自閉症に知的障害を伴う27名を対象に, コミュニケーション行動の獲得と新版K式発達検査 (以下K式) との関連を検討した.〈S-S法〉のコミュニケーション態度チェックリストでは, 症例による差が得られにくい結果となった.そこで, コミュニケーション行動を3側面にわけ, それぞれ5段階で評価するリストを作成した.その結果, 5段階評価によるチェックリストでは, コミュニケーション行動の獲得の変化が捉えられた.K式の言語・社会の項目とコミュニケーション行動の発達には関係がなかったが, 認知・適応項目との間に関係があった.また, コミュニケーション行動の獲得には, 他者や物に注目するか否かといった, 認知の前段階ともいえる面の発達への関与が示唆された.さらに, コミュニケーション行動で改善が見られたものは, コミュニケーション手段の獲得も可能であることが示され, 重度例でのスモールステップの評価リストの有用性が示された.
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