日本外科系連合学会誌
Online ISSN : 1882-9112
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28 巻, 5 号
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  • 畠山 知昭, 高塚 純, 岡本 康介, 越野 秀行, 浜谷 茂治, 柴 忠明
    2003 年 28 巻 5 号 p. 845-852
    発行日: 2003/10/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    β-カテニンは, 近年細胞増殖シグナル伝達経路の1つであるWntシグナルの転写活性因子として重要な働きをしていることが判明してきた。著者は, 大腸ポリープ組織中におけるβ-カテニン蛋白の増加の有無を免疫組織学的に検討し, 病理組織学的診断と対比し検討した。散発性大腸腺腫, 早期癌におけるβ-カテニンの陽性率は95%と, 著明に高く, 発生に際しWntシグナルの強い関与が示唆された。また, その陽性度は腺腫異型度と相関し, 増殖・癌化の指標になりうるものと考えられた。一方, sm癌の一部 (約17%) では, Wntシグナルとは異なる経路による発癌形式によるものの存在が示唆された。さらに, 高度異型腺腫はm癌と同等の高いWntシグナル活性化傾向を示し, 強い腫瘍増殖能を有すると考えられた。また, 腫瘍径5mm未満の小ポリープのうちβ-カテニン蓄積性が強いものが存在し, これらに対する臨床的検討も必要と考えられた。
  • 呉 成浩, 金子 哲也, 井上 総一郎, 竹田 伸, 中尾 昭公
    2003 年 28 巻 5 号 p. 853-856
    発行日: 2003/10/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    目的 : 総胆管切石術における一期的縫合術の有用性と安全性について検討した。方法 : 1991年から2001年に当科で手術した総胆管結石症患者25人をT tube drain (T) 群18例と一期的総胆管閉鎖 (Primary closure, 以下P) 群7例にわけ, 胆管炎, 膵炎, 胆管径, 手術時間, 術後の肝胆道系酵素, 経口摂取開始時期, 合併症, 入院期間について比較した。結果 : 術後入院期間, 経口摂取開始時期において有意にP群が良好な結果であった。術後合併症はTtube感染, 遺残結石, 創感染, 胆汁瘻, 胆道出血がみられたが有意差なく, 術後早期の血清中肝胆道系酵素の変動についても有意差を認めなかった。諸文献にみられる適応除外項目で有意なものは無かった。結語 : 総胆管の一期的縫合閉鎖術は総胆管結石手術の第一選択とすべきと考えられた。
  • 山村 卓也, 堀越 邦康, 根本 賢, 野田 真一郎, 猪飼 英隆, 花井 彰, 山田 恭司, 山口 晋
    2003 年 28 巻 5 号 p. 857-860
    発行日: 2003/10/30
    公開日: 2010/02/09
    ジャーナル フリー
    15例の大腸進行癌についてガリウムによるナビゲーション手術の有用性について検討した。検索したリンパ節個数は309個, そのうち転移陽性リンパ節は26個である。手術4日前にクエン酸ガリウム74MBqを静脈注射し, 手術終了後ただちに摘出標本のリンパ節, 原発巣, 健常腸管壁のγ線量をNAVIGATORで測定した。その結果, 全リンパ節の測定精度は感度 : 100%, 特異度 : 55.3%であった。またリンパ節転移の予測値は陽性予測値15.9%, 陰性予測値100%であった。リンパ節群別の測定精度は1群リンパ節では感度 : 100%, 特異度 : 52.2%で, リンパ節転移の陰性予測値は100%であった。2, 3群リンパ節では感度 : 100%, 特異度49.0%で, リンパ節転移の陰性予測値は100%であった。以上から1群リンパ節転移陰性を評価することにより適切なリンパ節郭清の範囲を決定できるという点で本法はナビゲーション手術としての応用が可能であることが示唆された。
