交叉性失語によって失文法を呈した2症例に対して, 自発話の特徴, 助詞や動詞の課題成績, 統語理解力の点から, 2例の文法障害の特徴を比較検討したところ, 次のような知見を得た.
症例1は, 自発話において動詞の語彙の省略や助詞の省略, および動詞の活用語尾や助動詞の省略といった述部の不完全さが認められたが, 語順の混乱や助詞の誤用はみられなかった.また助詞や動詞の活用, 動詞の喚語に関する課題の成績は良好で, 統語理解力の低下もなかった.
症例2は, 自発話において動詞の語彙の省略や錯語, 助詞の誤用があり, 語順の混乱もみられたが, 助動詞を使用し, まれに長い連鎖の述部の表出がみられた.また助詞や動詞の活用に関する課題の成績は不良で, 動詞の喚語困難がみられ, 統語理解力の低下も認められた.
以上の結果より, 2例の文法障害の発現機序について考察を加える.
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