日本泌尿器科学会雑誌
Online ISSN : 1884-7110
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85 巻, 4 号
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  • 郡 健二郎
    1994 年85 巻4 号 p. 552-562
    発行日: 1994/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
  • 浜尾 巧, 金山 博臣, 菅 政治, 滝川 浩, 香川 征
    1994 年85 巻4 号 p. 563-570
    発行日: 1994/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    腎細胞癌におけるインターロイキン1β(IL1β), インターロイキン6 (IL-6), 腫瘍壊死因子-α(TNF-α) の血清値および遺伝子発現について検討した. 血清値について解析した32例中, IL-1βは1例 (3.1%), TNF-αは6例 (18.8%), IL-6は17例 (53.1%) で高値を示した. さらに, IL-6は stage I+II 14例中2例 (14.3%), stage III+IV 18例中15例 (88.9%) と進行癌で陽性率が高く (p<0.001), また slow type (S) 13例中5例 (38.5%), intermediate type (I) 9例中3例 (33.3%), rapid type (R) 10例中9例 (90.0%) と rapid type の血清IL-6が高値を示した (S vs R, I vs R: p<0.01, S+I vs R: p<0.005).
    一方, 遺伝子発現では, IL-1β, TNF-αは腎正常部, 腫瘍部ともに発現はほとんど認めなかったが, IL-6は15例中 rapid type の1例と slow type の1例計2例 (13.3%) の腫瘍部に非常に強い発現を認め, 血清IL-6値も高値を示した. また, 培養細胞では3種類のうち2種類において非常に強いIL-6の発現を認めた. しかし, IL-6 receptor の発現は腎正常部, 腫瘍部, 培養細胞ともに弱く, 臨床病期, growth type との相関も認めなかった.
    以上から, 腎細胞癌のとくに rapid type にはIL-6が深く関与していることが示唆され, 血清中IL-6の測定は腫瘍の生物学的特性を知るうえで臨床上有用であることが示唆された.
  • 中川 修一, 杉本 浩造, 三神 一哉, 渡辺 泱, 薗田 精昭, 葛山 由布子, 阿部 達生, 藤井 浩
    1994 年85 巻4 号 p. 571-578
    発行日: 1994/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    自家末梢血幹細胞移植術 (PBSCT) を組み入れた難治性精巣腫瘍に対する超大量化学療法について検討した. 本療法はまず etoposide 大量療法後に末梢血より幹細胞を採取し, 分離・凍結・保存した. その後, BEP療法を行い, 部分寛解 (PR) するが完全寛解 (CR) しなかった症例に対して, PBSCT併用超大量化学療法を行うものである. 難治性精巣腫瘍4例に対して, etoposide 大量療法 (VP-16;500mg/m2×4日間) を採取前化学療法として施行し, nadir よりrG-CSFを250μg連日投与し, 骨髄回復期に血液成分分離装置を用いて末梢血より幹細胞を採取した. 採取した幹細胞は Percoll 二層比重遠心法にて分離・凍結・保存し, メチルセルロース法にて定量した. 採取できた顆粒球系幹細胞 (CFU-GM) 数は1回の apheresis 当たり22.3×105個/kg体重であった. すべての apheresis で安全な移植に必要とされる2.0×105個/kg体重以上のCFU-GMが採取可能であり, 同時に抗腫瘍効果も認められた. 4例に対して, CDDP (20mg/m2×5日間), VP-16 (100mg/m2×5日間), BLM (15mg×3日間) を投与するBEP療法を行ったところ, 3例はCRとなったが, 1例がPRにとどまった. そこでPRとなった1例に対して, PBSCT併用超大量化学療法を行った. CBDCA (200mg/m2×4日間), VP-16 (250mg/m2×4日間), CPM (50mg/kg×2日間) を投与し, 化学療法終了72時間後にPBSCTを施行した. その結果CRとなり, その後10ヵ月間無腫瘍生存中である. 本療法は難治性精巣腫瘍に対する新しい治療法として有望である.