  • 川崎 磨美, 五井 孝憲, 小練 研司, 片山 寛次, 廣瀬 和郎, 山口 明夫
    2003 年 28 巻 5 号 p. 861-865
    発行日: 2003/10/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    1989年1月から2002年3月までに当科において腸管切除とリンパ節郭清 (D2) を施行した大腸sm癌28症例中, 粘液癌と低分化腺癌を除いた26症例について, 絶対値によるsm浸潤度とリンパ節転移との関連性をretrospectiveに検討した。 (1) sm浸潤長による分類 (水平方向, 垂直方向) では, sm層への癌浸潤が水平および垂直方向に1.0mm以下ではリンパ節転移陰性であったが, 1.0mmを越えると陽性症例が認められた。 (2) sm浸潤面積による分類 (垂直方向の浸潤長と水平方向の浸潤長の積) ではsm層への平均癌浸潤面積がリンパ節転移陰性例では6.5±1.5mm2, 陽性例では11.5±3.3mm2であり, また浸潤面積が5mm2未満ではりンパ節転移陽性症例は認められなかった。これらの結果からsm大腸癌 (高, 中分化型腺癌) ではsm層への浸潤面積がリンパ節転移のリスク判定に有効であると考えられた。
  • 上原 秀一郎, 丹正 勝久, 富田 凉一, 三室 治久, 福澤 正洋
    2003 年 28 巻 5 号 p. 866-869
    発行日: 2003/10/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    われわれは巨大乳腺間質肉腫の1例を経験した。症例は62歳, 女性。平成13年3月頃に右乳房腫瘤に気づいた。平成14年8月頃から急激に増大し, 疼痛を伴うようになり, 右乳房全体を占める巨大な腫瘤となったため, 平成14年11月18日当科を受診した。腫瘤は20×12cm, 弾性硬で皮膚に発赤が認められた。生検にて境界型葉状腫瘍または間質肉腫と診断し, 平成15年1月15日右単純乳房切除術および右腋窩リンパ節サンプリングを施行した。病理診断は乳腺間質肉腫であり, リンパ節転移は認めなかった。合併症もなく, 経過は良好で, 現在外来フォローアップ中である。乳癌取扱い規約で乳腺間質肉腫は乳腺に特有な軟部腫瘍で, 葉状腫瘍の上皮成分を認めないものとされている。巨大化することが多い, 極めて稀な疾患である。
  • 直居 靖人, 山本 仁, 黒川 英司
    2003 年 28 巻 5 号 p. 870-873
    発行日: 2003/10/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    患者は 67 歳, 女性。右乳頭の単孔性血性異常分泌を主訴に当院受診。腫瘤触診せず。マンモグラフィ, 分泌物細胞診, 分泌物CEA値で悪性所見を認めなかったが, 乳房超音波検査で乳管の拡張と, 乳管造影にて乳管の拡張と途絶の所見を認め, 乳腺区域切除術を予定した。手術直前に再度行った乳管造影は乳管の閉塞により施行不能であり, 再開通や超音波検査による病変描出の可能性を考え手術を中止し, 経過観察とした。4ヵ月後の超音波検査にて5mm大の円形の低エコー病変を認め穿刺細胞診にてclass Vの結果を得た。再度乳管造影を施行するも造影不能であり, 細胞診陽性部を中心に乳腺部分切除術を施行した。切除標本では細胞診陽性部を中心に乳管内進展を示す非浸潤性乳癌であった。乳頭異常分泌の確定診断には色素注入乳腺区域切除術が行われることが多いが, 今回注入不能症例において, 超音波ガイド下穿刺吸引細胞診が主病変の局在, 確定診断に有用であったので報告する。
  • 北條 浩, 横手 祐二, 許 俊鋭
    2003 年 28 巻 5 号 p. 874-878
