総合健診
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49 巻, 6 号
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症例報告
  • 髙丸 格, 内野 里枝, 赤堀 つぐみ, 森田 寛子, 綾部 裕子, 大木 早織, 青木 由美子, 鈴木 登士彦, 小松 淳子
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 49 巻 6 号 p. 609-614
    発行日: 2022/11/10
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル オープンアクセス

     今回、健康診断の腹部超音波検査時に腹部大動脈解離を認め、造影CT検査によりStanford A型大動脈解離と診断され、手術が行われた症例を経験した。Stanford A型大動脈解離の発見の端緒が健康診断の腹部超音波検査という症例は、我々が検索した限りでは見られないため報告する。

     症例は65歳女性。約1か月前に突然の強い左胸背部痛があり、近医の整形外科を受診している。

     今回、当院の健康管理センターを初めて受診し、その際の腹部超音波検査で、腹部大動脈内に解離像を認め、真腔および偽腔内にカラードプラにて血流を認めた。Stanford A型大動脈解離を考慮し、造影CT検査を施行した。

     造影CT検査では、解離は上行大動脈基部から両側総腸骨動脈にかけて認められる、Stanford A型大動脈解離であった。腹部超音波検査による発見の端緒から約2時間後に説明を行い、本人に強い胸背部痛がなく、臓器灌流障害を疑わせる症状など緊急手術が必要な状態ではないため、亜急性Stanford A型大動脈解離として、1週間後に手術を行った。

     今回、広範囲のStanford A型解離があったが、心タンポナーデや心臓、脳、腹部臓器の分枝灌流障害を発症しなかった稀な症例と考えられる。腹部超音波検査で解離を認めた場合、受診者の予後を左右するため、健康診断の現場においても迅速な対応が必要である。

  • 赤塚 貴紀, 野口 直樹, 出沢 舞, 西園 明将, 横山 智央
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 49 巻 6 号 p. 615-617
    発行日: 2022/11/10
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】ワクチン接種後の抗体価評価を行う事で、患者・健診受診者への情報提供及び、疫学的評価を目的とし検査を行った。プロゾーン現象を呈した臨床からの報告例は少なく、抗体測定における注意喚起を行う価値が高いと判断したため報告とした。

    【対象】健診センター受診時に、検査でプロゾーン現象により偽低値を示した2例。

    【方法】研究プロトコールは厚生中央病院倫理委員会で承認された (承認番号:2022-01)。測定装置:コバス8000 (ロシュ・ダイアグノスティックス)、測定試薬:Elecsys Anti-SARS-CoV-2S (300) RUO (ロシュ・ダイアグノスティックス) を用いて抗体価を測定した。また希釈系列 (1倍、10倍、100倍、200倍、400倍、900倍) を作成し検討した。

    【結果】症例1では1倍 (157) であったが、10倍、100倍ではレンジオーバーとなりプロゾーン現象を認めた。症例2では1倍 (212) であったが、10倍、100倍、200倍で同様の現象を認めた。

    【結語】抗体価低値の場合は再検査による精査が重要であると思われた。

大会講演
日本総合健診医学会 第50回大会
  • 伊藤 啓
    原稿種別: 大会講演
    2022 年 49 巻 6 号 p. 618-626
    発行日: 2022/11/10
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル オープンアクセス

