音声言語医学
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25 巻, 3 号
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  • 相野 田紀子, 榎戸 秀昭, 鳥居 方策
    1984 年 25 巻 3 号 p. 181-188
    発行日: 1984/07/25
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    他の合併症がなく, 発症後1ヵ月以上を経過した左半球損傷による失語症患者64例 (男49例, 女15例) が, 標準失語症検査 (SLTA) および失語症鑑別診断検査 (DDTA) の自発発話, 復唱, 音読で示した保続反応 (pers.) を検討した.その結果, 以下の知見を得た. (1) 全症例の84%がいずれかのタスクでpers.を示した. (2) 呼称時のpers.の出現率は失語症検査成績および呼称成績と負の相関を示した. (3) 発症後1~3ヵ月の群では, 4ヵ月以上の群よりpers. (呼称時) を示した症例が有意に多かった. (4) 個々の症例の発症後の期間が増大すると, pers. (呼称時) の出現率は低下した. (5) CVA症例の約70%が, 呼称時にpers.を示した. (6) SLTAでは全体的pers.が部分的pers.より有意に多く認められたが, DDTAでは差がなかった. (7) pers.は, 失語症患者が示す反応を質的側面から把握する手がかりの1つとなるのではないかと推測された.
  • ―正常成人男女各30名の成績―
    寺澤 るり子, 垣田 有紀, 平野 実
    1984 年 25 巻 3 号 p. 189-207
    発行日: 1984/07/25
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    楽な発声における平均呼気流率 (U) , 声の基本周波数 (Fo) , 声の強さ (I) についての正常域を得るためには, 異なる性と種々の年齢群の膨大な数の対象について調べなければならない.これは1人の研究者, 1つの施設では容易な仕事ではない.この論文の目的は, (1) 限られた数の対象から得られた成績を報告すること, (2) 統計処理の例を示すこと, (3) われわれのデータを利用したいほかの研究者のために記録にとどめおくこと, にある.
    各パラメータの分布パタンは幹-葉表示, 箱-ひげグラフ, mids, 25%pseudspreadを用いて検討した.はずれ値はSmirnoffの検定を用いて検出した.UとFoについては, 対数変換と平方根変換を試みた.
    Uの平均値と棄却限界は男で156cm3/secと99~246cm3/sec, 女で158cm3/secと96~260cm3/secであった.Foの平均値と棄却限界は男で121Hzと85~164Hz, 女で238Hzと205Hzであった.Iの平均値と棄却限界は男で75dBと60~84dB, 女で69dBと62~77dBであった.
  • 内須川 洸
    1984 年 25 巻 3 号 p. 208
    発行日: 1984/07/25
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
  • 大橋 佳子
    1984 年 25 巻 3 号 p. 209-223
    発行日: 1984/07/25
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    本研究は吃音に対する明確な自覚, 問題意識, 恐れ, 回避行動をいまだ発達させていないと目された29名の吃音児の自由会語における吃音の頻度と一貫性を測定し, 一貫性が有意に高かった語頭音の音声学的特徴を分析し, 吃音の発生機序について検討したものである.結果は次のとおりである. (1) 吃音頻度の個人差は大きかったが, 吃音の97~98%は語頭に生起した. (2) 吃音頻度が20%を超えると, 吃音の一貫性をもつ音素の数は増加し, その指数も高くなった. (3) 全般的に一貫性が有意に高かった音素は/n/, /k/, /t/, /h/, /m/, /b/, /a/, /o/, /i/, であった. (4) このうち子音音素に共通な特徴は〔-軋音性〕と/h/を除く〔-継続性〕である.以上から, 吃音反応は声道の形状, 呼気の使用法, 口腔内圧等の諸条件と関連して特定の音に生じやすいことが判明した.ゆえに, 吃音の一貫性は必ずしも従来考えられてきたような学習要因による現象とはいえないという結論に到達した.
  • 小沢 恵美, 滝 瑞江
    1984 年 25 巻 3 号 p. 224-232
    発行日: 1984/07/25
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    吃音幼児の言語環境の調整に具体的な指針となる資料を得ることを目的として, 吃音幼児9名 (3歳0ヵ月~3歳11ヵ月, 男児) において, 対母親, 対治療士のコミュニケーション場面を比較し, 吃症状の生起との関連を分析した.分析の観点は, (1) 各発話文の言語機能, (2) 発話文の速さ, (3) 対話開始発話, の3点であった.その結果, 以下の知見を得た.
    1) 母親, 治療士, 吃音児の各群の言語機能の分布は異なっていた.母親は, 自ら話すことや子どもの話しを引き出そうとする機能が多く, 治療士は子どもの発話に応じ, 受け入れる機能が多かった.吃症状が生起しやすい機能と, しにくい機能がみられた.
    2) 母親群の発話は最も速く, 子ども群との差が大きかった.発話速度の順位と吃症状の頻度の順位に相関はみられなかった.
    3) 対話開始発話は子ども群に多く, その際, 吃症状が有意に高く生起した.
  • ―男児1症例の分析を通して―
    早坂 菊子, 内須川 洸
    1984 年 25 巻 3 号 p. 233-242
    発行日: 1984/07/25
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    本研究は, 吃音歴1年の吃音男児1例に, Pendulum仮説 (早坂, 内須川, 1983) に従って試みた治療の分析を通して, 自己主張的行動 (いわゆる攻撃行動) の生起, 展開, 沈静の道筋を, 吃音の経減と併せて考察し, 感情型吃音に対する治療方法の有効性について検討することを目的とする.
    治療場面では本症例の非流暢性は, 治療開始後5ヵ月に自己主張的行動が沈静化した後, すみやかに消失した.しかしながら, 家庭場面においては, さまざまな阻害要因―母親の就業, 父親の転勤, 就学など一によってPendulumが十分振り切れなかった.
    超晩期感情型吃音幼児, J・Iの吃音を強化している最大の要因は, 1年間の治療を行った結果, 環境的圧力であることが確認された.今後, 本児の耐性の強度を増大させることが最も重要な課題となるであろう.
  • ―吃音検査法の検討を通して―
    伊藤 伸二, 梅原 正之, 松本 進, 村上 英雄
    1984 年 25 巻 3 号 p. 243-251
    発行日: 1984/07/25
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    日本音声言語医学会吃音検査法検討小委員会から提起された吃音検査法を実際に試用した.記録に時間がかかり, 全体像がっかみにくいという問題点があるが, それ以上にかなり細部にわたる吃症状の分類や重症度に信頼性が少ないことを明らかにした.さらに, 従来の検査法についても検討を加えた.
    吃音検査は, その後の処遇に結びついてこそ意味がある.われわれは従来から吃音児 (者) の指導に関しては吃症状の消失および改善に, 吃音問題解決の重点を置くのではなく, 日常生活のなかでの吃音からくる影響, また吃音に対する意識を把握し, それをもとにした生活指導こそ重要であると主張してきた.
    われわれの主張する吃音問題解決に結びつく検査法を確立する目的で, 成人吃音者の吃音からくる影響, 意識度, また人間関係について調査をした.
  • 原田 政美
    1984 年 25 巻 3 号 p. 261-264
    発行日: 1984/07/25
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
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