総合健診
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37 巻, 3 号
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原著
  • 徳高 平蔵, 加瀬澤 信彦
    2010 年37 巻3 号 p. 389-397
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
     メタボリックシンドローム(MS)の診断基準において,脂質,血圧,血糖項目においては基準値を少し超えているだけの軽微な症例では「正常」と「異常」との判別ラインが不鮮明であるため,注意深い観察が必要であると考えられる。
     我々は未病の概念を導入して,この問題解決の手順を考案した。
     すなわち,MS 項目の各受診者分布度数の観察から,データを「正常」「未病域」および「危険域」の3 段階に数値処理し,自己組織化マップ(SOM)に適用してMS スコアを視覚化するツールを作成した。
     本法と従来の診断方式によるMS 判定成績を健診データにおいて対比した結果,本法による判別能の妥当性が示された。
     さらに本法では,MS 要素間のクラスターとの位置関係をSOM 平面マップ上で視覚的に把握できるため,保健指導への応用が期待される。
  • 佐藤 友美, 野崎 良一, 鎌田 智有, 山田 一隆, 春間 賢
    2010 年37 巻3 号 p. 398-404
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
     女性における大腸腺腫発生のリスク因子を経年変化と年次推移から検討した。対象および方法は1992 年4 月から2007 年3 月までの15 年間に大腸肛門病センター高野病院健診センターで内視鏡検査の初回受診者8,890 名について,経年変化では年齢階級別に調査した結果,大腸腺腫発見率が有意に高値を示した年代を転換期とした。さらに受診時期で前期(1992 年4 月~1998 年3 月)と後期(1998 年4 月~2007 年3 月)に大別し,各時代で肥満,総コレステロール,HDL-コレステロール,中性脂肪,LDL-コレステロール,空腹時血糖値,腹囲などについて,転換期を加味して大腸腺腫との関連性を検討した。有意差検定にはMann-Whitney U 検定ないしX2 検定にて比較検討し,連続変数については平均値 ± 標準偏差(mean ± SD)で表わした。さらに統計的解析にはロジスティック回帰分析(the binary data)をDr. SPSS II for Windows XP を用い,p = 0.05 未満をもって統計学的に有意差ありとし,オッズ比(OR)を算出した。
     解析の結果,加齢に伴い大腸腺腫発見率は有意に高くなり,ことに50 歳代から有意に高値を示し,この50 歳前後が節目と考えられ,転換期とした。さらに大腸腺腫発生のリスク因子は前期では50 歳未満は中性脂肪が1 増加ごとに1.004 倍,中性脂肪値150 mg/dl 以上では2.682 倍と有意に高くなった。一方,後期の50 歳未満では中性脂肪の1 増加は1.003 倍,中性脂肪値150 mg/dl 以上は1.663 倍,空腹時血糖値110 mg/dl 以上では2.363 倍,腹囲1 cm 増大は1.037 倍,90 cm 以上では2.684 倍と有意なリスクとなった。また50 歳以上では各時代ともに加齢により大腸腺腫発生のリスクは有意に高くなった。以上から,加齢は大腸腺腫の有意なリスクとなり,生活習慣関連因子別では中性脂肪,空腹時血糖,腹囲増大で腺腫発生率が有意に高く,特に50 歳未満でその相関が強く認められた。受診時期を前期(18~12 年前)・後期(12~3 年前)に区分した検討では前期に比して後期に関連性が強くみられ,同じ関連因子でも年齢や受診時期によって腺腫発生率に違いを生じる可能性があり,その要因として食生活の変化や運動量が関係していると考えられた。
  • 村上 美絵, 押方 玲香, 宮本 徳子, 岸田 玲奈, 永田 純美, 寺澤 洋子, 平川 史子, 吉村 良孝, 今村 裕行
    2010 年37 巻3 号 p. 405-413
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,7 日間の秤量記録法による食事調査結果をもとに,調査日設定の妥当性について検討することである。大学生29 名,大学院生6 名の計35 名を対象に食事調査を連続7 日間と,その2 週間後の連続4 日間(休日1 日を含む)の計2 回にわたり行った。連続4 日間の食事記録を4日間連続,休日を含めた連続3 日間(平日2 + 休日1 連続),平日の連続した3 日間(平日3 連続),平日と休日の連続した2 日間(平日1 + 休日1 連続),平日と休日の不連続な2 日間(平日1 + 休日1不連続),平日の連続した2 日間(平日2 連続),平日の不連続な2 日間(平日2 不連続),平日1 日間(月曜日,火曜日,水曜日)ごとに食品群別摂取量と栄養素等摂取量の平均摂取量を算出し,それぞれ連続7 日間の平均摂取量と比較し,調査日設定の妥当性について検討した。その結果,連続7 日間と高い正の相関を示したのは4 日間,3 日間,2 日間で,平日1 日間では高い正の相関は得られなかった。
     本研究の結果から個人の習慣的な摂取量を把握するための食事調査日設定として,少なくとも2 日間以上の食事調査日が必要であることが示唆された。
  • 久代 和加子
    2010 年37 巻3 号 p. 414-423
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/09/24
    ジャーナル フリー
     目的:職域健診における安静時心電図の実施状況と事後対応に影響する要因を解析し検査精度向上に資する。
     方法:職域健診を実施し全国労働衛生団体連合会の精度管理事業に参加している379 施設に対して,安静時心電図に関する自己記入式の調査票を送付し,心電図異常所見頻度,病的意義の評価,事後対応について解析する。
     結果:235 施設から回答があったが(回収率62%),心電図の実施件数が不明の17 施設を除外し計218 施設を解析対象とした。安静時心電図実施数は,2,770,239 件(男性1,716,697 件,女性1,053,542 件)であり,66.5%の施設が自動解析装置を使用していた。異常所見の頻度は,ST・T 異常(男2.2%,女2.4%),心房細動(男0.6%,女0.1%),異常Q 波(男0.5%,女0.2%)であった。健診時に既往歴96.8%,自覚症状90.8%,家族歴は53.7%の施設が調査していた。心電図判定の際に参照している施設は,既往歴57.3%,血圧50.5%,自覚症状48.2%,前回の心電図31.7%,生活習慣14.7%,コレステロール値等検査結果9.6%であった。全体での異常率14.7%,要精査率2.5%であったが,要精査率の施設間差は大きく自覚症状,家族歴,前回心電図,心血管系疾患危険因子などの参照有無が要精査率に影響し,心電図のみで判定している施設の要精査率が高かった。要精査後の最終診断を把握できていたのは218 施設中,57 施設であった。
     結論:職域健診において要精査・治療と想定される安静時心電図異常が認められており検査自体は有用と考えられる。しかし,要精査率の施設間差は大きく,心電図以外の情報を参照しない施設の要精査率は高かった。さらに要精査と判定した例について最終診断の把握状況を改善する必要がある。心電図異常の病的意義の判定と事後対応に関する包括的な指針作成が望まれる。
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