1970年4月から1985年3月までの15年間に東京大学医学部付属病院耳鼻咽喉科音声言語外来に来院した鼻咽腔構音症例について, 臨床統計的観察を行い, 次の知見を得た.
1.15年間の言語障害症例2, 609例中, 鼻咽腔構音を有するものは89例 (3.4%) であった.
2.鼻咽腔構音になりやすい音は「い」列音, 「う」列音, 「さ」行音, 「ざ」行音であるが, まれに「え」列音, 「お」列音, 「や」行音にも認められた.
3.鼻咽腔構音は言語発達年齢2歳から出現し, 自然治癒は5歳頃まで多く認められた.
4.構音訓練成績は良好であり, 他の構音障害に比べ, 改善しやすい構音障害といえる.
5.鼻咽腔構音症例の中に, 鼻咽腔閉鎖の問題を有するものが42.7% (38例) , 言語発達遅滞を有するものが30.3% (27例) 認められた.これらの有無により鼻咽腔構音の経過に差は認められなかったが, 出現に際して何らかの関連が示唆された.
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