     膵癌の90%以上は浸潤性膵管癌 (PDAC) であり、進行例での発見が多いことから切除率が低く、いまだ難治で予後不良な疾患である。他の癌種と同様に早期発見が重要で、小腫瘤で膵内にとどまるものや上皮内癌 (CIS) では長期予後が期待できることから、膵疾患に対する早期診断の確立が急務の課題である。膵癌の危険因子 (家族歴、喫煙、大量飲酒、糖尿病、肥満、慢性膵炎、膵管内乳頭粘液性腫瘍、膵嚢胞) を有する場合には、定期的な膵精査が推奨されている。膵癌の拾い上げの契機になる所見は、直接所見として腫瘤の描出、間接所見として膵管拡張である。EUSは、消化管ガスの影響を受けずに、膵臓を高い空間分解能で詳細に観察可能で、小さな病変の検出も可能で膵疾患に対する最も重要な検査法であるが、十分に普及していないのが現状である。悪性の確定にはEUS下組織採取 (EUS-TA) やERCPを用いた膵液細胞診などの病理学的手法で行う。CISは腫瘤を認めないため、病理診断にはERCPによるアプローチが重要である。膵管狭窄以外の所見として、膵の限局性萎縮や脂肪浸潤が早期の膵癌の特異的所見として注目されている。

     膵の主な腫瘍性嚢胞には膵管内乳頭粘液性腫瘍 (IPMN)、粘液性嚢胞腫瘍 (MCN)、漿液性腫瘍 (SN) がある。分枝型IPMNは主膵管と交通のある多房性嚢胞で、嚢胞内の結節や主膵管の拡張が描出されることがある。MCNは女性の体尾部に好発するcyst-in-cyst様構造を呈する嚢胞性病変である。SNの大部分は漿液性嚢胞腺腫で、蜂巣状構造を有し造影CTで隔壁が造影されるのが特徴である。

     MRCPおよび拡散強調画像 (DWI) とEUSの組み合わせは、膵の実質と膵管の評価が可能で、膵疾患の検診としての有用性が期待される。膵癌の早期診断に寄与するか否かは今後の検討が待たれる。

  • 鯉淵 幸生
    原稿種別: 大会講演
    2022 年 49 巻 6 号 p. 627-632
    発行日: 2022/11/10
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル オープンアクセス

     日本における乳がん検診は、個別化を考えず死亡率減少効果の科学的根拠があるマンモグラフィ検診が一律に行われてきた。しかし、高濃度乳房でのマンモグラフィは早期発見モダリティとして的確とは言えない場合もあり、高濃度乳房の多い若年層では超音波での検診も模索されている。その現状を踏まえたゲノム医療の時代の次世代検診はprecision medicineの考え方に基づいた個別化と効率化が求められる。一つ目は乳癌発症高リスク患者の効率的な絞り込みと的確なモダリティの選択である。遺伝子情報と電子カルテ情報のビッグデータの統合解析により、乳癌に罹患しやすい住民のサブグループ分けできるようになる可能性があり、それらの集団に対し診断能の高い検査を持続的に行っていくという方法である。二つ目は、血液や涙液や尿などの体液を用いた検査である。健常人と比較して癌患者で変動する血漿中のアミノ酸濃度バランスを癌リスクスクリーニングに応用するAminoindex®や癌患者の尿から発せられる匂いに対する線虫C.elegansの遊走能を利用して担癌リスクを判定するN-NOSE®はすでに商業ベースで行われている。いずれも担癌率や癌発生リスクを評価するプレスクリーニングとしての運用となっている。癌細胞が分泌するエクソソームのmicroRNAを血液や涙液で解析するリキッドバイオプシーは感度特異度ともに優れていることが報告され、3,000人規模の大規模臨床試験が開始された。

     体液によるがん検診は、手軽で侵襲性が少なく、X線被爆もないことから、医療者と検診受診者双方の負担軽減につながると期待されている。これらの手法によるがん検診の精度に関する検証は、既存の検診手法が確立している乳癌でこそ進められるべきと考える。

  • 増田 美加
    原稿種別: 大会講演
    2022 年 49 巻 6 号 p. 633-638
    発行日: 2022/11/10
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル オープンアクセス