    発行日: 2003/10/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は, 55歳, 男性。主訴は労作時の息切れ。約6年前より労作時の息切れ, 動悸などの症状が出現し, 大動脈弁閉鎖不全症の診断で経過観察されていた。その後, 徐々に症状増悪するために, 経食道心エコー図 (TEE), 心臓カテーテル検査などの精査を施行し, 大動脈四尖弁による大動脈弁閉鎖不全症, 左→右血液短絡50%の膜様部心室中隔欠損症, 圧較差35mmHgの右室二腔症と診断した。手術は, 人工心肺下に, St.Jude Medical人工弁による大動脈弁置換術, 心室中隔欠損パッチ閉鎖術および右室異常筋束切除を施行した。術後は, 問題なく経過し, 現在社会復帰している。本症例は, 術前よりTEEなどにて大動脈四尖弁による大動脈弁閉鎖不全症と診断することが可能であった。
  • 藤原 清宏
    2003 年 28 巻 5 号 p. 879-882
    発行日: 2003/10/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は62歳, 男性。検診で胸部X線像上, 右上肺野に微小結節影を指摘された。Conventional CTで右S2に充実性結節影とともにS3にも異常陰影が認められ, 右S3の陰影は高分解能CTで微小なスリガラス状で腺癌が疑われた。経気管支鏡肺生検でS2は扁平上皮癌と診断された。多発肺癌を考え, 右上葉切除およびND2aを施行し, 両者ともstage IAで早期癌であった。肺癌の術前画像診断上, 主病巣以外に副病変の精査が必要な場合, 高分解能CTが有用である。
  • 上野 正勝, 大杉 治司
    2003 年 28 巻 5 号 p. 883-886
    発行日: 2003/10/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は66歳, 男性。主訴は嘔吐と腹痛。初診時の腹部X線像およびCT像にて腸重積と診断した。胸部X線像にて左肺野に直径6.5cmの円形陰影を認めたが, 救命を優先し腸重積に対する緊急手術を施行した。Treitz靱帯より50cmの空腸に腫瘍を先進部とする腸重積が20cmにわたり認められた。肺大細胞癌の小腸転移と病理診断した。また気管支鏡下生検にて左肺大細胞癌と診断した。術後カルボプラチン・タキソール併用による化学療法を開始した。しかし, 術2カ月後に腸重積を再発した。先進部は空腸の転移巣であった。術後, 化学療法を再開し, 発症より5カ月が経過したが原発巣も縮小傾向で外来通院中である。肺癌小腸転移は予後不良で術後生存期間は70日以内とされている。しかし, 本症例のように術後化学療法で原発巣が縮小し延命が期待できることもある。したがって, 小腸転移巣は耐術能があれば, 根治性はなくとも切除を考慮すべきである。
  • 宮澤 秀彰, 飯田 正毅, 伊藤 正直, 小棚木 均
    2003 年 28 巻 5 号 p. 887-892
    発行日: 2003/10/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    胃癌切除術後に多発小腸および大腸転移をきたした1例と, 胃癌手術時に多発大腸転移を認めた1例を経験した。症例1は76歳, 女性。平成12年4月に胃全摘術を施行。平成13年9月から腸閉塞を繰り返し, 注腸造影で結腸に多発する狭窄を認め, 平成13年11月手術を施行。腹膜播種はなく小腸に4カ所, 結腸に6カ所腫瘍を認め, 胃癌の転移と診断された。小腸部分切除, 回腸直腸側々吻合, チューブ式空腸瘻造設術を施行した。症例2は75歳, 男性。平成14年1月胃癌と診断され, 術前検査の大腸内視鏡検査でS状結腸に2個腫瘍を認め, 生検で低分化腺癌と診断。術中所見で結腸に計7個の腫瘍を認め, 胃癌の転移の診断であった。胃全摘および狭窄の強い結腸の腫瘍のみ切除した。進行した印環細胞癌や低分化腺癌術後には胃癌の腸管転移も考慮し, 速やかに診断し, バイパス手術や腸瘻造設等の外科的処置を行うのが, QOL向上につながると思われる。
  • 坂口 大介, 石田 秀行, 白川 一男, 桑原 公亀, 鈴木 毅, 村田 宣夫, 橋本 大定, 黒田 一, 糸山 進次
