音声言語医学
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54 巻, 2 号
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総説
  • 菊池 良和, 梅崎 俊郎, 小宗 静男
    2013 年 54 巻 2 号 p. 117-121
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/27
    ジャーナル フリー
    吃音症は,原因・自然回復に誤解の多い疾患である.その誤解を解くには,吃音を科学する,ことが必要である.吃音症の興味深い特徴の一つとして,マスキングノイズや,遅延・周波数変換聴覚フィードバックを聴かせながら話すと,吃音が軽減する.その不思議な吃音症の病態は解明されていないが,聴覚入力異常が吃音症の発症に関与していることが推察できる.そこで聴覚入力機構を調べるために,時間分解能と空間分解能の高い脳磁図を用いて,聴覚ゲーティング機能,聴覚皮質の周波数配列,そしてMRIで灰白質量を比較するボクセル形態解析法を行った.その結果,吃音群において,左聴覚野での聴覚ゲーティングの異常と,右聴覚野での周波数配列の広がりと,それに相応する灰白質量の増加が示された.この結果から吃音者では基本的な聴覚入力において,異常があることが示唆され,吃音の発症の原因の一因と考えることができる.
原著
  • 猪俣 朋恵, 宇野 彰, 春原 則子
    2013 年 54 巻 2 号 p. 122-128
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/27
    ジャーナル フリー
    年長児145名に対し,ひらがな1から3文字の音読と書取,複数の認知課題を実施し,幼児のひらがなの読み書きに影響する認知要因を検討した.音読や書字成績を従属変数,認知課題成績を独立変数とした重回帰分析の結果,音読ではRAN,単語逆唱,非語復唱の成績が有意な予測変数として抽出された.書取では,図形の模写,単語逆唱,非語復唱の成績が有意な予測変数として抽出され,図形の模写の貢献度が最も高かった.また,音読と書取課題それぞれについて成績上位群と下位群間の認知課題の成績を比較した結果,いずれも下位群が上位群に比べて有意に,RAN,音韻情報処理課題,図形の模写と直後再生課題の成績が低かった.年長児におけるひらがなの音読と書取には,自動化能力,音韻情報処理能力,視覚認知能力が必要であり,特に書取において視覚認知能力がより重要であることが示唆された.
  • 井上 瞬, 渡嘉敷 亮二, 平松 宏之, 本橋 玲, 豊村 文将, 野本 剛輝, 鈴木 衞
    2013 年 54 巻 2 号 p. 129-135
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/27
    ジャーナル フリー
    ボツリヌムトキシン注射あるいは手術が有効であった,内転型痙攣性発声障害の患者43例に対し,発症年齢,病悩期間,治療内容に関するアンケート調査を行った.発症年齢は10代が最も多く,診断にいたるまでに平均で6年8ヵ月を要していた.診断にいたるまでに多くの患者が複数の医療機関を受診しており,その平均は4.2件であった.手術では全例で症状の改善が得られていた.音声治療も効果が得られていたが,約半数の患者は変化がないと回答していた.薬物治療やカウンセリングで改善した例はなかった.正しい診断にいたるまでに長期間かつ多数の医療機関受診を要する実態は,10年以上前の中西(2000年)の先行研究と現在も同様であり,より多くの医師が本疾患への認識を広める必要がある.
症例
  • ―幼児期に助詞を含む文の習得の可能性について―
    原田 浩美, 能登谷 晶子, 橋本 かほる, 伊藤 真人, 吉崎 智一
    2013 年 54 巻 2 号 p. 136-144
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/27
    ジャーナル フリー
    聴覚障害児の言語力については,語彙や構文獲得の遅れが指摘されている.われわれは,この問題解決のためには,手話が有効であると考え,1歳前から聴覚口話法に加えて手話を導入した.本研究では重度聴覚障害幼児1例を対象に,2歳3ヵ月までの手話による文の指導を後方視的に検討した.特に文の発達支援のために,親による子どもの行動発達記録と,助詞抜け文の記録を用いて分析した.(1) 1歳6ヵ月で手話による助詞抜け2語連鎖が出現して以降,親に対し,10種類の助詞を含むさまざまな文での話しかけを指導できた.(2) 親による子どもの行動発達記録を用いて,2歳3ヵ月までに14種類の助詞を含むさまざまな文での話しかけを指導できた.(3) 本例は,2歳2ヵ月から2歳3ヵ月までに11種類の助詞入り文を表出した.表出された助詞のなかの8種類が格助詞であった.(4) 親による子どもの文や行動発達記録を基に,幼児期でも適切な助詞入り文での話しかけができる可能性を示した.
短報
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