総合健診
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38 巻 , 5 号
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原著
  • 岡野 理江子, 良本 佳代子, 寺田 円, 松本 亜由美, 久保田 昌詞, 大橋 誠, 野村 誠
    2011 年 38 巻 5 号 p. 567-573
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/09/01
    ジャーナル フリー
     人間ドックや健診の場では、生活習慣病の把握やその防止、また進展予防につとめることが第一優先とされているが、近年の高齢化に伴い、認知症の把握をすることも必要と考えられる。今回我々は簡易認知症診断法である、浦上式もの忘れスクリーニング検査を用いて認知症のスクリーニングを実施し、認知機能低下の頻度、生活習慣病との関わりを検討した。
     大阪労災病院健康診断部に人間ドック目的にて受診した者のうち、60歳から79歳の計610名を対象とした。浦上式もの忘れスクリーニング検査を用いて、面談医師が聞き取り方式で実施し15点満点中12点以下を認知機能低下疑いと判断した。統計における有意差検定はStat View soft wearを用いてχ2検定にて比較検討した。統計学的解析はロジスティック回帰分析を用い、P<0.05を統計学的に有意差ありとし、オッズ比(Odds比)を算出した(年齢、性別、生活習慣病関連因子を説明変数、12点以下の認知症ありを目的変数とした)。
     年齢別の検討では70歳代では60歳代に比し有意に認知機能低下を認めた。性別での検討では、男性で有意に認知機能低下が認められた。次に高血圧、脂質異常、糖尿病の生活習慣病と認知機能低下との関連を検討した結果、糖尿病群で有意に認知機能低下が認められた。ロジスティック回帰分析の結果、70歳以上の高齢、男性、糖尿病が認知症発症のリスクを高めることが示唆された。もの忘れスクリーニング検査は短時間で実施可能であり、人間ドックなどの健診の場でも有効であると考えられた。
  • 加瀬澤 信彦, 遠山 和成, 中野 求, 廣田 こずえ, 森下 知代, 徳高 平蔵
    2011 年 38 巻 5 号 p. 574-583
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/09/01
    ジャーナル フリー
     メタボリックシンドローム(MS)に関する保健指導を支援する新しいソフトウエア・ツールが開発された。本ツール適用の有用性について、著者らは人間ドック・総合健診受診者を対象とする保健指導の場で検証を行なった。
     本法は、多変量解析の自己組織化マップ(SOM)を原理とし、メタボリックシンドロームの診断に必要な肥満、糖尿病、脂質異常、高血圧の4つの要素の3次元空間における個人データの座標位置を2次元の平面マップ上に写像し、モニター画面で視覚的に把握できる解析法を有している。本法の「要素マップ」では、上記4要素に対する関係位置が経過的にプロットされ、「スコアマップ」ではメタボリックシンドローム関連状態の程度を0から100までの範囲に点数化されたスコア値の動向が表示される。また本法では、4要素を総合したメタボ関連の個人軌跡の動向から過去のデータを累和し、次回に採り得るスコア値を「予測マップ」上に表示することができる。パソコンのモニター画面に表示されるこれらのマップ機能を保健指導担当者と受診者の双方が共有することによって、個人のQOL(Quality of Life:生活の質)に合わせた無理のない習慣変容の努力目標値を立て、その達成成果を画面上で確認しながら保健指導を実施する利便性が期待される。
     本法において、メタボリックシンドローム診断既知サンプルとして抽出された健診受診者38例の各々過去10年間の個人内データ変動をトレースした結果、未病としてのメタボリックシンドローム関連の的確な把握には個人ごとの生理的変動を考慮して行なうことの重要性が示唆された。
     本法メタボリックシンドローム関連のスコア判別基準値は、上記MS既知サンプルのスコア値の分布状態から、0~19を正常域、20以上をメタボリックシンドローム該当と設定し、さらに異常度合を数量的に表示した。