    2003 年 28 巻 5 号 p. 893-897
    発行日: 2003/10/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    肉眼的にびまん浸潤型形態を呈し, 胃癌の直腸転移と考えられた直腸病変の1切除例を経験したので, 文献的考察を加えて報告する。症例は61歳, 男性。57歳時に胃癌 (MU, circ, 4型) に対して胃全摘・膵尾部脾合併切除術を施行した。組織学的に低分化型腺癌 (por2) で, t3 (se) n2 (+) P0H0, stageIIIbであった。術後42カ月目に腹部膨満感が出現したため注腸検査を施行したところ, 下部直腸に全周性の狭窄を認めた。大腸内視鏡検査では, 下部直腸に明らかな潰瘍・隆起を伴わない狭窄を認めた。生検の結果, 低分化型腺癌であった。胃癌術後46カ月目に腹会陰式直腸切断術を施行した。切除標本の組織学的検索では, 粘膜下層から外膜にかけて増殖の主体を有する, 胃癌の組織像に酷似した低分化型腺癌であった。ガストリン, ペプシン, ソマトスタチンの免疫組織学的染色では直腸の腫瘍細胞が胃癌同様に陽性であるのに対し, 隣接正常直腸粘膜はいずれも陰性であり, 最終的に胃癌の直腸転移と診断した。直腸切断術後12カ月で癌性腹膜炎のため死亡した。
  • 二村 直樹, 松友 将純, 安村 幹央, 立山 健一郎, 阪本 研一
    2003 年 28 巻 5 号 p. 898-902
    発行日: 2003/10/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    十二指腸原発のstromal tumorは稀な疾患である。われわれは, 本疾患の1例を経験したので報告する。症例は72歳の男性で, 主訴は黒色便である。1999年7月, 黒色便と全身倦怠感があり当院に入院した。消化管出血の精査で十二指腸に腫瘤を指摘された。十二指腸造影, 内視鏡検査では下行脚から下十二指腸曲にかけて中心潰瘍を伴う隆起性病変を認めた。CT検査では十二指腸に接して約6cm大の腫瘤を認めた。血管造影検査ではhypervascular tumorを認めた。以上の所見から十二指腸原発GISTを疑った。手術所見では十二指腸から壁外性に発育した手拳大腫瘤を認め, 幽門輪温存膵頭十二指腸切除術と右半結腸切除術を行って摘出した。摘出標本では十二指腸下行脚から下曲に80×50×50mm大で壁外性に発育した腫瘤を認めた。病理組織検査では紡錘形細胞が増殖しており, 免疫染色ではsmooth muscle actin, desmin, s-100蛋白, NSEが陰性で, CD34, c-kitが陽性であった。
  • 小石 健二, 楠原 清史, 柳生 隆一郎, 藤原 由規, 中尾 宏司, 中川 一彦, 山村 武平
    2003 年 28 巻 5 号 p. 903-906
    発行日: 2003/10/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は81歳の女性。下腹部痛および腹壁外への腸管脱出を主訴に来院。腹部レントゲン, CT検査, 肉眼所見より, 卵巣嚢腫および臍ヘルニア嚢破裂による腸管脱出と診断, 緊急開腹術を行った。脱出小腸は約30cmで暗赤色に変色し, 時間経過においても色調の改善を認めなかったため小腸部分切除を行った。また, 腹腔内に小児頭大の右卵巣嚢腫を認め, 卵巣摘出術を同時に行った。成人臍ヘルニア嵌頓症例は稀であり, しかもヘルニア嚢が破裂し直接腸管脱出をきたした症例はわれわれの検索しえた限りでは本邦では報告例がない。従って, 成人臍ヘルニアは破裂, 嵌頓の危険性を十分に考慮し診断後早期に手術を行うことが望ましいと考えられた。
  • 田村 晃, 金子 弘真, 片桐 敏雄, 白倉 立也, 久保田 喜久, 柴 忠明, 今村 正成
    2003 年 28 巻 5 号 p. 907-911
