音声言語医学
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50 巻, 1 号
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原著
  • 豊島 真理子, 三瀬 和代, 西窪 加緒里, 田口 亜紀, 兵頭 政光
    2009 年 50 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    高度の嚥下障害において気管切開は気道確保や気道管理の面からは有用であるが,一方で嚥下時の喉頭挙上を阻害するなどの嚥下機能に対する弊害もある.今回,保存的治療で嚥下機能の改善が得られなかった気管切開を有するワレンベルグ症候群例に対し,カニューレの変更と気管切開孔形成術により嚥下機能の改善を得ることができた.
    症例は70歳男性,脳幹梗塞により嚥下障害を発症.気道管理目的に気管切開術を受け,カフ付きカニューレを装着された.その後,嚥下訓練を継続するにもかかわらず,嚥下機能の改善が得られないため当科紹介された.治療はカニューレをカフなしカニューレに変更し,高位にあった気管切開孔の位置を下方に再形成した.これを契機に嚥下時の喉頭挙上の改善と誤嚥の減少が得られ,その後の嚥下訓練により経口摂取の自立と気管切開孔の閉鎖を行うことができた.嚥下障害の診療の際には,気管切開が嚥下機能を障害あるいはその改善を阻害することがあることを念頭におく必要がある.
  • —音響学的手法を用いた解析—
    西尾 正輝, 田中 康博, 新美 成二
    2009 年 50 巻 1 号 p. 6-13
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    健常成人発話者262例(青年群200例,老年群62例)を対象として,青年期以降の加齢に伴う音声の変化について音響学的に解析し,主に以下の結果を得た.男性では,基本周波数に関する計測ではT0が短くなりF0が上昇し,周期のゆらぎに関する計測ではJitt,RAP,PPQで上昇し,振幅のゆらぎに関する計測では,ShimとAPQを含めて全体的に上昇し,雑音に関する計測ではSPIで上昇し,震えに関する計測ではATRIで上昇する傾向を呈した.女性では,基本周波数に関する計測ではT0が延長しF0が低下し,周期と振幅のゆらぎに関する計測ではほぼ変動が乏しく,雑音に関する計測ではNHRで上昇しVTIで低下し,震えに関する計測ではATRIで上昇する傾向を呈した.今回得られた知見ならびに正常範囲に関するデータは,加齢による生理的変化の範囲内の音声と病的音声との識別上臨床的に意義のあるものと思われる.
  • —性同一性障害者の話声位—
    櫻庭 京子, 今泉 敏, 峯松 信明, 田山 二朗, 堀川 直史
    2009 年 50 巻 1 号 p. 14-20
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    transsexual voice therapyにおいて,訓練ターゲットとする声の高さを検討するために,男性から女性へ性別の移行を希望する性同一性障害者(MtF: male to female transgender/transsexual)119名と生物学的女性32名の母音発声(/a//i/)と朗読音声に対して,話者の性別を判定させる聴取実験および基本集周波数(F0)の分析を行い,比較検討した.
    その結果,70%以上女性に聴こえる発話の声の基本周波数(F0)は母音で平均270Hz,朗読で217Hzとなり,生物学的女性の平均値243Hz(母音),217Hz(朗読)に近いものとなった.しかしながら,生物学的女性と同じF0値の範囲にあっても,女性と判定されない声が7割近くあり,声の高さだけが女性の声に聴こえる要因ではないことが示唆された.
症例
  • —喉頭挙上介助法を使った嚥下訓練の有効性について—
    山本 真由美
    2009 年 50 巻 1 号 p. 21-25
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/17
    ジャーナル フリー
    長期臥床により誤嚥性肺炎を繰り返していた超高齢患者に対して嚥下訓練を実施し,経口摂取が可能になり退院後も嚥下機能が長期間維持された症例を経験した.この症例において,嚥下訓練の早期開始,喉頭挙上介助法を使った嚥下訓練,退院に向けての家族指導の3点が有効だったと考える.嚥下反射が安静時に観察されない状態だったので,嚥下訓練の早期開始はさらなる誤嚥と嚥下機能の悪化を止めたと考える.嚥下訓練においては,喉頭を他動的に押し上げて維持する喉頭挙上介助法が本症例の嚥下反射誘発に有効だった.嚥下反射は中枢性のパターン運動であり,喉頭挙上維持はパターン運動開始のトリガーになるのではないかと考えた.退院にあたっては,家族に対して口腔顔面筋群の筋力向上訓練,食事形態,食事介助の指導を行ったが,これは退院後の嚥下機能維持と誤嚥防止に有効だった.
寄稿
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