  • 五十嵐 辰男, 結城 崇夫, 戸辺 豊総, 三上 和男, 村上 信乃, 松嵜 理, 島崎 淳
    1994 年85 巻4 号 p. 579-583
    発行日: 1994/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1992年4月より, 1993年5月までに旭中央病院泌尿器科で13例の骨盤限局病期前立腺癌症例に対し, 腹腔鏡下骨盤リンパ節郭清術を行った. 臨床的分類では stage A2, 3例, B1, 1例, C, 9例であった. 郭清範囲は外傷骨リンパ節の内側部, 閉鎖リンパ節, および内腸骨リンパ節の一部であり, これを恥骨後面より臍靱帯近位端まで郭清した. 手術時間は最短70分, 最長133分, 中央値102分であった. 摘出リンパ節の総数は最少3個, 最多17個, 中央値7個であった. うち1例に転移が認められた. 2例に対し止血のための開腹術を施行したが, 1例はトロッカー挿入中の腹壁からの出血であり, 1例は術後10時間続いた oozing のためであった. 他に重篤な合併症はなかった. 結論として, 腹腔鏡下手術は骨盤現局病期前立腺癌の staging として有用と考えた.
  • 滝内 秀和, 鹿子木 基二, 藤本 宣正, 花房 徹, 京 昌弘, 市川 靖二, 永野 俊介, 福西 考信, 藪元 秀典, 井原 英有, 島 ...
    1994 年85 巻4 号 p. 584-588
    発行日: 1994/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    泌尿器癌細胞株におけるインテグリンβ鎖の発現についてPCRを用いて検討した. 今回検討対象となった12種の細胞株全てにβ1鎖が発現されていた. 腎癌ではβ1, β3, β5, β8を発現しているものが多かったが, β4発現率はその他の腫瘍と比較して低値であった. β6の発現は腎癌及び睾丸腫瘍において認められた. β2鎖はこれまで白血球でのみ特異的に発現しているとされてきたが, 今回の検討で睾丸腫瘍にもβ2が発現されていることが示された.
  • proliferating cell nuclear antigen (PCNA) の発現との比較
    山崎 清仁, 熊本 悦明, 塚本 泰司
    1994 年85 巻4 号 p. 589-598
    発行日: 1994/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    膀胱癌細胞におけるSCC-Agの発現についてPCNAの発現と比較して免疫組織学的に検討した.
    10%以上のSCC-Ag染色陽性細胞を有する組織を陽性とした場合, 細胞質内SCC-Agは移行上皮癌においては grade 1で全例, grade 2では87%の症例は陰性であった. しかし扁平上皮化生を伴わない grade 3では57.6%, 扁平上皮化生を伴う grade 3では80%と高率に陽性であった. また扁平上皮癌においては高~中分化型の症例では全例陽性であったのに対し, 低分化型の症例では25%の陽性率にすぎなかった.
    核内SCC-Agの陽性率は移行上皮癌においては grade 1では63.6%, grade 2では46.3%, 扁平上皮化生を伴わない grade 3では54.9%であった. しかし扁平上皮化生を伴う grade 3および扁平上皮癌では全例が陰性であった.
    PCNAについてもSCC-Agと同様に陽性を定義づけると, 移行上皮癌におけるPCNAの陽性率はgrade 1, grade 2, 扁平上皮化生を伴わない grade 3, 扁平上皮化生を伴う grade 3の順に高くなっていた. また, 扁平上皮癌ではさらに高い陽性率であった.
    移行上皮癌症例において, これら三者と組織学的 grade の相関性を検討したところ, 細胞質内SCC-Agが組織学的 grade と最も強く関連していた.
  • 経腰的と経腹的アプローチの比較
    影山 幸雄, 福井 巌, 後藤 修一, 北原 聡史, 釜井 隆男, 鈴木 常貴, 大島 博幸
    1994 年85 巻4 号 p. 599-603
    発行日: 1994/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1967年より1991年までの25年間に当教室で根治的腎摘除術を行った腎細胞癌症例は166例である. このうち腫瘍の最大径が約6cm以下でpT1~pT3N0M0の症例は49例あり, 経腰的根治的腎摘術を行ったものが27例 (経腰群), 経腹膜的根治的腎摘術を行ったものが22例 (経腹群) であった. この2群間で retrospective に手術成績の比較検討を行った. 両群間には年齢, 性別, 腫瘍の大きさ, stage, grade, 組織亜型の各項目に有意差をみとめなかったが, 経腰群でpVla症例の割合が有意に高かった. 経腰群では経腹群と比較して手術時間は短く, 出血量も少ないほか, 術後の回復 (摂食および歩行開始) も早かった. 両群とも大きな合併症は見られなかった. 生存率および非再発生存率は経腰群と経腹群の間に有意差をみとめなかった. 実測3年生存率は経腰群で96%, 経腹群で89%であった. 転移部位は経腰群では肺が2例, 骨が1例であり, 経腹群では肺が1例, 部位不明が1例であった. 経腰的根治的腎摘除術は侵襲が少ないだけでなく, 予後も経腹膜的腎摘除術と遜色なく, 早期の腎細胞癌に対する到達法の一つとして有用と思われた.