    発行日: 2003/10/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は, ダウン症候群にて施設入所中の39歳, 女性。腹痛, 下血を主訴に当院入院となった。右腹部の軽度圧痛とHb 7.4g/dlの貧血を認め, 精査にて小腸腫瘍が示唆され, 手術となった。病理組織学的には腫瘍径6cm, 細胞分裂像3個/50視野 (高倍率) であり, 免疫組織学的には, C-kit陽性, CD-34陰性のuncommitted typeで, 狭義のGIST, borderline malignancyと診断された。しかし小腸GISTは予後不良のことが多く, また悪性度が低くても, 再発率が高いとされており, 今後慎重な経過観察が重要である。従来ダウン症候群は短命と認識されてきたが, その平均寿命は著しく改善されている。これに伴い, 今後自験例のようなGISTを含めた消化管腫瘍の合併も増加するものと思われた。
  • 星野 真由美, 池田 太郎, 後藤 博志, 杉藤 公信, 萩原 紀嗣, 越永 従道
    2003 年 28 巻 5 号 p. 912-915
    発行日: 2003/10/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    紫斑の出現前に腹部症状が先行して発症したHenoch-Schonlein紫斑病の1例を経験した。発症から紫斑の出現までに13日間経過し, その間に消化管内視鏡検査および腹腔鏡検査を施行した。消化管内視鏡検査においては, 十二指腸球部から下行脚にかけ粘膜に強い糜爛・発赤・浮腫を認め, また回腸および結腸粘膜においては全体的に浮腫状で易出血性であった。腹腔鏡検査にて腸管の肥厚・浮腫が著名で, 一部漿膜面の発赤が著しい部分が散在し, 腸間膜に多数の出血斑を認めた。以上の所見より本疾患を疑い, 紫斑が出現する以前よりステロイドのパルス療法を開始したところ, 腹痛の改善を認めた。本症例のように腹部症状が先行する症例では, 皮膚症状がみられなくても消化管内視鏡検査, 腹腔鏡検査により診断し, 治療を開始することが可能と考えられた。
  • 鈴木 幸正, 中川 国利
    2003 年 28 巻 5 号 p. 916-919
    発行日: 2003/10/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    盲腸後窩ヘルニアの1例を経験したので報告する。症例は68歳の男性で, 6年前に腹腔鏡下総胆管切石術を受けた。現病歴は夕食後に右下腹部痛が急に生じたため, 翌日に入院した。入院時, 腹部は全体に膨隆していた。腹部単純X線写真では鏡面像を伴う小腸ガス像を, CT検査では盲腸の背側に拡張した小腸を認めた。以上からイレウスと術前診断し, 緊急手術を施行した。開腹すると盲腸外側に径3cm大のヘルニア門が存在し, 盲腸後窩に回腸が10cmほど嵌入していた。ヘルニア門を形成する後腹膜に切開を加え, 整復した。腸管壊死を認めたため回腸を切除した。なおヘルニア門の切開により, ヘルニア嚢は消失した。盲腸後窩ヘルニアの術前診断は困難とされているが, CT検査は本症の診断に大変有用であると思われた。
  • 佐々木 啓成, 和田 敏史, 森谷 雅人, 水村 泰夫, 山本 啓一郎, 土田 明彦, 青木 達哉, 小柳 〓久
    2003 年 28 巻 5 号 p. 920-923
    発行日: 2003/10/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は71歳, 女性。主訴は右下腹部痛および貧血。下部内視鏡検査によりBauhin弁直上の2型大腸癌と診断した。腹部所見および下部内視鏡検査にて部位診断が可能であったため, 下部消化管造影を行わず手術を施行した。開腹時, 回盲部, 上行結腸は正中に存在しており, 小腸は右側に大腸は左側に偏移しておりnon-rotationと診断した。上行結腸癌に対しては, D2郭清をともなう回盲部切除術を施行し, non-rotationに対しては十二指腸や上行結腸の固定術は行わなかった。術後経過は良好で補助化学療法施行後, 第29病日に退院した。上行結腸癌の手術時に発見された腸回転異常症であるnon-rotationの1例を経験したので, 若干の文献的考察を加えて報告する。
