音声言語医学
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51 巻, 4 号
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原著
  •  
    兵頭 政光, 西窪 加緒里, 田口 亜紀, 三瀬 和代, 城本 修
    2010 年 51 巻 4 号 p. 305-310
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/10
    ジャーナル フリー
    学校教員は職業的に声を酷使する機会が多く,音声障害は大きな問題となっている.欧米では教員の音声障害に関する疫学調査が数多く報告されているが,本邦では散見されるのみである.そこで今回,小・中学校の教員を対象として音声障害の実態を明らかにするために,Voice Handicap Index(VHI)による音声障害の自覚度評価法を併用したアンケート調査を実施した.
    アンケートは高知県下の小・中学校の教員を対象に実施し,468名(男性178名,女性264名,無回答26名)より回答が得られた.声のかすれを54.1%の教員が,のどの痛みや違和感を51.5%の教員が自覚していた.これらの症状は男性よりも女性に多い傾向があった.教員としての勤務歴との関係を見ると,声のかすれは勤務歴が11年以上の群のほうが10年以下の群よりも多く,部活動やクラブ活動を指導している教員に多い傾向があった.音声障害に対して耳鼻咽喉科医の診察や治療を受けたことのある教員は少なかった.
    音声障害の自覚度をVHIで検討すると,スコアの平均は14.7点であったがばらつきが大きく,音声障害に対する意識が個人によって大きく異なるためと考えられた.また女性や勤務歴が長い教員ではスコアが高く,学校教員の音声障害に対する早期治療や予防対策の必要性が示された.
  • ─類表皮嚢胞と貯留嚢胞の比較を中心に─
    楠山 敏行, 池田 俊也, 森 有子, 宮本 真, 佐藤 剛史, 浅香 明日美, 中川 秀樹, 田村 悦代, 新美 成二, 福田 宏之
    2010 年 51 巻 4 号 p. 311-317
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/10
    ジャーナル フリー
    目的;声帯嚢胞症例においていまだ十分な検討がなされていない組織型による臨床像の比較を中心に統計学的検討を行った.対象;2001年1月から2005年12月までの5年間に東京ボイスセンター(以下当センター)を受診した声帯嚢胞症例108例(男性53例,女性55例)である.方法;性,年齢,声の職業性,治療成績などについて統計学的に検討した.また,組織型による臨床像の比較を統計学的に検討し,自験例の声帯結節と声帯ポリープとの相違と比較した.結果;1.喉頭微細手術の7.4%に認めた.2.声の職業性を49%に,さらに音声酷使を加えた群を64%に認めた.3.手術治療により96%に良好な結果を得た.4.類表皮嚢胞と貯留嚢胞の比較では性,年齢,声の職業性,音声酷使,内視鏡所見などに有意性を認め,声帯結節と声帯ポリープとの比較における有意性と類似した.結論;類表皮嚢胞と貯留嚢胞は有意に異なる臨床像を呈し,これらの相違は声帯結節と声帯ポリープの臨床像の相違と類似した.
  • ─声の職業性と喫煙習慣を中心に─
    楠山 敏行, 池田 俊也, 森 有子, 宮本 真, 佐藤 剛史, 浅香 明日美, 中川 秀樹, 田村 悦代, 新美 成二, 福田 宏之
    2010 年 51 巻 4 号 p. 318-323
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/10
    ジャーナル フリー
    目的;本邦初の喉頭に特化した東京ボイスセンター(以下当センター)における音声障害症例に対して統計学的検討を行った.対象;過去5年間に受診した音声障害症例4075例である.方法;性,年齢,疾患,喫煙歴,声の職業性などについて統計学的に検討した.結果;声帯に噐質的変化を認めるもののなかでは声帯結節,喉頭炎,声帯ポリープの順に,声帯に著変を認めないもののなかでは機能性発声障害,上咽頭炎,痙攣性発声障害の順に多く認めた.声帯結節,喉頭炎,声帯ポリープ,声帯嚢胞の順に声の職業性との高い有意性を認めた.ポリープ様声帯,喉頭白板症,喉頭癌,声帯嚢胞,声帯ポリープの順に喫煙率との高い有意性を認めた.結論;1)過去の報告と比較して声帯結節,上咽頭炎,声帯嚢胞,痙攣性発声障害を多く認めた.2)声帯嚢胞と声の職業性との関連性を示唆した.3)声帯嚢胞と声帯ポリープの喫煙との関連性を示唆した.
  • 橋本 かほる, 能登谷 晶子, 原田 浩美, 伊藤 真人, 吉崎 智一
    2010 年 51 巻 4 号 p. 324-329
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/10
    ジャーナル フリー
    聴覚障害と知的障害を合併する2例の幼児に金沢方式による言語指導を行い,重複障害幼児の言語聴覚療法について若干の考察を行ったので報告した.症例1は1歳6ヵ月で難聴・脳性麻痺・重度精神遅滞・てんかんと診断された男児である.聴力レベルは85dB,3歳5ヵ月より金沢方式による指導を開始した.6歳3ヵ月時,受信でも発信でも最も多いものは文字単語であった.8歳8ヵ月,コミュニケーションブックによる発信行動ができている.症例2は1歳8ヵ月で難聴・中度の精神遅滞・筋緊張低下と診断された女児である.聴力レベルは70dB.2歳より金沢方式による指導を開始した.6歳9ヵ月時の受信は聴覚読話が主で,発信は音声発信が主であった.2例とも身体障害のために手指法には限界があったが,知的障害を伴っていても聴覚読話に加えて文字言語がコミュニケーション手段として有効に活用できたことから,中~重度の知的低下があっても文字単語の活用が可能であったことを示す例であった.
