日本泌尿器科学会雑誌
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101 巻, 5 号
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原著
  • 井上 均, 木内 利郎, 木下 竜弥, 小林 正雄, 植田 知博, 高田 剛, 原 恒男, 山口 誓司, 梶本 昌昭, 北村 憲也
    2010 年 101 巻 5 号 p. 671-675
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
    (目的) 2003年よりPSA検診による前立腺がん検診をおこなってきた.2003年から2007年の結果について検討した.
    (対象と方法) 50歳以上の男性のうち希望者に対しPSA単独によるがん検診を行った.PSA値が4.00ng/mlを越えるものを要精密検査者とした.
    (結果) 2003年度の池田市の50歳以上の男性は18,161名であった.PSA検診を受けたのは2003年度から2007年度まで3,738,3,905,4,129,4,410,4,515名であった.PSA高値であったのは7.9%~9.8%(中央値9.1%)であった.2次検診を受診したのは161,81,70,75,60名で生検を受けたのは130(80.7%),57(70.4%),45(64.3%),38(50.7%),42(70.0%)名であった.前立腺癌は91,33,29,20,25名に認められた.これは1次検診受診者の2.43%,0.85%,0.70%,0.45%,0.55%であった.5年間での検出率は0.96%であった.臨床病期Bは137例(69.2%),病期Cは52例(26.3%),病期Dは7例(3.5%)で不明は2例であった.87例(43.9%)で前立腺全摘術が,61例(30.8%)で内分泌療法が,37例(18.7%)で放射線治療が,7例(3.5%)で無治療経過観察が選択された.6例(3.0%)が他院での加療を希望され不明であった.
    (結論) 2003年から2007年までに198名が前立腺癌と診断された.臨床病期Bは137例(69.2%)であり,早期治療に結びついた.この早期治療が死亡率の低下につながることが期待される.
  • 谷風 三郎, 長 雄一, 多田 実, 合谷 信行, 浅沼 宏, 山崎 雄一郎, 島田 憲次, 杉多 良文, 後藤 隆文, 山口 孝則
    2010 年 101 巻 5 号 p. 676-682
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
    (目的) 非動物由来安定化ヒアルロン酸ナトリウム/デキストラノマー・ゲル(NASHATM/Dxゲル)を尿管口周囲に注入する内視鏡的注入療法の有効性と安全性を評価するため,日本人膀胱尿管逆流症(VUR)患者を対象とした多施設共同オープン試験を行った.試験成績について報告する.
    (対象と方法) 逆流グレードII~IVの1歳以上のVUR患者にNASHA/Dxゲルを内視鏡的に注入し,注入3,12カ月後で排尿時膀胱尿道造影(VCUG)検査により効果を判定した.注入3カ月後で逆流(グレードII以上)が残留している症例に対して再注入を行い,さらに再注入3,12カ月後でVCUG検査により効果判定を行った.いずれもVURのグレード0かグレードIを改善とした.
    (結果) 初回の注入は116尿管/73例に施行した.治験実施計画書に適合した対象集団97尿管/71例において,最終注入12カ月後での改善率は,尿管単位で69.1%,症例単位で62.0%であった.尿管単位,症例単位のいずれの場合も,逆流グレードの低下は初回注入3カ月後,最終注入12カ月後の両時点で,共に統計学的に有意であった.また,治療前の逆流グレードが高いほど改善率は低下した.NASHA/Dxゲルとの因果関係を否定し得ない軽度の有害事象が2例および臨床検査値の中等度の異常が1例に見られた.
    (結論) 本試験において,NASHA/Dxゲルの内視鏡的注入療法は日本人VUR患者に対して有効で,十分な忍容性が示された.本治療法は,日本においてもVUR治療の第一選択となり得ると思われる.
症例報告
  • 佐藤 泰之, 飯塚 淳平, 今井 健二, 沢田 勇吾, 小松 智徳, 家後 理枝, 近藤 恒徳, 石田 英樹, 田邉 一成
    2010 年 101 巻 5 号 p. 683-688
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
    Rhabdoid Tumor of the Kidneyは小児に発生する悪性度の高い稀な腫瘍である.更に,成人発症例は極めて稀で調べえた限り海外での4例のみであり,日本国内での発症で生体腎移植後の報告は無い.今回我々は若干の文献的考察を交えてこれを報告する.
    症例は30歳男性でIgA腎症を原疾患とし28歳時に血液透析導入した.29歳時母をドナーとする血液型適合の生体腎移植を施行した.移植後83日目に無症候性肉眼的血尿が出現した.血尿が持続するため移植後95日目腹部単純CTを施行したところ,移植時には認められていなかった4cm大の腫瘤を右自己腎に認めた.移植後153日目には腫瘤は6cmに増大していた.移植後171日目の逆行性腎盂造影では腎盂腫瘍は否定的であった.術前診断は腎細胞癌(cT3aN0M0 stage III)と判断し,移植後193日目に根治的右腎摘除術を施行した.腫瘍は腹壁,横隔膜,肝へ直接浸潤していたため完全摘除できなかった.病理組織診断上Rhabdoid tumor of the kidney(RTK)と診断された為,移植後200日目,二期的に肝後区域切除術,右副腎摘出術およびリンパ節郭清が施行された.しかし,根治的右腎摘除術後23日目(移植後216日目)に呼吸困難出現し,胸部CTにて両肺に多数の結節性陰影と右肺に胸水,血胸を認めた.その後全身状態徐々に悪化し,根治的右腎摘除術後54日目(移植後246日目)に死亡した.
