音声言語医学
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総説
  • 前川 圭子
    2024 年 65 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/01
    ジャーナル 認証あり

    声帯結節は小児の音声障害の最も多い原因疾患である.声の濫用や誤用が成因のため,成人例ではまず音声治療を行うが,小児例では自然軽快が期待されるため,本邦では積極的な治療介入を行わない施設が多い.しかし,小児期に嗄声が重い症例やアレルギー疾患をもつ女児では,思春期以降も音声愁訴が残りやすい.また,小児でも成人と同様,音声障害を自覚し,社会参加上の不利があるとの報告がある.これらを踏まえ,少なくとも音声予後の不良が予想される小児声帯結節例には音声治療を行うべきであろう.
    当院では音声治療を保護者同席で行っている.声の衛生指導では,叫び声以外は禁止せず,患児自身に発声の悪習慣を気づかせ,修正させる.音声訓練では,主に半遮蔽声道エクササイズを利用している.近年,小児に対する音声治療の効果を示す報告が増えてはいるが,十分にデザインされた研究は多くなく,さらなる検討が求められる.

原著
  • 坂崎 弘幸, 瀧元 美和, 角田 玲子, 伏木 宏彰
    2024 年 65 巻 1 号 p. 7-13
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/01
    ジャーナル 認証あり

    本研究は,吃音児に対するテレコミュニケーションを用いたオンラインによるLidcombe Program(リッカムプログラム,以下LP)の有用性を検討することを目的とした.オンラインLPを実施した17名『オンライン群』の結果を後方視的に調査し,対面式LPのみを実施した22名『対面群』の結果と比較検討した.保護者が評定した吃音重症度評定(以下SR)と言語聴覚士が評定したSRについて,16回のLP指導の前後および2群間で比較した.両群とも指導後のSRは指導前のSRに比して統計的に有意な改善傾向が認められた.『対面群』と『オンライン群』の間に有意差は認められなかったことから,オンラインLPの効果は少なくとも16回までの指導において対面式LPに劣らない可能性が示唆された.今後は吃音が寛解するまでに要する期間,寛解後の吃音再発率なども両群で比較し,オンラインによるLPの有用性を検証する必要がある.

  • 小崎 晃裕, 讃岐 徹治, 竹本 直樹, 大谷 隆浩, 岩﨑 真一
    2024 年 65 巻 1 号 p. 14-18
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/01
    ジャーナル 認証あり

    嗄声における聴覚心理的評価法(GRBAS尺度)は,再現性が検者の熟練度に依存するために,検者間および検者内の一部の尺度は再現性が低いとされている.今回の検討では,10年以上の音声障害診療経験のある熟練言語聴覚士3名を検者として,音声障害患者74例の録音音声をGRBAS尺度で評価し,期間をおいて再度同症例をランダム化して再評価した.検者内信頼性評価のために1回目の評点と2回目の評点の一致度を評価し,3人の評価の一致度から検者間信頼性評価を行った.結果として,検者内においてGRBAS尺度のすべての尺度で評点はおおむね一致していたが,検者間におけるR尺度とS尺度は特に再現性に乏しかった.検者内一致度は高いために,同一検者による評価は有用であると考えられるが,検者間評価においては,熟練の言語聴覚士間でも複数の尺度の評価が異なる場合があった.以上からGRBAS尺度に代わる新しい客観的評価の作成が望まれた.

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