音声言語医学
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47 巻, 4 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • ―1症例の報告と専門医による音声評価―
    石毛 美代子, 小林 武夫
    2006 年 47 巻 4 号 p. 365-371
    発行日: 2006/10/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    内転型痙攣性発声障害 (adductor spasmodic dysphonia: ADSD) 様症状を呈した心因性発声障害 (spasmodic-like psychogenic dysphonia: SPD) の1症例を報告した.本症例にはADSDに特徴的とされる圧迫性もしくは努力性嗄声, 声の途切れなどが認められ, 発声時, 軟性ファイバースコープにより喉頭の絞扼像が観察された.音声障害に経験の深い耳鼻咽喉科医5名が録音音声を聴取評価した結果, ADSDであることが強く疑われるとの点で全員一致した.心因性の呼吸障害と同時に発症したことなど, 主に問診上の所見から心因性発声障害を疑い, 心因性失声症とほぼ同様の音声治療を行い著効を得た.上記の音声治療による症状の消失ないし可逆性から心因性発声障害であるとの診断を確定した.SPDは誤ってADSDと診断される可能性がかなり高く, 診断に際しては詳細な問診, 包括的な音声検査および喉頭の観察, さらには診断を目的とした音声治療を行うべきであると考えられた.
  • 田口 亜紀, 兵頭 政光, 三瀬 和代, 城本 修
    2006 年 47 巻 4 号 p. 372-378
    発行日: 2006/10/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    近年, 音声障害の自覚的評価方法として, アメリカで提唱されたVoice Handicap Index (VHI) が注目されている.われわれは, VHIの日本語版を作成して音声障害患者に対して使用し, その有用性について検討を行った.対象とした音声障害症例は163例で男性79例, 女性84例であった.VHIスコアの平均は男性34.5, 女性41.6で女性のほうが高い傾向を示した.男性では40歳代以下のスコアが50歳代, 60歳代のスコアより低い傾向を示したが, 女性では年齢による差があまりなかった.疾患別では機能性発声障害, 反回神経麻痺, 声帯萎縮・声帯溝症の症例でスコアが高い傾向を示した.大部分の疾患では, 機能的側面および身体的側面のスコアが感情的側面のスコアより高かった.音声障害の治療後には, 多くの例でスコアが減少し, VHIは患者自身の音声障害に対する自覚度の把握, 適切な治療法の選択, および治療効果の評価を行ううえで有用と考えられた.
  • 福田 章一郎, 塚村 恵子, 福島 邦博
    2006 年 47 巻 4 号 p. 379-383
    発行日: 2006/10/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    岡山県では平成13年7月より岡山県新生児聴覚検査事業を開始した.現在では全出生児の約75%がスクリーニング可能となっている.平成17年3月時点までに48例の両側難聴児と34例の一側性難聴児が発見された.48例中, 軽・中等度難聴児は43.8%と聴力程度にかかわらず発見が可能であり, ローリスク児も60.4%と多かった.しかし, 全出生児のうち残された25%のスクリーニング未受診児への対応の必要性は認識されてはいるがその対応は容易ではない.後天性および進行性難聴の存在により, 長期的な観察の必要性を再認識させられた.同時に, スクリーニングpassであってもその後, 聴こえあるいはことばの遅れを心配して来園するケースも少なからず存在するため, スクリーニング後は健診など従来難聴発見に用意されていたシステムをさらに充実させることが療育的な援助の遅れを少なくするためには重要であると考えられる.
  • ―近赤外分光法脳オキシメータによる検討―
    佐藤 裕, 森 浩一, 小泉 敏三, 皆川 泰代, 田中 章浩, 小澤 恵美, 若葉 陽子
    2006 年 47 巻 4 号 p. 384-389
    発行日: 2006/10/20
    公開日: 2010/06/22
    ジャーナル フリー
    幼児・学童吃音者の音声言語に対する左右聴覚野機能の分化異常について, 多チャネル近赤外分光法を用いて測定した.音刺激には音素の配列もしくは韻律句の異なる対立を用い, 左右それぞれの聴覚野付近にて得られた総ヘモグロビン量の反応ピーク値を基に側化指数を算出し左右差を検討した.その結果, 幼児・学童吃音者群ともに, 最小対語・韻律句対比セッション間で側化指数に有意差がなく, 音素・韻律に対する側性化が見られないことが確認された.個人内の検定では, 音素の処理が左優位と判定できる吃音児は存在せず, 同年齢対照群と有意に異なった.この結果は成人吃音者と同様であり, 吃音と聴覚野の機能異常との関連が示唆され, この異常が3-5歳の吃音児ですでに見られることがわかった.
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