  • 辻 明
    1994 年85 巻4 号 p. 604-610
    発行日: 1994/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    インターロイキン2 (以下IL2) と酸化作用を有するマイトジェンであるヘミンの細胞障害能及び抗腫瘍効果を, マウス脾細胞及びマウス腎細胞癌株 (Renca) を使用して検討した. ヘミンは, in vivo 及び in vitro の両方でIL-2の細胞増殖能を著明に増強した. ヘミンはIL-2の存在下で細胞障害能を認めたが, これには至適濃度 (10μM) が存在し, これ以上の濃度では活性が低下した. Renca 接種マウスにヘミンとIL-2を腹腔内投与し, その抗腫瘍効果を生存日数で比較検討した. ヘミンとIL2の併用投与群は, 対照群に比し有意に延命効果を認め, この効果は腫瘍接種腎の摘出及び還元剤である Nacetylcysteine の併用で増強された. 今回の検討により, マウス腎細胞癌においてヘミンがIL-2の介在する抗腫瘍効果を増強することが明らかになったが, ヘミンは安全に患者に投与できるマイトジェンであり, 治療が困難な進行性腎細胞癌に対して新しい免疫療法剤となる可能性が示唆された.
  • 曽根 淳史, 茂田 泰明, 小山 幸次郎, 田中 啓幹
    1994 年85 巻4 号 p. 611-615
    発行日: 1994/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1987年7月から1993年2月までの5年8ヵ月間に69症例の腰部脊柱管狭窄症による排尿障害を自覚的・他覚的 (Urodynamic study) に評価・検討した.
    1. 泌尿器科症状は51例 (73.9%) に認められ, きわめて高率であった. その内容は半数以上が排尿因難・尿閉といった排出障害であった. また, 整形外科症状を持たずに泌尿器科症状のみから発見された症例が4例 (5.8%) あった.
    2. 初診時の膀胱内圧測定の結果は49.3%が normoactive detrusor, 40.6%が underactive (acontractile) detrusor, 10.1%が overactive detrusor であった.
    3. 手術前後の排尿状態を18例で評価した. 術前 normoactive detrusor であった群は術前後とも排尿状態は良好であったが, underactive (acontractile) detrusor であった群は約50%が回復したが, 残りの50%は不変で清潔間歓導尿法 (clean intermittent catheterization: CIC) を必要とした.
    4. 術前後の膀胱内圧測定では術前 normoactive detrusor から術後 overactive detrusor になったものが3例, 術前 underactive (acontractile) detrusor から術後 overactive detrusor になったものが3例あり, 手術による減圧により膀胱はより過敏な状態になることが示唆された.
  • 青 輝昭, 横山 英二, 内田 豊昭, 向井 伸哉, 宇都宮 拓治, 足立 功一, 藤野 淡人, 小柴 健
    1994 年85 巻4 号 p. 616-625
    発行日: 1994/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1971年8月から1992年3月までに北里大学病院泌尿器科で膀胱癌の診断のもとに膀胱全摘術および尿路変更術を施行した95症例に対して, その臨床像と生存率を検討し, 併せて生存者に対してのQOLに関するアンケート調査を行った. 尿路変更術の内訳は, 尿管皮膚瘻造設術27名 (I群), 回腸・結腸導管造設術45名 (II群), 代用膀胱造設術23名 (III群) であった. 手術時の年齢は29~76歳 (平均60.6歳), 男性68名女性27名であった. 膀胱癌の組織型は移行上皮癌82名, 扁平上皮癌8名, 腺癌4名, 移行上皮癌と扁平上皮癌と腺癌との混在型1名であった・生存者はI群14名, II群27名, III群16名計57名 (60.0%) で, 実測5年生存率はI群45.2%, II群54.1%, III群56.8%であった. 生存者に対するQOLについてのアンケート調査の結果, 全例で尿路変更術後の基本的な日常生活は改善し順応していたが, 趣味, 旅行, 仕事など一歩進んだQOLは術前より低下していた. III群では, 入浴と仕事に関しては他群に比べても術前に比べても良好な結果であり, 全体的満足度も高かった. 尿路変更術のQOLを少しでも低下させないためには, 術前の十分なインフォームドコンセントと患者に対する精神的支援が重要であり, さらに術式の工夫が必要であると思われた.
