音声言語医学
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26 巻, 4 号
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  • ―サ行構音障害をめぐって―
    大島 弘至
    1985 年 26 巻 4 号 p. 261-266
    発行日: 1985/10/25
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    八王子市内小, 中, 高校生7, 274名を対象として, サ行構音障害を中心とした言語異常児童生徒の実態を調査した.
    1.検査方法は被検者と対座して検診するときに, 同時に名前をいわせるという簡易な方法によって行われた.
    2.サ行構音障害の大部分は歯間性構音であり, 小学校低学年では対象者総数の18.7%に達したが, 学年が上るにつれて減少した.しかし, 高校生においても約4%に残存し, これは固定あるいは習慣化していた.
    3.サ行歯間性構音と器質的疾患との間に相関が認められる例もみられたが, これを単純に原因とは結論づけ難い.
    4.サ行歯間性構音者の多くは, 同時にタ, ナ行についても同様の構音を行っていた.
    5.耳鼻科学校健診では, 単に局所の検診のみに止らず, さらに言語表出機能を注意して言語障害の検出を念頭においた健診を行うべきである.また機能的構音障害者の社会適応にも触れて考察した.
  • 伊藤 元信, 辰巳 格, 笹沼 澄子, 福迫 陽子
    1985 年 26 巻 4 号 p. 267-278
    発行日: 1985/10/25
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    失語症患者および若年・老年健常者を対象に, 言語・非言語音刺激のvoice onset time (VOT) の知覚能力を調べた.実験結果の処理は先行研究で提案した処理法に基づき行った.すなわち, 音声識別過程とそれ以前の音響分析・音声分析過程における2種の“ゆらぎ”を考慮し, 識別過程のゆらぎの指標である範ちゅう混同率qeと, 音響・音声分析過程のゆらぎの指標である識別境界μおよび識別の精度σを求めた.その結果, 以下の知見を得た.
    1.若年健常者においては非言語刺激についても範ちゅう判断が可能であった.
    2.言語刺激のμ, σ, qeのいずれに関しても若年健常者群と老年健常者群の成績間に有意差は認められなかった.
    3.対象とした失語症患者の約3分の2が, μ, σあるいはqeに関して異常な値を示した.
    これらの結果に基づき, 失語症患者の音声知覚障害の機構について検討した.
  • ―声帯結節への適用―
    四倉 淑枝, 大石 公直, 澤木 修二, 山口 宏也, 羽生 耀子, 廣瀬 肇
    1985 年 26 巻 4 号 p. 279-288
    発行日: 1985/10/25
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    成人女性の声帯結節20症例に音声治療, すなわち音声指導およびホノラリンゴグラフを用いた音声訓練を行い, 以下の結論を得た.
    1.対象となった20例は, 全例に声の多用または誤用がみられた.そのほか発声法の問題点が発症の一因と考えられたものがあった.
    2.音声治療のうち声の衛生を厳密に守らせることが最も効果的であった.
    3.音声訓練にflow, intensity, pitchが同時表示できるホノラリンゴグラフを利用することにより, 視覚的フィールドバックを介した訓練が可能となり, 訓練方法も簡素化され, 効果も上がった.
    4.3~4ヵ月間の音声治療による声帯結節の消失・縮小例を合わせた改善率は60%であった.
    5.結節以外の声帯の随伴所見に対する局所治療も結節の治療効果に影響を及ぼすと考えられた.
  • ―基本周波数のゆらぎについて―
    佐々木 裕美, 湯本 英二, 丘村 熙
    1985 年 26 巻 4 号 p. 289-295
    発行日: 1985/10/25
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    サウンドスペクトログラフ (Kay, Digital Sonagraph Model 7800) を用いて基本周波数のゆらぎ幅を測定した.持続発声母音/ア/について測定可能な最高次調波成分のゆらぎ幅を計測し, 基本周波数のゆらぎ幅に換算した.解析周波数範囲2kHz, 分析フィルタ幅11.3Hzにして従来より測定が容易になるよう試みた.同一サンプルにて, コンピュータを用いて瞬時周波数最大変化幅△F, 基本周波数瞬時変動値Fを測定し, サウンドスペクトログラムからの測定値と比較した.サウンドスペクトログラムからの測定値はコンピュータによる分析値, 特に△Fに対して有意に高い相関を示した.病的音声の検出率では, サウンドスペクトログラフを用いた方法はコンピュータによる分析法に劣らなかった.以上より, サウンドスペクトログラフを用いた基本周波数のゆらぎの測定法は信頼性のある臨床的に有用な方法と考えられた.
  • 高橋 ヒロ子
    1985 年 26 巻 4 号 p. 296-303
    発行日: 1985/10/25
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    乳児期に口腔運動障害を早期に発見することを目的として, 口腔反射の反応パターンと哺乳時, 啼泣時, 安静時の運動パターンとを分析する評価法を作製した.これを正常乳児35名 (0~1M) と脳性麻痺を中心とした脳障害児16名 (2~9M) に適用し, 両群を比較検討した.結果は次のようになった.
    1.正常児の口腔反射の反応パターンは, 吸畷反射, 嚥下反射については従来の定義と一致する結果を得たが, 探索反射と咬反射については下顎と舌の反応において新たな知見を得た.
    2.脳障害児群だけに出現し, 正常児群には認められない異常パターンがあり, 異常パターンの出現頻度は脳性麻痺児に高く, 評価項目のなかでは口腔反射と哺乳時とで高かった.
    脳障害児16名のうち, 脳性麻痺児13名は3~4年度の評価において明らかな運動障害を口腔機能に認めたことから, この評価法は口腔の運動障害を発見するに有効であるという結論を得た.
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