一側反回神経麻痺症例に対するvocal rehabilitationとして声帯内注入療法がある.しかし, 現在われわれが使用しうる最も安全な注入材料は, 自家組織である.
そこで, 近年, 多く用いられている脂肪や筋膜について, 注入部位と注入後の効果の持続という視点から, 音声を考慮した注入療法について検討した.
脂肪は, その粘性が粘膜固有層に近似しているので, 注入部位は, 粘膜固有層でも, 筋層でも音声の改善が得られる.しかし, 膠原線維を主成分とする筋膜は, 粘膜固有層に注入することによって, 発声時の粘膜波動を障害する可能性があることと, 注入後の組織内での残存率が高いことから, 注入部位としては, 筋層が望ましいと考えられた.
また, 注入後の吸収については, 組織工学的手法の応用も考えられる.
抄録全体を表示