設置により、特に片頭痛診療において大きな変化が見られた。本稿では頭痛専門医の介入による頭痛診療の変化を紹介し、より良い頭痛診療とは何かについて検討する。
  • 南部 征喜
    2013 年 40 巻 5 号 p. 538-545
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/01
    ジャーナル オープンアクセス
     健康づくりが成功するかの鍵は、健診や保健指導等の受診率の向上と保健指導のスキルアップが握っています。この2つの課題に共通のビジョンは、健康であることの価値観を高めて健康づくりのモチベーションを向上させることであります。そのためには、人々の健診等の意義や必要性の理解が必要であり、一方では、より健康的な生活習慣へ変容した場合の精神的・経済的メリットを身近な問題と関連させて、マスメディアを媒体とした情報提供が必要であります。また、事業主においては、「従業員が健康である」ことの価値観をもち、それによる経営上のメリットを認識した上で、健康づくりの仕組みを構築することが急務であります。
     一方、保健指導の目的は、健康づくりのための自己管理を支援することでありますが、良い生活習慣を実践していない人の70%は無関心期・関心期にあります。このような行動変容ステージにある人々は、特定保健指導6ケ月後に体重が減少する頻度が低いことが判りました。従って、行動変容を起こさせるためには、これらのステージにある人への動機付けが不可欠であります。次に、保健指導を効果的にするには、身体側からの栄養アセスメントが必要です。これは1次・2次予防ひいては健康寿命の延伸にも効果が期待され、一方では個々人の健康阻害要因を明らかにすることによって、その因子を中心にした自己管理を可能にします。
     最後に健康づくりに携わるいろいろの分野の人たちが連携して課題に取り組む姿勢が健康づくり戦略に必要だと思います。
  • 児玉 浩子
    2013 年 40 巻 5 号 p. 546-551
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/01
    ジャーナル オープンアクセス
     小児の栄養・食の問題としては、従来から肥満・生活習慣病の増加、やせの増加、朝食欠食、孤食、偏食、よく噛まないなどが指摘されている。肥満児の出現率は、平成18年をピークとしてやや減少傾向にあるが、平成23年度でも15歳男子で11.99%、女子で8.26%と高い。さらに、2型糖尿病など生活習慣病に罹患している肥満小児も多い。やせの増加も問題である。15歳男子で2.6%、13歳女子で3.91%が痩せ傾向児である。やせ女子は将来妊娠した場合に低出生体重児を出産する率が高い。低出生体重児は将来肥満や生活習慣病に罹患しやすい体質になると言われている。朝食欠食や孤食は、肥満の要因になるだけでなく、学習・運動能力、精神発達、コミュニケーション能力にも悪影響をきたす。
     小児においては、食育が、将来的に健全な食生活を送るようになるために極めて重要である。食育とは、「さまざまな経験を通して“食”に関する知識と“食”を選択する力を習得して、健全な食生活を実践できる人を育てること」と定義されており、体育・知育・徳育の土台となるものである。
     平成23年に発表された第2次食育推進基本計画では、重点3項目として1)ライフステージに応じた間断なき食育の推進、2)生活習慣病の予防及び改善につながる食育の推進、3)家庭における共食を通じた子どもへの食育の推進が示された。「団欒のある食卓」が小児の精神発達にとっても極めて重要である。
     学校や保育所で食育が推進されている。栄養教諭は年々増加しているが、平成24年4月現在、公立学校での栄養教諭配置は47都道府県で4,263人に過ぎない。栄養教諭のさらなる増員が望まれる。さらに、食育を真に推進するには、学校・地域・家庭など子供を取り巻くあらゆる場所で、関係者が協力して食育に取り組むことが必要である。
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