総合健診
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40 巻, 6 号
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原著
  • ─間質性肺炎、糖尿病との比較─
    斎藤 充, 木田 吉城, 荒川 翔太郎, 丸毛 啓史, 沢辺 元司
    2013 年 40 巻 6 号 p. 587-592
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/17
    ジャーナル フリー
     慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease)罹患例では、骨折リスクが高まることが知られている。しかし、COPD症例において骨強度が低下するメカニズムは明らかではない。骨強度は骨密度と骨質によって規定される。COPD例では、骨密度の低下が報告されいるが、骨質の状況については明かでない。これまでに筆者らは、骨の単位体積当たり50%を占める骨コラーゲンの分子間架橋の異常が骨質低下の主たる要因であることを明らかにしてきた。コラーゲンの分子間架橋の内、老化化である終末糖化産物(AGEs)が骨強度を低下させることを種々の病態で見出した。そこで、COPD症例における骨脆弱化の機序を解明することを目的として、剖検例を用いたCase-Control研究を行った。COPD例、IP例、DM例と、これらの罹患の無い対照群から、骨、肺組織、気管軟骨、胸部大動脈、皮膚を採取し、総AGEs量を解析し、比較検討したところ、対照群に比べてCOPD例と糖尿病例では有意に高値であることが明らかとなった。これに対し、骨以外の組織のAGEs化は各群間に差はなかった。骨におけるAGEsの増加は、コラーゲン線維の強度変化に直接的に悪影響を及ぼすのみならず、骨芽細胞機能の低下や破骨細胞の活性化を誘導するという生物学的な側面でも悪影響を及ぼす。COPDではこれまでに報告されている骨密度の低下と共に、骨へのAGEsの増加という骨質の低下も併発することにより骨の脆弱性が高まると考えられる。
  • 須賀 万智, 小田嶋 剛, 杉森 裕樹, 中山 健夫
    2013 年 40 巻 6 号 p. 593-603
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/17
    ジャーナル フリー
    【目的】健診結果票は各施設が独自に作成しており、様式が統一されていない。本研究では、デザインや表現方法を変えた5種類の健診結果票を作成して、ユーザーテストを行い、望ましい健診結果票のあり方を検討した。
    【対象】インターネット調査会社の登録モニターの35~59歳男女424名
    【方法】全国20施設の健診結果票を調査して、以下の5種類の健診結果票を作成した。票A:有所見項目を記号で示し、最後にアドバイスを記す。票B:項目判定をアルファベットで示す。票C:項目判定を日本語単語で示す。票D:項目判定を一覧表に示す。票E:最初に総合判定を示し、アドバイスを優先順に記す。対象者を性年齢別に無作為に4群に割り付け、各群に2種類の健診結果票を割り当て、その評価を尋ねた。評価項目は理解度、難易度、デザイン(情報量、構成、興味、有益、トーン、文字サイズ、行間)である。
    【結果】問題があると判定された全7項目を正しく答えられた(問題項目完答)割合は票Aが最も低く17.0%、票Eが最も高く38.7%であった。票Bは票Aに比べ、問題項目完答割合が高く、難易度が易しく、情報量、構成、興味、トーン、文字サイズが高評価であった。票Cは票Bに比べ、問題項目完答割合が高く、難易度が易しく、情報量、構成、興味、有益が高評価であった。票Dは票Bに比べ、情報量、文字サイズが高評価であった。票Eは票Cに比べ、問題項目完答割合が高く、難易度が易しく、デザイン7項目すべてが高評価であった。また、票Eは改善策を講じたいと考える割合が83.0%と高かった。
    【結論】評価結果を総合すると、優れた方から票E>票C>票B≒票D>票Aの順であった。望ましい健診結果票のあり方として、総合判定は必要である、項目別判定一覧表は必ずしも必要とは言えない、アドバイスは最初に置き、優先順に並べた方が良い、項目判定は日本語単語で示した方が良いことが示された。
大会講演
日本総合健診医学会 第41回大会
  • 日野原 重明
    2013 年 40 巻 6 号 p. 606-612
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/17
    ジャーナル フリー
  • 天野 惠子
    2013 年 40 巻 6 号 p. 613-622
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/17
    ジャーナル フリー
     千葉県は、平成15年度から、協力市町村において「健康診査データ収集システム確立事業」を行った。平成14年度から18年度にわたる5年間のデータ数は22市町村366,862件(男性111,877件、女性254,985件)であった。健診結果を概略する。
     (1) BMI:男性では、40~49歳の24前後をピークに、その後徐々に減少する。女性では、40歳(21~22)から徐々に上昇し、70歳代で男性に追い付き、追い越す。