  • 住野 泰弘, 佐藤 文憲, 三股 浩光
    2010 年 101 巻 5 号 p. 689-693
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
    51歳 男性.肉眼的血尿にて近医受診.CTにて下大静脈から右心房まで進展する右腎腫瘍を指摘され当科紹介受診.右腎癌(stage III)の術前診断のもと体外循環補助下に根治的右腎摘出手術および下大静脈,右心房内腫瘍塞栓摘出手術を施行した.右腎周囲を剥離した後,右腎動脈を結紮,切断後に体外循環下に下大静脈,右心房を切開し右腎,腫瘍塞栓を一塊にして摘出した.肝静脈からの出血が著しく,下行大動脈を60分ブロックバルーンカテーテルにて閉鎖し出血をコントロールした.下大静脈,右心房を人工血管にて再建後に体外循環より離脱した.手術時間9時間.体外循環時間119分.病理組織は淡明細胞癌,G1,pT3cであった.術後はICU管理とし,術後3日目に抜管したが,術後4日目に下肢の不完全対麻痺を認めた.MRIでは第9-10胸椎から尾側にT2強調画像にて高信号を認め脊髄虚血,梗塞性の変化と診断した.術中のブロックバルーンカテーテルによる血流遮断が虚血の原因と考えられた.泌尿器科医にとって下大静脈内腫瘍塞栓を伴う進行性腎癌の手術は時々経験することであるが,体外循環が必要な手術を行う際には,術前に心臓血管外科や麻酔科と協議を重ねた上で脊髄虚血など起こりうる合併症を認識し,その合併症発症の予防対策を十分に考慮しておくことが必要であったと考えられた.
  • 坪内 和女, 坪内 洋明, 横山 裕, 入江 慎一郎, 吉田 一博, 田中 正利
    2010 年 101 巻 5 号 p. 694-697
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
    我々は,尿路上皮悪性腫瘍の治療を契機に発見された,日本住血吸虫が原因と考えられる後腹膜線維症の1例を経験したので報告する.
    症例は83歳男性で,腎後性腎不全の精査中に後腹膜線維症を指摘された.経皮的腎瘻造設術およびステロイドパルス療法で軽快したが,経過観察中に膀胱癌および上部尿路上皮癌が発見された.尿路上皮癌に対する外科的治療中に後腹膜線維組織の生検を行ったところ,後腹膜の繊維性組織内に散在する楕円形の石灰化した日本住血吸虫の虫卵を認めたため,本症例では日本住血吸虫が後腹膜線維症の原因であると判断した.
    日本住血吸虫が原因と考えられる後腹膜線維症は,非常に稀な病態であると考えられた.後腹膜組織に日本住血吸虫の虫卵が到達した機序としては,(1)血行性に虫卵が後腹膜腔へ到達,(2)血行性に成虫が後腹膜組織に到達し産卵,(3)消化管壁内の虫卵が何らかの原因で後腹膜へと逸脱,などが挙げられるが,我々は(3)の可能性が高いと考えている.住血吸虫症と悪性腫瘍の関係は以前から知られているが,日本住血吸虫症が原因と考えられる尿路上皮癌の報告例はなく,本症例の尿路上皮癌組織内に虫卵を認めなかったため,両者に因果関係がある可能性は低いと思われる.我々の知見では,日本住血吸虫が原因と考えられる後腹膜線維症の報告はなく,非常に稀な症例を経験した.
  • 玉田 聡, 大町 哲史, 伊藤 哲二, 川嶋 秀紀, 仲谷 達也
    2010 年 101 巻 5 号 p. 698-702
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/03/16
    ジャーナル フリー
    患者は64歳,男性.主訴は肉眼的血尿.DIPで右水腎症,MRIで著明に腫大した前立腺を認めた.内視鏡検査では前立腺部尿道に乳頭状腫瘍も認めた.PSAなどの腫瘍マーカーは正常範囲内であった.前立腺針生検および尿道腫瘍の生検を施行したところUC,G3との結果をえたため前立腺原発の尿路上皮癌(T4N1M0)と診断した.MVAC2コース施行後,腫瘍は縮小し,膀胱前立腺全摘術を施行した.病理結果はUC,G3,pT4N0であり肉腫様変化を伴っていた.その半年後に局所再発を認めたが,放射線治療併用化学療法(パクリタキセル,ジェムシタビン)により腫瘍は消失した.術後3年経過し再発を認めていない.
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