本研究は角膜反射式のアイカメラを用いて, 聾学校中学部に在籍する重度聴覚障害児で, 言語的な能力の高い生徒を対象とし, 彼らが字幕付きのテレビ番組を視聴しているときの実際の注視点の動きを観察し, 字幕や映像をどのように注視しているのかを実測した.番組視聴時の注視点の分布は, 字幕部分と字幕以外の映像部分に2分しており, 全視聴時間の約40%が字幕の処理に費やされていた.番組内容を解説する場面では, 登場人物の会話場面に比べ, 被験児は画面上の多くの点を注視していることが示された.また, 新しい字幕が提示された場合には, 約0.2秒後にはその字幕の読み取りを始めていること, 字幕を常に意識しそこから情報を読み取るため, 画面全体の映像への注視に制約が生じていること, 字幕が連続して提示される場合には, 新しい字幕の発見が遅れる可能性があることが示唆された.
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