脳血管障害や頭部外傷などに伴う開鼻声の原因である鼻咽腔閉鎖不全症での発音活動における口蓋帆挙筋活動の範囲と予備能の大きさを3例を対象に検討した.対象行動は, 母音/a, e, u/およびこれらを後続母音とする [m] [s] [b] [p] 音節に加えて [ts〓] [t∫i] 音節の各10回の単独表出, soft (moderate blowingでの1/2の口腔内圧でのblowing) , moderate (各被験者が苦痛なく吹ける強さ) , hard (可及的最大blowingでのblowing) の3種類の高さによるblowing活動とした.その結果, 発症原因, 治療経過, 年齢, 発症後経過期間については, 症例間で相違がみられたものの, 今回対象とした3被験者では, 健常者同様にblowing活動での口蓋帆挙筋活動は口腔内圧に相関したが, 発音活動では各音素の単独表出時の口蓋帆挙筋活動は50%以下の低い領域に分布するか, 高い領域に分布するかの二極性の分布を示し, さらに最大筋活動も健常者と異なって最強blowingではなく発音時に認められた.このことは, 脳血管障害などでの鼻咽腔閉鎖不全症の治療には共通した方法を考案できる可能性を示している.
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