舌広範囲切除術後筋皮弁による再建術を行った3症例の構音動態を, 発語明瞭度, ダイナミック・パラトグラフィ, ビデオによる構音器官の観察, 交互運動速度により検討し, 以下の知見を得た.
1.発語明瞭度は41.2%~47.1%で, 母音では, 4/5切除例で/i/の障害が顕著に認められた.子音については, 2/3切除例では軟口蓋音が, 4/5切除例では歯音・歯茎音が特に障害されていた.
2.ダイナミック・パラトグラム所見より, 筋皮弁は残存している舌組織によって動かされ, 口蓋と接触または狭めを形成し, 構音運動に関与していることが認められた.
3.舌広範囲切除例では口唇等の代償運動がみられ, 皮弁や残存舌が口蓋と接触不十分な症例では, この傾向が特に著しかった.
4.発語明瞭度の低下には, 構音器官の運動速度の低下, 術式, 術後経過年数も関与していると考えられた.
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