  • 中田 博, 石田 秀行, 横山 勝, 橋本 大定
    2003 年 28 巻 5 号 p. 924-928
    発行日: 2003/10/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    仙骨前部に発生する成人 (思春期以降) 奇形腫はきわめて稀な疾患である。今回, 男子高校生に認められたので文献的考察を加えて報告する。症例は16歳, 男性。発熱と肛門痛を主訴に他院を受診。直腸背側の粘膜下膿瘍の診断で, 2回の経肛門的穿刺排膿を受けていた。その後も微熱が続いたため, 当科紹介入院。骨盤CTで最大径5cmの多房性嚢胞を, MRI (T2強調画像) 検査で第3仙椎から尾骨にかけて直腸を取り囲むように多房性の高信号領域を認めた。仙尾部嚢胞性病変と診断し, 経仙骨的アプローチで手術を行った。腫瘍は強固に直腸後側壁に癒着しており, 腫瘍を尾骨とともに可及的に摘出したが, 男性性機能の完全温存を目的に, 第4仙骨より高位の腫瘍壁は摘出せずに焼勺した。切除標本の組織学的検索では成熟した3胚葉成分を認め, 成熟奇形腫と診断した。術後6カ月経過した現在, 再発の兆候を認めていない。
  • 大澤 智徳, 石田 秀行, 石塚 直樹, 猪熊 滋久, 橋本 大定
    2003 年 28 巻 5 号 p. 929-933
    発行日: 2003/10/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    遠隔転移を伴う直腸肛門部悪性黒色腫 (ARMM) の予後は一般に極めて不良である。今回, ARMM同時性肝転移に対し, 経肛門的局所切除と全身化学療法を施行した1例を経験したので文献的考察を加えて報告する。症例は64歳, 男性。肛門部腫瘤を主訴に受診。術前検査で歯状線直上に可動性のある径3.5cm大の隆起性黒色腫瘤を認め, 生検で悪性黒色腫と診断された。CTおよびMRIで多発肝転移を認めた。局所切除後にcisplatin, vindesine, dacarbazineからなるCVD療法を開始したところ, 術後10ヵ月に肺転移が出現したが, 肝転移は術後NCを持続した。その後, 肝・肺転移巣の急速な増大を認め, 術後21ヵ月時に原癌死となった。本邦では遠隔転移の有無に関らず, ARMMの大多数に対して腹会陰式直腸切断術が選択される。本症例は遠隔転移を有するARMMでも, 原発巣の局所切除と化学療法により従来の報告例と比較して長期生存の可能性を示す興味のある1例である。
  • 須藤 俊美, 清水 公一, 谷川 啓司, 羽鳥 隆, 山本 雅一, 有賀 淳, 高崎 健
    2003 年 28 巻 5 号 p. 934-940
    発行日: 2003/10/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は70歳, 女性。1999年4月, 径1.5cm大の肝内胆管癌に対しS4部分切除術を施行した。2000年8月および12月にリンパ節転移再発を認め, それぞれに対して摘出術を施行した。その後のリンパ節転移再発に対し化学療法を施行したが副作用のため継続不能となり, 活性化自己リンパ球移入療法を行った。2001年5月より2002年2月まで合計11回, 平均1.12×109個のCAT細胞を点滴静注した。投与初期, 腫瘍は増大したが, 7回目の治療後より腫瘍の増大は停止し, 2003年9月まで1年6カ月の間, 腫瘍の増大は停止したままである。また治療後QOLスコアは改善した。CAT療法が転移性肝内胆管癌に対して腫瘍増大を抑制し, QOLを維持・改善するtumor dormancy therapyとして期待できる可能性が示唆された。
  • 梶 理史, 山本 雅一, 羽鳥 隆, 高崎 健
    2003 年 28 巻 5 号 p. 941-944
