音声言語医学
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34 巻 , 2 号
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  • 磯野 信策, 大橋 靖, 飯田 明彦, 錦織 美知
    1993 年 34 巻 2 号 p. 149-157
    発行日: 1993/04/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    きわめてまれな疾患である先天性無舌症女児を継続的に観察し, 9歳時における構音を語音発語明瞭度検査とビデオ録画による観察で評価し, 側方X線ビデオ, エレクトロパラトグラフ, 音響解析装置を用いて多面的に調査して以下の知見を得た.
    1) 会話明瞭度は良好であったが, 構音を詳細に検討すると舌欠如による構音障害が明らかであった.
    2) 舌の欠如を母音と軟口蓋音では口腔底の膨隆で代償し, 両唇音と軟口蓋音の一部を含む多くの子音では下唇で代償していた.下唇による代償では, 音によって上顎歯茎に接触する面積・形態を変化させていた.
    3) 代償構音は, 乳児期の早期に獲得した嚥下運動としての口腔底の膨隆を構音に利用できたこと, 上下顎の位置関係から下唇を上顎歯茎に接触しやすかったという本症例独自の口腔の形態と機能があったために獲得できたと思われた.
  • ―生理学的アプローチにもとづいた包括的評価―
    西尾 正輝
    1993 年 34 巻 2 号 p. 158-180
    発行日: 1993/04/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    Spastic dysarthriaにおける発話メカニズムの運動機能を生理学的アプローチにもとついて包括的に検討した.検査課題は6大項目 (全身運動機能, 呼吸機能, 発声機能, 鼻咽腔閉鎖機能, 構音運動機能, 摂食機能) 69小項目から構成した.これを健常者群とspastic dysar-thria群各15例に実施し, 主として以下の結果を得た.
    1) 健常者群との比較では, 大項目では全大項目で, 小項目では統計処理可能であった67小項目中54小項目で有意に低値を示し, 機能の低下が発話メカニズムの広範におよぶ傾向がみられた.
    2) 発話の重症度得点 (明瞭度と異常度の和) との比較では, 大項目では全大項目で, 小項目では統計処理可能であった67小項目中41小項目で有意な相関を認め, 治療プランを選択するうえで有用性の高い運動課題が示された.
    以上の結果にもとついて, dysarthriaの神経学的検査法について検討を加えた.
  • ―黙読と音読との比較―
    小島 好雅, 進藤 美津子, 加我 君孝
    1993 年 34 巻 2 号 p. 181-188
    発行日: 1993/04/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    失語症患者の音読の障害の程度は心理学的検査で評価可能である.しかし, 黙読については, 有効な検査法は今日まで確立されていない.今回, 失語症患者の黙読能力を評価することを目的とし, 電気眼振計を用いて読字の際の眼球運動を記録し, 結果を解析した.
    対象は帝京大学病院耳鼻咽喉科で言語訓練を続けた失語症患者5名である.読む文章は童話「北風と太陽」を用い, 読字の条件は黙読, 音読で行った.解析項目は (1) 合計読字時間, (2) 合計サッケード数, (3) 平均注視時間とし, 記録は4chENGを用い, 水平垂直記録で行った.結果は記録紙上より用手法で算出した.
    結果, 正常例の眼球運動パターンは記録紙上注視相とサッケード相に分けられ, 両者が交互に繰り返されており, 一連の階段波形となってあらわれた.ブローカタイプの4例は黙読の眼球運動パターンがよく保たれており, ウェルニッケタイプの1例は黙読の眼球運動パターンが最も障害されていた.
  • ―子音の習得と異常構音の経過―
    鈴木 恵子, 岡本 朗子, 原 由紀, 新美 成二, 鳥飼 勝行
    1993 年 34 巻 2 号 p. 189-197
    発行日: 1993/04/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    適切な言語管理のための基礎資料を得る目的で, 口蓋粘膜弁法を1歳台に施行した口蓋裂児40症例の構音発達を, 術前から学齢期まで縦断的に観察し, 異常構音の経過とともに, 分析した.
    その結果, 口蓋裂児の子音構音の習得経過は子音により異なる傾向を示し, 第1に, 初発, 完成年齢とも健常児とほぼ変わらない通鼻音, 声門音, 半母音.第2に, 術後初発し, 健常児と同時期に完成する/p/.第3に, 初発, ないし完成年齢に明らかな遅れを認めた歯 (茎) 音, 歯茎硬口蓋音, 軟口蓋音であった.異常構音では, 手術前後に出現し, 術後早期に消失する声門破裂音, 鼻咽腔構音が多数例観察された.子音の習得年齢および異常構音の傾向から, 口蓋裂児の舌運動の分化の遅れ・歪みが示唆された.中耳炎罹患率が高く, 順調な構音習得のための聴力管理の重要性が, 改めて認識された.
  • 安立 多恵子, 松本 満美, 小枝 達也
    1993 年 34 巻 2 号 p. 198-202
    発行日: 1993/04/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    単音すら明瞭に構音できない重度の表出性言語発達遅滞を示した6歳男児例の臨床像と, 音声言語獲得にいたる改善経過について報告した.本症例の特徴は, 顔面口腔領域に麻痺がないにも関わらず, 基本的な口腔機能が未獲得な点であった.言語理解も遅れていたが, 5歳3ヵ月で3語文連鎖レベルに達しており, 日常的にはブロックサイン様の身振りで意志伝達を行うなど, 言語表出に比べて軽度であった.言語訓練として, 口唇・舌の基本的な運動と音節復唱の強化を行った.その結果, 約半年で発語器官の機能向上とプロソディーの改善が認められ, 意思伝達手段として音声言語を使用するにいたった.同時に, 言語理解面も向上が認められた.本症例のように, 口腔機能障害を有する言語発達遅滞児に対しては, 発語器官への系統的な訓練が有効であると考えられた.
  • ―VTRによる1試行分析―
    佐竹 恒夫, 原 広美, 東川 健
    1993 年 34 巻 2 号 p. 203-215
    発行日: 1993/04/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    スモールステップに基づく言語発達遅滞児の言語訓練において, 児の微細な反応やセラピストの働きかけの技法を明らかにするため, VTR録画を用い必要に応じフレーム単位の画像を抽出し, 1試行ごとに分析を行う方法を提示した.
    このVTRによる1試行分析を音声記号未習得の3症例に実施し, 待機動作について検討した.待機動作とは, 言語記号の受・発信行動の成立途上に現れる行動でセラピストや刺激項ないし見本項の方に手をあげたり, 掌をヒラッと返したりするものである.VTR分析の結果, 3症例に受信 (理解) 課題と発信 (表現) 課題時に待機動作が観察された.待機動作は対象物に定位する志向反応の後, かつ目標とする反応の前に生じ, 受信や発信行動の体制化の重要な指標であることが明らかとなった.待機動作のように子供にみられる微細な行動を発見し, 確認し, 記述するためには, VTR分析は有効であると考えられる.
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