     本法による特定保健指導実施後の男性57人の支援効果判定の比率は、改善64.9%、不変15.8%、悪化19.3%の成績が示され、当センターの保健指導チームによる従来評価法と比べて改善率で14ポイント低く、悪化率では14ポイント高くなる成績を示した。一方、特定保健指導後の評価検証に関する全国調査成績との比較において、本法の成績は全国平均値と近似することが確認された。
     本研究により、人間ドックならびに総合健診・保健支援の実務の場において、メタボリックシンドローム関連の保健指導を効果的に補完・支援する客観的なツールとして、本法は意義あるものと考えられる。
  • 吉村 良孝, 諸江 健二, 沖嶋 今日太, 本田 倫江, 下瀬 裕子, 江崎 一子, 吉良 亜希子, 西内 久人, 今村 裕行
    2011 年 38 巻 5 号 p. 584-588
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/09/01
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は、支持的個人面接を中心とした健康教室が、参加者の教室定着率、心理プロフィール、身体活動量にどのような影響を及ぼすのか検討することである。
     対象者は、豊後高田市在住の40~69歳までの中高年者56名で、運動習慣群30名(EH群)と非運動習慣群26名(S群)に分けた。教室の時間は90分、頻度は月に1回、期間は6ヶ月間である。教室では約10分間の個人面接と自宅でできる運動の指導を行った。面接では運動や食生活の問題点を検討し、担当者は対象に支持的に接し、自己評価の際には日常の心配に応え、ポジティブなフィードバックを中心に行い、否定的な言動を少なくするように心掛けた。
     参加率および目標達成度はEH群が78.3±21.1%、3.5±0.9、S群が84.0±18.5%、2.8±0.9であった。体重、BMI、体脂肪率、腹囲が両群共に教室後に有意に減少した。平均歩数はS群が教室終了時に有意に増加した。Profile of Mood State (POMS) ではEH群の疲労が教室後で有意な低値を示し、S群では抑うつ、怒り、疲労が低値を示し、活気が高値を示した。支持的個人面接は、教室への定着率を高め、身体計測値や精神健康度に影響を及ぼすことが示された。
  • 玉山 隆章, 武村 明, 井上 穣, 樫原 英俊, 高橋 行子, 田村 政紀
    2011 年 38 巻 5 号 p. 589-597
    発行日: 2011年
    公開日: 2013/09/01
    ジャーナル フリー
     国内のHIV感染者とAIDS患者は増加し続けているが、健診施設として今後増加することが予想されるHIV感染症受診者への対応を考察する。
     平成17年度から平成22年度までの当センター総合健診受診者のうち、把握できたHIV感染者5例を対象とし、受診者背景、健診受診歴、異常項目の推移を検討した。また総合健診のオプション検査として行っているHIVスクリーニング検査の実施状況を検討した。
     症例は全例男性(30代2例、40代3例)で、健診種別は職域健診4例、個別健診1例であった。当センターがHIV感染者であることを把握した時点の状況は、既に治療中2例、急性HIV感染症1例、未診断のAIDS発症2例であった。既に治療中の2例は、初回健診当初から自己申告があったわけではなかった。急性HIV感染症の1例とAIDS発症の2例は、上部消化管造影検査の異常もしくは胸部X線検査の異常からの精査で判明した。オプション検査としてHIVスクリーニング検査を行ったのは、全受診者の0.35%に留まっていた。またスクリーニングとして受検したHIV検査が陽性であったのは、前述の急性HIV感染症の症例1例のみで、面接担当医からの勧めで検査したものであった。
     既にHIV感染症治療中の患者が総合健診を受診したとしても、健診当初からの自己申告はしづらいと思われる。また診断前のHIV感染者が自らHIV感染症を強く疑って総合健診を受診することも考えづらい。各健診施設はHIV感染者のこのような受診動向を念頭に置き、少しでもHIV感染症を疑う点があれば、受診者の立場に十分配慮した上で積極的な問診や、スクリーニング検査の勧奨を行うべきである。
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