人間ドック受診者はかなりの健康で検査値が正常な者を含んでいる。正常値の年齢による変動, 受診月による変動を調べることを目的に人間ドック受診者の検査値を調べた。当院の2005年1年間の全人間ドック受診者の検査成績を男女に分け, 年齢別および月別に集計して検査値の平均値, 標準偏差, 最高値および最低値を求めた。年齢による変動の検討から, Body Mass Indexが20歳代から70歳代までほとんど変動しないことが分かった。身長・体重には30歳代をピークに微減傾向が認められ, 身体の活動のピークが30歳代であることが示唆された。肺機能も同じ傾向があるが, 比較的一定に保たれることが分かった。血圧の変動から動脈硬化は30歳代から始まり, 特に男性に顕著であることが分かった。脂質代謝は男女に違いがあり, HDLコレステロールは変動せず, LDLコレステロールは男性では変動が少なく, 40歳代以降増加しないが, 女性は20歳代から明らかに増加傾向を示し, 50歳代でプラトーに達した。腎機能は一定で変動がなく保たれていることが分かった。肝機能では, GOTおよびGTPは変動が少ないが, γ-GTPは男性が女性よりはるかに高く, 40歳代から60歳代に上昇が著しかった。糖代謝では, HbA1c, 血糖値は50~60歳代にピークを持って上昇し, 血中のグルコース処理能力は若年から徐々に低下することが示唆された。血液学的検査値の変動も少なかった。月別集計では変動が少なかったが若干の季節変動が見られたのは, 収縮期血圧, %肺活量で, γ-GTPは男性で月別変動が大きかった。なお, 検査値のばらつきから, 受診者集団には健常者以外の者がかなり含まれることも分かった。
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