     乳がん検診受診者の間では、高濃度乳房 (dense breast) への関心が高まり、高濃度乳房を含む「乳房構成」を検診結果と共に通知してほしいという声があがっている。米国では当事者であるDr. Nancyをはじめとする「are you dense?®」運動の高まりにより、38州 (2021年5月28日時点) で乳房構成の通知の義務化が法整備されている。米国の研究では乳腺濃度が高くなるほど感度が低く、極めて高濃度乳房では、ほぼ半分の確率で正しく診断できないというデータのほか、諸外国では高濃度乳房はそうでない乳房に比べ、乳がん発症リスクが高いという研究結果が数多く報告されている。日本でも2019年、岡山大学により多施設で行われた日本女性に対する研究結果で、閉経後女性と肥満女性において、高濃度乳房と乳がん発症リスクの関係が強く、極めて高濃度の乳房では、脂肪性の乳房に対する乳がんオッズ比が閉経後で2.85倍、肥満女性で11.89倍とされている。FDA (米国食品医薬品局) は、マンモグラフィを所有する施設は受診者向けにもレポートを作成し、高濃度乳房の通知をすべきと提言。ACR (アメリカ放射線学会) も検診受診後、自身の乳房構成の理解が重要であり、受診者ファーストで、議会や規制機関、患者団体と協力して取り組んでいくと表明。当事者の声が強く反映されている。翻って日本では、乳房構成の通知は時期尚早と積極的に進められていない。検診は自身の健康情報を知るために自身の意思で受けるもの。検診結果で自身の体の情報を得ることは必須である。高濃度乳房への誤解や間違った情報で一般市民を惑わせないためにも、専門家、国、行政、患者団体が協力して、当事者視点で乳房構成の通知を進めることが、breast awarenessを広めるためにも欠かせない。次世代の日本の乳がん検診が世界標準のリスク別個別化検診へ向かうためには、知る権利を守り、ヘルスリテラシーを高めることが急務である。

  • 宮下 みゆき, 高村 智恵, 林 務
    原稿種別: 大会講演
    2022 年 49 巻 6 号 p. 639-644
    発行日: 2022/11/10
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】当院ではCOVID-19の蔓延に伴い、緊急事態宣言下であった2020年4から5月の期間は総合健診を休止した。同年6月から受診者数を例年の6割におさえて再開している。この期間中の受診者の背景について2019年と2020年とで比較検討した。

    【対象・方法】2019年1月から2020年12月の間に当院で総合健診を受診した女性のうち、健康保険の区分が本人または家族と判明している延べ3,494例を対象として、乳がん及び子宮がん検診の、実施数及び診断数について比較検討した。

    【結果】2019年と比較して、2020年では、35から39歳の年代で本人、家族とも受診者が減少していた。一方で、乳がん検診を申し込んだ割合は、本人では例年より多く、家族では概ね例年通りであった。2020年3月から12月の間は癌の診断数は少なかった。

    【考察】健康保険の補助を利用した総合健診受診者は、本人ならば労働安全衛生法に基づく定期健診を兼ねている事が多く、検診を他院で受けて減少した可能性は考えられるが、子育ての中心年代である30から40歳台は、乳がん、子宮がんが多い年代でもあり、早期発見のための健診受診は重要と考える。今後は、生活や就業環境などの受診者の背景をふまえた細やかな啓蒙活動、情報提供と検査の実施が重要である。

  • 春日 郁馬, 大坪 修
    原稿種別: 大会講演
    2022 年 49 巻 6 号 p. 645-649
    発行日: 2022/11/10
    公開日: 2023/03/10
    ジャーナル オープンアクセス

     新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) の世界的流行が続く中、当法人では通常の感染対策に加えて独自に幾つかの取り組みを行ってきた。その1つが空気触媒による施設内の抗ウイルス対策であり、もう1つは職員への経時的な抗体検査の実施、そして当法人が健診を行っている企業のワクチン接種事業への参画である。これらの取り組みによって受診者が少しでも安心して健診を受けることが出来、また職員自身の前向きな感染対策へと繋がり、そして我が国のワクチン職域接種事業の普及に貢献出来たものと考える。

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