今回われわれは, 上咽頭癌に対する放射線照射後, その晩期障害によると考えられる緩徐進行性の感音難聴および嚥下障害をきたした1例を経験したので報告する.難聴の自覚は放射線照射後12年で出現し, その後徐々に進行した.聴覚機能検査の結果から, 難聴は初期には, 主として聴神経が障害され, その後徐々に蝸牛も含む障害へと進展したものと考えられた.嚥下障害も同様に, 放射線照射後12年経過してから出現し, 徐々に進行した.萎縮した舌右側のオトガイ舌筋の筋電図では, 放射線障害の際に観察されるミオキミー放電が確認された.
これらに対して, 副腎皮質ホルモンやプロスタグランディンE
1製剤による治療, さらにワーファリンによる抗凝固療法を行ったが, 感音難聴, 嚥下障害ともその進行を食い止めることができなかった.
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