音声言語医学
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59 巻, 4 号
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総説
  • ―難治症例を中心に―
    深堀 光緒子, 千年 俊一, 佐藤 公則, 梅野 博仁
    2018 年 59 巻 4 号 p. 303-310
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/15
    ジャーナル フリー

    声帯内注入術は,声門閉鎖不全に対する頸部外切開を必要としない低侵襲な音声外科的治療法の一つである.当科では,全身麻酔が可能で生命予後に問題がない場合は全身麻酔下に自家脂肪を,外来治療を望む場合やるい痩がある場合は局所麻酔で経皮的にコラーゲンを,悪性疾患ターミナルで余命の少ない症例には経皮的にシリコンを注入材料として用いている.当科における声帯内注入術の治療成績と経験した難治例3症例を提示した.症例1は複数回のコラーゲン注入を行った声帯麻痺,症例2は脂肪注入術後に患側声帯が下方に位置する声帯レベル差が判明した声帯麻痺,症例3は瘢痕除去術と脂肪注入術を行ったが音声が改善せずbFGF注入術を行った声帯瘢痕である.それぞれ,注入材料の吸収による効果減弱,注入による披裂軟骨の内転効果,既存の注入材料による声帯瘢痕への音質改善効果に問題点があった.注入術の原理と注入材料の特性を理解し,声帯内注入術によって音声改善が得られない病態を把握する必要がある.

原著
  • 間藤 翔悟, 宮本 真, 渡邉 格, 林 良幸, 石井 翼, 中川 秀樹, 齋藤 康一郎
    2018 年 59 巻 4 号 p. 311-317
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/15
    ジャーナル フリー

    声帯萎縮に対してVocal Function Exercise(VFE)を用いた音声治療の効果とその効果に影響する因子を検討した.対象は2016年7月〜2017年11月に杏林大学医学部付属病院音声専門外来にて声帯萎縮と診断され,音声治療を完遂した30症例で,年齢は男性73.2±3.58歳,女性76±8.35歳であった.音声治療は声の衛生指導とVFEを8週間実施した.VFEの前後で音声治療の効果を解析し,音声改善の項目数と各個人の背景因子との関連を検討した.音声治療の前後で声門閉鎖,Gスコア,MPT,Shimmer,VHIは有意に改善し,改善項目数と年齢および病悩期間の間にはそれぞれ有意な負の相関関係を認めた.本研究は呼吸器・循環器疾患といったさまざまな既往や過去の喫煙歴を有している症例を含めて検討したが,訓練期間中の全身状態が安定しており,継続的な音声治療が実施可能な身体状態であれば,VFEによって音声改善が期待できる可能性が示唆された.さらに,年齢と病悩期間がVFEの効果に影響する因子と考えられた.

  • 飯村 大智, 石田 修
    2018 年 59 巻 4 号 p. 318-326
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/15
    ジャーナル フリー

    学齢期の吃音児の学校生活や家庭などの場面における,吃音による困難感の実態や周囲の支援の必要性の実態が示されつつある.一方で吃音児が実際に求めている配慮内容は十分に明らかになっていない.本調査では通級指導教室に通う吃音児25名を対象とし,周囲への要望に関する質問紙調査を実施した.友達,担任の先生,家庭のそれぞれに対し「苦手な場面」「求める対応」「その理由」について自由記述をKJ法で分類し構造化した.いずれの相手でも「言葉が出るまで待つ」「普通に接する」が多く抽出されたが,担任の先生には「友達に伝えてもらう」,家庭では「ゆっくり話す・聞く」など相手によって求める対応の仕方が異なることがわかった.苦手な場面としては「発表」「音読」が多く,対応してほしい理由としては「自分で言いたい」「言いやすくなる」「落ち着いて話せる」などが挙げられた.また低学年に比べて中・高学年では周囲への要望が増え,多様化することも示唆された.

  • 飯髙 玄, 冨田 聡, 荻野 智雄, 関 道子, 苅安 誠
    2018 年 59 巻 4 号 p. 327-333
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/15
    ジャーナル フリー

    パーキンソン病(PD)患者の発話特徴の一つである単調子(monopitch)は,発話の明瞭さと自然さを低下させる.本研究では,日本語を母国語とするPD患者のmonopitchが,体系的訓練LSVT®LOUD(LOUD)により改善するかを調べることを目的とした.対象は,2011〜2016年にLOUDを実施したPD患者40例のうち35例(平均年齢66.0歳)と健常者29例(平均年齢68.0歳)とした.音読から選択したイントネーション句の話声域speaking pitch range(SPR),音読と独話でのmonopitchの聴取印象評定(4段階)をmonopitchの指標とした.音読と独話での平均音圧レベル,発話明瞭度(9段階)と発話自然度(5段階)も評価した.訓練前後で比較すると,音読でのSPRは,10.5半音から13.1半音と有意に大きくなり(p<0.01),健常対照群とほぼ同レベルまで改善した.monopitch,発話明瞭度,発話自 然度の聴取印象評定は,いずれも訓練後に有意に改善していた(p<0.05).平均音圧レベルは,音読・独話とも,訓練後に有意に増加した(p<0.01).LOUDは,日本語を母国語とするPD患者の小声だけでなく,monopitchにも有効であることが示された.

  • 川村 直子, 北村 達也, 城本 修
    2018 年 59 巻 4 号 p. 334-341
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/15
    ジャーナル フリー

    音声訓練に用いられるチューブ発声は,口唇周辺部の皮膚振動感覚が重要なフィードバック要素とされている.しかしながら,チューブ発声時の皮膚振動を客観的に計測してフィードバックできる方法はまだない.そこで,本研究では,チューブ発声時の上口唇皮膚部の皮膚振動について,加速度センサを用いた計測を行い,その計測値を利用したバイオフィードバック(BF)システムを開発した.非音声障害者を対象に,上口唇皮膚部の皮膚振動をより大きくすることを意識させたチューブ発声50回を行い,BFあり条件とBFなし条件の2条件で,主観的評価と客観的評価の経時的変化について検討した.その結果,BFあり条件では,主観的評価にも客観的評価にも有意な経時的変化が認められた.客観的指標に基づいたBFシステムを用いた音声訓練の意義や可能性が示唆された.

症例
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