失語症者が真に求める援助とは何かを探る目的で, 失語症者の長期経過の追跡調査を行った.対象は発病後3年以上 (平均8.9年) を経過した失語症者141名 (男118名, 女23名) である.調査結果からつぎのことが示唆された.
(1) 発症年齢により, 原因疾患の構成が異なり, 脳損傷の様態に差が生じる.ひいては, 失語症のタイプにも差がみられた.
(2) 発症年齢が若年の場合, 失語症の改善幅は, 高年齢群に比べて明らかに大きい.
(3) 141名中44名 (31.2%) が職業を得ているが, 55歳未満発症例でも, 就業できなかったた例が半数にのぼる.
(4) 発症後長期間たってもなお, 失語症状に対する障害受容は困難な症例が多い.
(5) 失語症者への援助においては, 失語症者の発症年齢, 脳損傷の状態などから予後を適正に予測し, またおかれている社会的状況に応じた個別プログラムが立案されるべきである.援助の実行には, 医療の枠を越えた幅広い社会の支持が必要である.
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