音声言語医学
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51 巻, 1 号
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原著
  • —小学生の読み書きスクリーニング検査 (STRAW) を用いて—
    鈴木 香菜美, 宇野 彰, 春原 則子, 金子 真人, Wydell Taeko N., 粟屋 徳子, 狐塚 順子, 後藤 多可志
    2010 年 51 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/16
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 発達性読み書き障害児の診断評価の補助的な指標となる書字特徴を明らかにすることである. 対象は専門機関にて診断を受けた1年生から6年生の発達性読み書き障害児45名と, 定型発達児560名である. 小学生の読み書きスクリーニング検査のひらがな, カタカナ1文字と単語の書取課題にて分析した結果, 発達性読み書き障害児の書字特徴は, 特殊音節で誤りやすく, その誤りは学年が上がっても減少しにくい点, 低学年ではひらがなの単語よりも1文字で誤りが多い点, ひらがなに比べてカタカナの習得の遅れが著しい点であると思われた. 一方, 主に1年生から3年生でひらがな単語の心像性効果が両群で認められる可能性が示唆された. したがって, ひらがなやカタカナに関して1文字と単語双方の書取課題を実施し, これらから得られた書字特徴を確認することが発達性読み書き障害児の診断評価における補助的な指標となりうるのではないかと考えられた.
  • —単語属性条件を統制した単語群を用いた検討—
    藤吉 昭江, 宇野 彰, 川崎 聡大, 田口 智子, 春原 則子, 福島 邦博
    2010 年 51 巻 1 号 p. 12-18
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/16
    ジャーナル フリー
    漢字書字に困難を示した8歳の右利き男児に関する症例報告である. この児童に対して漢字の成り立ちを音声言語化して覚える方法 (聴覚法) と書き写しながら覚える従来の学習方法 (視覚法) の2種類の訓練方法の有効性について, 刺激単語に関する属性を統制した単語群を用いて単一事例実験計画法にて検討した. 単語属性に関しては, 学年配当以外の表記妥当性, 親密度, 心像性, 画数の各条件を統制した. その結果, 聴覚法が視覚法に比べて正答率と維持率に関して有意に高い結果であった.
    さらに属性を統制した単語群において方法別効果の差が認められたこと, および各単語間の属性による正答率の差は有意ではなかったことから, 今回の結果には, 単語属性による影響を排除しても訓練法の違いによる影響が大きいと考えられた.
  • —深層格の視点から—
    澤 隆史
    2010 年 51 巻 1 号 p. 19-25
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/16
    ジャーナル フリー
    本研究では, 聴覚障害児の作文における格助詞の使用と誤用の特徴を, 深層格の視点から検討することを目的とした. 聾学校中学部生徒50名の作文で使用されている9種類の格助詞をすべて抽出し, 正用と誤用に分類した. さらに格助詞が表す深層格ごとに正用数, 誤用数, 誤用の特徴について分析した. その結果, 同一の格助詞でも表示する深層格によって正用数の差が大きいことが示された. また誤用の特徴について分析した結果, 正用数が多く, 表示できる深層格の種類が多い格助詞において誤りも多く生じること, 同じ深層格を表示する格助詞の間で置換の誤りが生じやすいことが示された. これらの結果から, 聴覚障害児の格助詞の使用や誤用は, それぞれの格助詞が表示する深層格と密接に関連することが示唆された.
  • —「口蓋化構音」は“palatalized”か“retracted”か—
    藤原 百合, 山本 一郎
    2010 年 51 巻 1 号 p. 26-31
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/16
    ジャーナル フリー
    「口蓋化構音」は, 歯茎音が舌尖ではなく舌の中央部と硬口蓋の後端で産生された歪み音と定義されているが, 実際の構音操作は口腔内の観察や聴覚的印象ではわかりにくい. そこで唇顎口蓋裂術後の10症例を対象として, 歯茎音/t//s//ts/産生時の舌と口蓋の接触パターンをエレクトロパラトグラフィを用いて分析した.
    結果, 接触部位の後方化が最も多く (16音) , 次いで広範囲な接触 (6音) , 口蓋前方と後方に二重に接触 (4音) , 前方化 (3音) , その他であった. 後方化していた16音について人工口蓋の前, 中, 後部への接触数を見ると, (1)前方部への接触はあるが中・後部により多く接触 (3例) , (2)中・後部のみに接触 (9例) , (3)後部のみに接触 (4音) と, 後方化の程度もさまざまであった.
    これらをすべて「口蓋化構音」としてよいかどうか? また英語表記は“palatalized”か“retracted”か? 今後, 国際的な評価基準との整合性を図るため, 異常構音の分類, 名称について再検討する必要がある.
  • —2音節目に視点を当てた検討—
    島守 幸代, 伊藤 友彦
    2010 年 51 巻 1 号 p. 32-37
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/16
    ジャーナル フリー
    本研究は分節素間の移行が吃音頻度に与える影響について検討したものである. Shimamori and Ito (2007, 2008) , 島守, 伊藤 (2009) は日本語の吃音においては語頭音節の核母音から後続する分節素への移行に困難さがある可能性を指摘している. しかしながら, これらの研究は語頭音節についてのみ検討したものである. 本研究では核母音からの移行が吃音頻度に影響するのは語頭音節の場合のみなのか, 2音節目においても当てはまるのかを検討した. 対象児は学齢期にある吃音児33名であった. 2音節目の核母音からの移行のある刺激語と移行のない刺激語を用いて, 呼称課題と音読課題を行った. その結果, 両課題において, 2音節目の核母音からの移行のある刺激語と移行のない刺激語の吃音頻度には有意差が認められなかった. この結果から, 2音節目の核母音からの移行は吃音頻度に影響を及ぼさない可能性が示唆された.
  • 後藤 多可志, 宇野 彰, 春原 則子, 金子 真人, 粟屋 徳子, 狐塚 順子, 片野 晶子
    2010 年 51 巻 1 号 p. 38-53
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/16
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 日本語話者の発達性読み書き障害児における視覚情報処理過程を体系的に評価し発達性読み書き障害の背景となる認知障害構造を明らかにすることである. 対象は日本語話者の発達性読み書き障害児20名と定型発達児59名である. 視機能, 視知覚, 視覚認知機能および視覚性記憶機能を測定, 評価した. 本研究の結果から, 視機能の問題は読み書きの正確性に大きな影響を与えないのではないかと思われた. 線分の傾き知覚と視覚性記憶機能は本研究で対象とした発達性読み書き障害児全例で低下していた. 視知覚と関連のあるvisual magnocellular systemとvisual parvocellular systemを検討した結果, 双方の視覚経路で機能低下を認める発達性読み書き障害児が20名中8名いた. 日本語圏の発達性読み書き障害児は海外での報告とは異なり2つの視覚経路の問題を併せもつことが多いのではないかと思われた.
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