乳児の音声上に観測される感性情報について, 成人による聴取評価を行い乳児期の感性表出の様相を発達的に検討した.日本人男児1名の6ヵ月齢, 9ヵ月齢, 12ヵ月齢, 17ヵ月齢時点の録音音声から評価の対象とする音声を抽出し, 成人92名を対象におのおのの音声について, 12項目からなる感性情報 (「うれしい」「悲しい」「甘える」など) について5段階評定による聴取・評価実験を行った.
得られた結果は次の通りである. (1) 因子分析から「ごきげん」「話す」などのpositiveな感性情報と「拒否する」「恐がる」などのnagativeな感性情報に関連した2因子が抽出された. (2) 分散分析から感性情報項目の評点は一部を例外として月齢とともに増加する傾向がみられた. (3) 聴取者がどの程度強く特定の感性情報を認知するかは, 感性の種類によって月齢による変化が大きいものと小さいものとに分かれた.感性情報はすべて月齢とともに一様に発達するとは限らず, 「甘える」は6, 9ヵ月齢に顕著であり, 泣きを伴わない音声での「怒る」「泣く」「拒否する」は17ヵ月齢で顕著であった.
これらのことから, 乳児期の音声上に観測される感性情報は言語運用能力が出現するより早期から現れ, 月齢を追って多様になることが明らかになった.
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