2003年~2016年までの13年間に、兵庫県予防医学協会、健康ライフプラザを受診し、橋本病と診断された454例の甲状腺機能の経時的変動、甲状腺の性状および結節の合併につき後ろ向き研究を行った。
橋本病454例は本施設にて初回時1回のみ甲状腺機能検査を受けた252例(A群)と初回時から長期に渡って経過観察した202例(B群)の甲状腺機能の変動につき詳細に検討した。両群とも専門医に紹介した症例の経過は紹介先からの返書により調査した。経過観察できた350例の初回検査では73.0%が正常機能であり、甲状腺機能低下症6.6%を含め27.0%に甲状腺機能異常症を認めた。経過観察後の甲状腺機能は76.0%が正常機能であり、24.0%が甲状腺機能異常症と診断した。甲状腺機能低下症は初回時22.0%、経過観察後10.6%であり、全体を通じて2.6%に無痛性甲状腺炎が発症していた。
甲状腺超音波検査(US)を施行した427例では内部エコー不均一が73.1%に認められた。甲状腺体積を測定した286例では69.2%に腫大(≧20g)が認められた。
甲状腺自己抗体(TgAb・TPOAb)の検討では、両抗体測定例でTgAb陽性が93.1%、TPOAbは71.2%が陽性で、TgAb陽性率が高かった。US内部エコー不均一例でのTgAb陽性率は、不均一がない症例より陽性率が高かった。
USを施行した橋本病427例中151例(35.4%)に良性結節、13例(3.0%)に乳頭癌を合併した。一方、研究期間中に抗体検査が行われた良性結節501例中99例(19.8%)および乳頭癌65例中16例(24.6%)に、橋本病を合併していた。
以上の研究結果から、橋本病の大部分は正常機能を保持して経過するが、少数例に甲状腺中毒症や機能低下症がみられ、潜在性甲状腺機能異常を繰り返しながら経過し一部は機能低下症に陥る事が判明した。よって著者らは橋本病の管理のフローチャートを考案し、QOLの向上に努めている。
今回、興味深い橋本病および結節合併例の超音波画像と粘液水腫心の1例を提示した。
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