     (2) T-chol、TG(隋時)、HDL-Chol:T-chol、TGは男性では40~49歳をピークに(T-chol200mg/dL前後、TG 180mg/dL強)徐々に減少し、TGは70歳代になると女性とほぼ同じになる。女性では、T-cholは35歳から徐々に上昇し、50歳代に男性を凌駕し以後男性に比し高値を保つ。TGは、年齢とともに徐々に上昇し70歳代では男性に追い付く。しかし男性の 180mg/dL強に対し、女性では49歳以下のTGの平均値は 100mg/dLを割っている。HDL-Cholは男性ではどの年齢区分でも、55mg/dL前後である。女性では、HDL-Cholは年齢とともに徐々に減少するものの、65歳以上でも 60mg/dLをキープしている。
     (3) γ-GTP, GPT:男性では、GPT・γ-GTPは、40歳~49歳の各々 30U/L前後、55U/L前後をピークとして、徐々に減少する。一方、女性では年齢とともに上昇するが、全年齢層でGPT は 20U/L以下、γ-GTPは 20U/L前後である。
     (4) 収縮期血圧(SBP)・血糖値(BS):SBP・BSは男女とも年齢が上昇するとともに上昇するが、男性では、SBP平均値が至適血圧(120mmHg)を35歳以上で、正常血圧(130mmHg)を55歳以上で上回るのに対して、女性では、至適血圧(120mmHg)は50歳以上で、正常血圧(130mmHg)は65歳以上で上回る。
     性差・年齢差を念頭に置いた健診制度と個別保健指導が健診受診率ならびに保健指導効果の向上のためには、必要である。
  • ~特にBMIの低下について~
    藤林 和俊
    2013 年 40 巻 6 号 p. 623-629
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/17
    ジャーナル フリー
     Body Mass Index(BMI)は、広く臨床や健診で利用されている体格を評価する指数である。肥満はBMIによって判定され、我が国ではBMI:25kg/m2 以上は肥満とされる。近年先進諸国で肥満の増加が社会問題となり、我が国では数年前から特定健康診査・保健指導が開始された。その結果、メタボリックシンドロームと共に肥満の健康への悪影響の認知度は高まり、特定保健指導も一定の効果を挙げているとされる。これに対して、我が国でBMI:18.5kg/m2 未満の低体重が20~40歳代の女性で増加傾向と考えられている事については、あまり知られていない。そしてまた、低体重に対する共通した枠組みも構築されていない。低体重は健康に悪影響を持たないのだろうか。
     以前よりBMIと総死亡率はU字曲線の関係を持つ事が知られており、アジア圏においても2011年にZhengらが100万人以上の人々を対象として、BMIの低下に伴って死亡リスクが上昇する事を報告している。そして我が国でも2010年にTamakoshiらやNagaiらによって、低体重と死亡率上昇の関係を示した報告が為されている。更に死亡以外にも、低体重の健康障害を示唆する報告は多くある。以上より、低体重も「健康」に対して注意すべき状態であると考えられる。
     そこで本稿では、NTT東日本関東病院人間ドックを受診した13,449人(男性81.2%:10,917例・平均年齢47.4±10.6歳)を対象として、体型毎の受診者の病歴保有率や判定結果を調査し、その結果や既報から低体重に対する健康診断の課題について考察する。
  • 清元 秀泰
    2013 年 40 巻 6 号 p. 630-634
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/12/17
    ジャーナル フリー
     生命恒常性維持のために、腎は全身循環の20%に相当する血流量(毎分 1L)を供給され、生体に必要な物質のみを再吸収する使命が与えられている。100mL/分の糸球体濾過から 1L/日の尿しか生成しないという144倍の尿濃縮力に基づくリサイクリング・システムが、結果として効率的な老廃物の除去機能となっている。そのためには腎の複雑な解剖学的構造は不可欠であり、ブドウ糖、アミノ酸など生命活動に必須な物質の99%が近位尿細管で再吸収される。
     近年、慢性腎臓病(CKD)治療の重要性が認識され、腎機能低下は心血管障害に関連する「心腎連関」が注目されている。このメカニズムとして東北大学の伊藤貞嘉先生が提唱するStrain vessel theoryは明解で、腎の特殊な血管構造は脳・心の血管構造に酷似しており、糸球体腎炎ない症例において尿タンパクがあれば心血管障害のリスクである。CKD診療ガイド2012でも、推定糸球体濾過量(eGFR)による単純な腎機能低下のみならず尿タンパク排泄量も心血管イベントの危険因子であると認識された。一方、タンパク尿のないCKD合併高血圧症には、従来提唱されていたレニン・アンジオテンシン系阻害薬を第一選択とするのではなく、虚血予防の観点から長時間作用型カルシウム拮抗薬などを組み合わせ、個々の症例に応じた治療設計が推奨された。
     更に適切な薬物療法の実践には正確な腎機能の評価が重要である。現在、血清クレアチニン値を用いたMDRDのeGFR推測式が一般的であるが、高齢者、女性、子供、長期臥床者、下肢切断者等の筋肉量の少ない症例では実際の腎機能を過大評価する。そこで近年、より実測に近いシスタチンCを用いたeGFRの推測式が提唱されている。
     このように腎疾患診療においては性差に基づく腎機能補正も念頭に、クレアチニン値、尿タンパク(アルブミン)排泄量、シスタチンC等を用いた適切な腎機能評価を行い、早期腎障害の発見のみならず心血管障害予防のリスク管理、適正な薬物選択を行う必要がある。
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