    発行日: 2003/10/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    58歳男性。C型肝硬変経過観察中, 肝S6に腫瘤を指摘され画像上は肝細胞癌と診断。肝S6部分切除術を施行した。肉眼所見上, 白色線維性の硬い腫瘍で, その中心部は円形で壊死部を認めた。周囲の白色線維成分 (以下浸潤部) は肝周囲の脂肪組織へ浸潤していた。組織学的には, 中心部は好酸性の大型の核を有する異型細胞が索状から巣状に増殖し, 浸潤部は好塩基性, 小型の異型細胞が管状に配列し, 線維性の間質を伴った。免疫組織染色ではヘパトサイト染色は陰性, epithelial membrane antigen (以下EMA) 染色, サイトケラチン染色およびMUC1染色陽性で, 肝内胆管癌と診断した。HCV抗体陽性の肝硬変を併存した肝内胆管癌であり, 結節内結節の肉眼所見も特異でありここに報告する。
  • 浅岡 忠史, 東野 健, 加納 寿一, 岡村 純, 門田 卓士
    2003 年 28 巻 5 号 p. 945-949
    発行日: 2003/10/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    症例は53歳の男性。TAEを多数回施行後の進行肝細胞癌に対して, 拡大肝右葉切除術を施行した。術後ビリルビンの上昇を認め, ビリルビン吸着と血漿交換を繰り返し施行した。術後37日目のMRCPで左肝管から総肝管にかけての狭窄を認め, 手術に伴った術後胆管狭窄と診断した。PTCDを施行し減黄することができたが, 胆管の狭窄は十分には改善しなかった。予後を考慮して, 早期外来治療への移行を目的としてExpandable Metallic Stent (EMS) 留置を行ったところ, PTCDチューブは抜去され退院可能となった。退院6カ月後に原病死したが, この間EMS留置に伴う合併症を認めず, 外来通院が可能であった。近年, 良性胆管狭窄に対するEMS留置例が増加しつつあるが, その適応については意見の分かれるところである。自験例のように短期的な症状改善を目的としたEMS留置は有効であると考えられた。
  • 馬場 俊明, 杉山 譲, 小堀 宏康, 木村 寛, 小野 ふさ子, 遠藤 正章
    2003 年 28 巻 5 号 p. 950-954
    発行日: 2003/10/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
    腫瘤形成性膵炎と鑑別が困難だった膵癌を経験した。症例は74歳, 女性。平成3年より糖尿病にて当院内科へ通院していた。平成11年2月28日腹部不快感, 3月23日黄疸が出現し, 閉塞性黄疸の診断にて入院。腫瘍マーカー, 腹部CT, ERCP検査の結果, 膵癌疑いにて手術を勧められたが拒否し, PTCD tube挿入のまま退院した。平成12年1月6日腫瘍マーカーの低下, 腫瘤の縮小を認めたため, 腹部血管造影 (以下Angio.), CT Angiography (以下CTA) 施行, 腫瘤形成性膵炎の診断にて胆管ステントを留置した。平成12年11月8日腫瘍マーカーの上昇および腫瘤の増大を認め, 膵癌疑いにて再度Angio., CTAを施行した。その結果多発性肝転移を認め, 胆管ステント内肉芽組織の生検にて中分化管状腺癌の診断を得た。各画像診断の限界を考え, 臨床経過を注意して観察することが重要と教えられた1例であった。
  • 前原 喜彦
    2003 年 28 巻 5 号 p. 955
    発行日: 2003/10/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
  • 矢永 勝彦
    2003 年 28 巻 5 号 p. 956
    発行日: 2003/10/30
    公開日: 2009/08/13
    ジャーナル フリー
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