わたしたちは, 基本周波数F
0のゆらぎが病的音声の2種類の声質 (roughとvoice tremor) の同定に与える影響を調べた.わたしたちがすでに報告した結果に基づいて, 病的なroughの音声のF
0のゆらぎは, 単一の正弦波であると仮定し, F
0の時系列発生器に周波数変調 (FM) モデルを用いた.周波数変調されたF
0のゆらぎを用いて, 2つの変調パラメータ (変調周波数f
sと変調指数m
a) を系統的に変化させて母音/a/の合成音を作成した.6名の被験者 (4名の喉頭科医と2名の音声科学研究者) に合成音を聴取させた.100個の音刺激 (“10個の異なったf
s”ד10個の異なったm
a”) をランダマイズして提示した.この同一の音刺激の組について, 1回の実験で一つのカテゴリを聴取するやり方で, すべてのカテゴリについて調べた.被験者は3つのカテゴリ (rough, voice tremor, normal) のうち, 特定の一つのカテゴリに対してYES/NOと回答するように指示された.結果を以下に示す. (1) 3つのカテゴリそれぞれがグループ化された. (2) pathologicalとnormalとの境界は, 最大変動幅△F
0 (=m
a×f
s) で1.4~2.2Hzの間に位置していた. (3) roughとvoice tremorとの境界は, 変動の周波数f
s~10Hzに位置していた.
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