ピロリ菌(
H. pylori: Hp)の発見および
Hpと胃がんとの関連が明らかになり、
Hp感染症である胃がんの対策は大きな転換期を迎えた。除菌による胃がん予防の知見が得られ、リスク別A, B, C, D胃炎検診(ABC検診)は胃がんの早期発見と
Hp除菌対象者の抽出という2つの意味を持つ、これからの胃がん対策のキーとなる検診である。
結果:2007年~2009年の3年間、東京都某職域胃検診で、延べ48,073人(2007年15,043人、2008年16,080人、2009年16,950人)(平均年齢47.4歳)を対象にABC検診を実施した。A群35,177人(73.2%)、B群7,883人(16.4%)、C群4,489人(9.3%)、D群524人(1.1%)に分類された。発見胃がんは、B群16例、C群7例であり、進行がんが5例認められたが、いずれも初回検診受診(中途入社など)の人であり、検診受診者はすべて早期胃がんであった。分化型がんが12例(52%)を占めたが、その比率はそれぞれ年度別に、75%、38%、0%と年毎に未分化がんの比率が増加した。
結論:胃がんの撲滅に向けた検診対策は、ペプシノゲン(PG)法と
Hp感染有無の診断法を組み合わせ、
Hp感染症である慢性萎縮性胃炎のリスクを4群に層別化するリスク別A, B, C, D胃炎検診(ABC検診)を実施する。受診対象者の50~80%を占める無症状・
Hp未感染のA群を内視鏡による2次検診対象から除外する。その後、継続的にA, B, C, D胃炎のリスク別に早期の胃がん発見を目指し、内視鏡検査による経過観察を行うと同時に、
Hp既感染群は除菌療法を実施して胃がんの発生を予防する、2次予防と同時に1次予防をも目的としたABC検診である。
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