失語症患者の話しことばの評価基準を検討するために, 健常成人100名 (男女各50名) に対しSLTAまんが説明の検査を行い, 出現した語, 総語数, 説明には不要な語の割合, 不要語の内容, 6段階評価について分析した.また健常者と比較するために失語症患者30名 (流暢型, 非流暢型各15名) にも同様の検査と分析を行い, 得られた知見からSLTAまんが説明検査の問題点を指摘した.
(1) 基本語に含まれていない「風」の出現率が基本語と同率であったので, 基本語を基準に評価するのであれば, 「風」も基本語に入れた方が良いのではないか.また関連語の位置付けが曖昧であると思われた.
(2) 基本語の数だけでまんが説明を評価するのは妥当ではない.内容の伝達という質的側面を評価する方法を考えた方が良い.
(3) 健常群の説明文にもよどみと思われる語が6.8%の割で含まれていた.よどみとは具体的に何をさすのかを明確にし, 出現許容範囲を決めた方が良い.
(4) 健常群に6段階評価を行ったところ, 段階6と評価された者は56%にすぎず, 言語に障害をもつ患者の話しことばを評価するには現行の評価基準は厳しすぎると考えられた.
(5) 出現した語の分析, 総語数, 構文など分析方法を検討することによって失語症患者のコミュニケーション能力を測れるのみならず失語症タイプの弁別も可能と考えられた.
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