舌・喉頭蓋・喉頭偏位症 (ADEL) 児の泣き声の多くは心理的に病的印象をあたえる.しかしながらADELの手術によりその印象は消失する.6人のADEL乳児について, 手術前後の泣き声を多次元評価法による主観的評価と客観的音声分析結果を比較検討した.
評価項目は「激しい―穏やかな」, 「弱々しい―元気な」, 「濁った―澄んだ」, 「苦しそうな―楽そうな」, 「小さな―大きな」の5語対とした.音声分析にはMac Speech LabIIのNarrow Band Spectrogram (NBS) , 基本周波数 (FF) と音声波形 (SW) を用いた.
多次元評価法では術前の苦しそう, 弱々しい, 激しい, 濁った, 小さなから術後には楽そう, 元気な, 穏やかな, 澄んだ, 大きな方向へ変化していた.音声分析では, 術前のNBSでは調波構造の形成が不十分, FFは不安定でエネルギーが偏位していた.術後には調波構造が明確で安定し, FFは下がり, 音の高さの変動が少なかった.SWでは, 術前は涕泣のはじめで波形が最大, その後は漸減していた.術後には, 最大になるまでに0.2~0.4秒, その後は漸減していた.
両者の比較より調波構造の形成が不十分で基本周波数は不安定かつ音のエネルギーが偏位し, 頻回に泣き声を発している, かつその声の強さの最大が泣きはじめである場合は, その泣き声は心理的に病的な印象を与えていた.またSpectrogramの明瞭性が評価者に楽そうで, 元気で, 澄んでおり隠やかで大きくなったという健康的な音色的印象を与えていた.
抄録全体を表示