  • ─声の大きさの調節との比較─
    島守 幸代, 反田 千穂, 伊藤 友彦
    2010 年 51 巻 4 号 p. 330-334
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/10
    ジャーナル フリー
    本研究は吃音児に対する話し方の指導法を開発するための基礎的研究として,1)幼児は発話速度をいつ頃から意識的に調節できるようになるのか,2)速度調節の発達は声の大きさ調節の発達とは異なるのかどうか,について検討したものである.対象児は3歳から6歳の幼児81名であった.刺激語の速度(「ゆっくり」,「速く」)と大きさ(「小さい声」,「大きい声」)を調節させる課題を行った.その結果,速度調節が可能な幼児の割合は3歳で10.0%,4歳で14.3%,5歳で63.6%,6歳で88.9%であった.大きさ調節が可能な幼児の割合は,3歳で35.0%,4歳で61.9%,5歳で77.3%,6歳で94.4%であった.これらの結果から,4歳までは速度調節のほうが大きさ調節よりも困難であることが示唆される.一方,5歳になると速度調節が可能な幼児の割合が著しく増加し,大きさ調節との差が小さくなり,6歳ではほとんどの対象児で速度も大きさも調節可能になることが明らかになった.
  • 東家 完, 湯本 英二, 讃岐 徹治, 熊井 良彦, 西本 康兵
    2010 年 51 巻 4 号 p. 335-340
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/10
    ジャーナル フリー
    披裂軟骨内転術は,一側声帯麻痺患者の嗄声を改善させる有用な手術の一つである.しかし,披裂軟骨筋突起周囲を操作するため,術後に披裂部を中心とした腫脹を起こす.腫脹が高度の場合には気管切開が必要となることがあり,術後早期の経過観察については注意を要する.しかし,術後の咽喉頭粘膜の腫脹を詳細に検討した報告は見られない.今回,われわれは,当科で披裂軟骨内転術を施行した一側声帯麻痺患者8例について,術後の咽喉頭を鼻咽喉ビデオスコープを用いて経時的に観察し,粘膜の腫脹を評価した.評価項目を1)患側声帯膜様部の腫脹,2)患側披裂部の腫脹,3)患側梨状陥凹の腫脹とし,術後咽喉頭粘膜腫脹の変化と,腫脹が最大となる時期に影響する因子,評価方法の妥当性について検討した.結果,術後咽喉頭粘膜腫脹は術後2日目以降に強くなり,腫脹が最大となるのは術後3日目から4日目であった.また,本評価方法の結果は,検者間で差がなかった.
  • 濱田 豊彦
    2010 年 51 巻 4 号 p. 341-350
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/10
    ジャーナル フリー
    韻律情報は,文字には含まれない音声言語特有の特徴であることから,その弁別には,日常生活のなかでみずから聴覚を活用し,獲得していくことが求められる.したがって韻律の獲得は聴覚活用の指標になると考えた.そこで本研究では,聴覚障害児64名を対象にアクセントとイントネーションの聴取弁別課題を行い,聴力レベルとの関係から検討した.
    その結果,平均聴力レベルでは,イントネーションは約85dBHL以下の者のほとんどが有意な弁別が可能であったのが,アクセントでは約70dBHL以下と難聴が軽い者でないと聴取弁別できなかった.したがってアクセントよりもイントネーションのほうが重度の聴覚障害児でも聴取弁別が可能であることが示唆された.このことは,イントネーションがアクセントよりも多様な音響信号を含み,持続時間の変化など,より重度な聴覚障害児においても活用が可能な信号を含んでいることを意味すると推察された.
  • 飛永 真希, 檜垣 雄一郎, 冨田 吉信
    2010 年 51 巻 4 号 p. 351-354
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/10
    ジャーナル フリー
    同一の切除範囲や同一の再建皮弁における構音機能を検討するために,舌可動部半切術,大胸筋皮弁による再建術を行った症例で術後6ヵ月以上経過している9例を対象とし,皮弁の形状分類と,舌の可動性の評価を行い,これらと発語明瞭度との関連を検討した.
    その結果,発語明瞭度は隆起型71.6%,平坦型84.4%,陥凹型34.1%であり,陥凹型は低い傾向を示した.舌の可動性は,前方可動性,側方可動性ともに,隆起型では発語明瞭度と相関する傾向を認めたが,陥凹型では相関しなかった.皮弁の形状が舌の可動性よりも発語明瞭度に与える影響が大きい可能性があり,皮弁の形状は平坦型以上の隆起が必要と考えられた.
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