チューブ発声法により良好な効果を得た鼻咽腔閉鎖機能不全を伴うmuscle tension dysphonia(MTD)の45歳,女性症例を報告した.本症例では発話時に努力性嗄声を認め,喉頭所見では仮声帯の内転と披裂喉頭蓋部の前後径短縮を認めた.
音声治療でチューブ発声法を行い,声帯筋の緊張緩和を図った.さらに系列語や挨拶文などでの使いこなし(carry over)練習を加えた.
治療後の結果はMTDスコア,MPT,GRBAS尺度などの音声機能評価にて改善を認め,呼気圧と呼気流率の上昇傾向も認めた.鼻咽腔閉鎖機能についてはチューブ発声時に一時的な改善を認めたものの,訓練後に著明な改善は認めなかった.
鼻咽腔閉鎖機能不全を伴う本例では,チューブ発声法により,呼気圧の上昇や鼻咽腔閉鎖機能の一時的な改善により口腔内圧が高まることで,発声時の声帯筋緊張緩和を学習できたと考えられた.
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