音声言語医学
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55 巻, 2 号
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原著
  • ─通常成人群を対象に─
    浜田 智哉, 黒川 容輔
    2014 年 55 巻 2 号 p. 123-129
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/28
    ジャーナル フリー
    日本語話者での動物意味カテゴリー語想起課題について質的評価法の作成および妥当性と特徴の検討を試みた.研究1では語想起課題中の“まとまり”を抽出し可視化することを目的とした.方法としては想起された語同士の共起比率を算出し,クラスター分析を行った.研究2では語想起課題中の“まとまり”と意味的類似性判断課題の結果との整合性の検証を目的とした.方法としては意味的類似性判断課題の結果からクラスター分析図を作成し,研究1の結果と比較した.研究3ではわれわれの分析方法の特徴を検討することを目的とした.方法としては研究1,2で得られた結果に主成分分析を行い,抽出される属性を比較した.研究1,2,3の結果,語想起課題中にはペット,野生肉食獣,野生大型草食獣,干支,里山動物,サル科動物,海洋ほ乳類などのまとまりが抽出された.また,われわれの分析方法では意味的類似性判断課題に比べ,多くの属性を抽出できた.
  • 中津 真美, 廣田 栄子
    2014 年 55 巻 2 号 p. 130-136
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/28
    ジャーナル フリー
    CODAにおける親への通訳役割は,情報伝達に止まらず親と社会との仲介役を担いCODAの心理的発達に影響を与える.CODAは,青年期の葛藤を経て成人期には親から心理的に自立するが,自立時期に長期を要する場合が見られ寄与する要因について数量化II類を用いて解析した.CODA 23名を対象に,目的変数を自立時期とし,22歳以前の自立例を通常自立群(18例),以降を後期自立群(5例)とした.説明変数は,著者らの研究1(面接調査)と研究2(心理尺度)結果から11項目を設定した.
    CODAの心理的自立時期の長期化と関連の強い要因は,青年期に戸惑いと不満感情が低値であること(p<.01),児童期に親を擁護する気持を有すること(p<.05),同胞との通訳役割分担がないこと(p<.05)であった.相関比.77,判別的中率100%であった.親への通訳役割を背景としたCODAの親を擁護する認識は,年齢不相応な責任感を生起させ,青年期の戸惑いと不満感情が抑制されて心理的自立が長期化すると考えられた.
  • 川村 直子, 城本 修, 望月 隆一, 岩城 忍, 梅田 陽子
    2014 年 55 巻 2 号 p. 137-145
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/28
    ジャーナル フリー
    【目的】Vocal Function Exercise(VFE)の各プログラムの訓練効果と,訓練効果に影響を及ぼす要因について検討した.【方法】音声障害患者18例をA,B 2群に分け発声訓練を開始した.A群:発声持続練習→音階上昇・下降練習.B群:音階上昇・下降練習→発声持続練習.そのうち訓練を遂行できた11例を検討対象とした.訓練前後の発声機能,音響分析,自覚的評価を従属変数とし,分散分析を行った.【結果と考察】発声持続練習を単独で集中的に2週間行った結果,最長発声持続時間(MPT)に直接的な効果が示唆された.訓練プログラムの内容(順序)あるいは病態にかかわらず,VFEを行えば2週後ないし4週後には,発声機能や自覚的評価において改善を示す可能性が示唆された.声域の拡大については,単独プログラムでの訓練効果は時間がかかる可能性が考えられ,原法どおり各プログラムを同時に実施することが有用であると考える.
  • 中尾 雄太, 大西 英雄, 遠藤 優有美, 城本 修, 村中 博幸
    2014 年 55 巻 2 号 p. 146-154
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/28
    ジャーナル フリー
    われわれは,音刺激への注意喚起における脳賦活領域を同定するために,fMRI(functional magnetic resonance imaging)を用いて,「聴く」と「聞く」における脳賦活領域を定量的に比較検討した.さらに,自作したソフトウェアを用いてMR画像の賦活領域の体積を算出し,各領域における賦活程度を比較した.聴覚障害を認めない健常成人12名(男性5名,女性7名)に対して,男性話者と女性話者の単音節聴取課題,雑音下聴取課題を行った.その結果,音刺激へ注意を喚起すると,前頭前野,縁上野,帯状回が賦活することが示唆された.また,同性話者より異性話者の声に注意を喚起したほうの脳活動が活発になると示唆された.
  • 香田 千絵子, 梅野 博仁, 濱川 幸世, 千年 俊一, 上田 祥久, 中島 格
    2014 年 55 巻 2 号 p. 155-161
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/28
    ジャーナル フリー
    当科で過去20年間に機能性発声障害と診断し,訓練適応と判断した症例における音声治療効果について検討した.対象患者は49例で,年齢,病悩期間,性差,訓練期間,背景について調査し,訓練後の発声改善効果を検討した.
    その結果,機能性発声障害は若年層,女性に多く見られ,タイプ別では過緊張型,低緊張型が多かった.音声治療を終了した39例中著効22例(56.4%),改善11例(28.2%)であり,計33例(84.6%)に音声の改善を認めた.長期の訓練期間を要したのは過緊張型であり,短期の訓練期間ですんだのは低緊張型であった.
  • 明石 法子, 三盃 亜美, 宇野 彰, 河原 純一郎, Max Coltheart
    2014 年 55 巻 2 号 p. 162-166
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/28
    ジャーナル フリー
    書取の認知過程を明らかにするため,健常成人48名に漢字単語の書取課題を実施し,単語属性効果および誤反応特徴について検討した.正答率および潜時に頻度効果と心像性効果が見られ,健常成人が語音から綴りを想起する過程には単語の音,意味,綴りに関する語彙情報を用いて綴りを想起する語彙経路を活用していることが示唆された.また,書きの一貫性も正答率および潜時に影響を及ぼしていたことから,音から文字へ直接変換する非語彙経路の活用も示唆された.書き始めから書き終わりまでの所要時間には画数が強い影響を示したほか,頻度の影響もわずかに見られた.誤反応分析の結果,主な誤りは,1字のみ正答,同音異字への誤り,および無回答であった.同音異字への誤りは,書きの一貫性が低い語に対する非語彙経路の活性を反映していると考えられる.
  • 北村 達也
    2014 年 55 巻 2 号 p. 167-172
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/28
    ジャーナル フリー
    本研究では,スキャニングレーザドップラ振動計を用いて歌唱時の顔面の皮膚振動を複数回計測し,計測間の差異を評価した.レーザドップラ振動計とは,対象物にレーザ光を当て,振動によって反射光に生じるドップラ効果を利用して対象物の振動速度や変位を計測するシステムである.また,スキャニング型の振動計は,事前に指定した複数の計測点を自動的に走査して振動を計測することができる.本研究には声楽経験者3名が参加した.実験は坐位にて行い,前額をあご台のフレームに当てることによって頭部を固定した.そして,各自の出しやすい高さにて母音/a/を連続歌唱させ,歌唱区間における皮膚振動速度を計測した.3回の計測結果を比較した結果,平均二乗誤差は4.0 dB以下であった.また,3回の計測値の中央値から6 dB外れている計測点は全計測点の2.4%であり,これらの多くはレーザ光が垂直に当たりにくい部分であった.
症例
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