医療分野におけるCP (critical path) は, 1980年代に米国の病院で始まり, 日本ではclinical pathとも呼ばれている.
CP導入のためには, チームを編成し, 導入の目的を組織として明確にする必要がある.また, 疾患を選択し, どのような患者層に使用するのか, 対象患者層を明確にし, ケアの内容を充実する必要がある.
CP導入のメリットは, 情報開示におけるインフォームド・コンセント, 患者参加型医療, 医療ケアの標準化, 共通言語としてのコミュニケーション・ツール, 在院日数の短縮, チーム医療推進, 新人スタッフのオリエンテーション, 退院計画プランがある.
デメリットは, 個性の配慮に欠けることやすべての疾患向きではないこと, 教育・研究との兼ね合いが挙げられる.また, CP使用時には, バリアンス (CPからの逸脱した状態) が発生した場合, CPを中止しなければならない.
音声外科的治療において, 当院では平成13年2月から声帯ポリープ (一部のポリープ様声帯と結節) で喉頭鏡下細微手術を受ける患者に対して, CPを使用している.平成14年4月~平成15年3月における声帯ポリープと声帯結節の手術患者51名に対して, CP使用患者は38名であり, バリアンス発生によりCP中止になった症例は, 2名 (発声への不安, 疼痛コントロール, 本人の希望による入院期間の延長) であった.
手術後の沈黙療法期間中には, 症状や訴えを筆談で行うことから, 患者が遠慮がちになることを看護サイドが常に念頭におき, また, 面会者や他の患者・医療従事者に沈黙療法中であることを知らせ, 創部の安静を守りやすくする対応も必要である.当院では, 沈黙療法表示カードの導入を試み, 効果を得た.
また, 第26回東日本音声外科研究会では, 患者の満足度の調査結果が発表されており, 疾患による特殊性, 手術法の難易度, 患者の性格などの項目に関して, 不満の原因が報告されている.その解決策の一つとして, CPの導入が有効と考えられる.バリアンス発見時に, その原因を探究・分析することが, 質の保証へとつながり, 患者満足度の向上とともに医療事故の防止に貢献すると考える.
情報化が進んだ現代の医療は, 高度専門化している.その一方で, 患者・家族の欲求も多様化しており, 全人的な医療が求められている.病院の各職種が専門性の発揮・調整・連携強化した「チーム医療」が重要であり, 看護師は, 患者と最も接点が多く, チーム医療全体の調整者としての重要な役割が求められている.
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