  • Cisplatin, Vincristine, Methotrexate, Peplomycin, Etoposide 5 者併用
    上田 朋宏, 山内 民男, 河合 恒雄, 大野 芳正, 川上 理, 米瀬 淳二
    1994 年85 巻4 号 p. 626-631
    発行日: 1994/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    進行精巣腫瘍15例に対してCOMPE (CDDP, VCR, MTX, PEP, Etoposide 5 者併用) 化学療法を1~7コース平均3.2コース施行したのでその成績と副作用について報告する. low dose COMPE化学療法は14例に施行され, CDDPを3日目に5mg/m2, one push 静注の後, 25mg/m2を24時間持続点滴, 4日目は30mg/m2, 24時間持続点滴とする. VCRは1, 2日目に0.6mg/m2点滴静注, MTXは1日目に10mg/m2を点滴静注PEPは1, 2, 3日目に10mg/m2を3分割して筋注する. Etoposide は3, 4, 5日目に100mg/m2点滴静注する. regular dose COMPE化学療法は1例に施行され, 第3, 4日目のCDDPが50mg/m2/日まで増量したレジメである. COMPEは, 3, 4週毎に施行された. 化学療法は十分な輸液のものに施行され, 利尿剤は使用しなかった.
    組織および病期はセミノーマ5例でIIAが4例, IIBが1例, 非セミノーマ10例でIIAが2例, IIBが1例, IIIB1が1例, IIIB2が4例, IIICが2例であった.
    15例中12例は生存しており, 13ヵ月から86ヵ月, 平均39.5ヵ月癌なし生存中である. 化学療法単独で6例はCRとなり, PRは8例であった. PR8例中6例は残存腫瘤摘出ないし放射線療法にてCRとなった. しかし, 残りの2例 (IIIB2, IIIC) はCRにできず, 19, 25ヵ月で各々死亡した. NCの1例 (IIIC) は癌の進行のため5ヵ月で死亡した. 化学療法による副作用には食欲不振, 嘔気, 嘔吐, 脱毛, 白血球減少, 血小板減少がみられたが, 克服できない副作用ではなかった.
    COMPE化学療法は進行性精巣腫瘍に効果的で有用な化学療法といえたが, 超進行例にはCDDPの dose intensity が必要と思われた.
  • fast Fourier transformation 法による power spectrum analysis
    水尾 敏之, 鈴木 理仁, 大矢 和宏, 蔵 尚樹, 寺尾 俊哉
    1994 年85 巻4 号 p. 632-641
    発行日: 1994/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    男子23例 (正常群8例, 神経因性膀胱のDSD (+) 群7例, DSD (-) 群8例) を対象に, 膀胱空虚時の神経筋放電の3要素の定量分析と, 排尿の全過程での外尿道括約筋筋電図のFFT分析を行った. 膀胱空虚時の神経筋放電の3要素 (位相数, 振幅, 持続時間) は3群間で有意の差を認めなかった. また膀胱内圧曲線のパターンによる差も認められなかった. したがって膀胱空虚時の神経筋放電の3要素のみの分析では神経因性膀胱の障害部位の診断には不十分と考えられた. 正常群のFFT分析の結果, Rest とFDVで150~220Hzで-20dB以上の power を示し, MPFは100Hz前後であった. MDVでは高周波成分が著明に増加し, MPFも75%の症例で150Hz以上に増加した. Void では神経筋放電の消失に従い power も消失した. DSD (+) 群ではMDVの干渉波が Void まで継続し power の増加が持続した. DSD (-) 群のFFT分析曲線は power の少ない例が多く, 一部の症例ではMDVにも干渉波とならず power も増加しなかった. FFT分析の結果から正常例の干渉波は高周波域の波が相対的に増加するのに対し, 神経障害群の干渉波は低周波域の波により構成されていることが判明した. MPFも神経障害群では干渉波になっても150Hz以上に増加しなかった. FFT分析法は干渉波がどの様な周波数の波から構成され, 頻度がどの様であるかを明確にできる. したがって排尿サイクルでの外尿道括約筋の変化を他覚的に評価し得うるので神経因性膀胱などの尿道括約筋機能の診断と治療に有用と考えられた.
  • 古畑 哲彦, 赤座 英之, 福井 巌, 出口 修宏, 赤坂 雄一郎, 鳶巣 賢一, 小松原 秀一, 坂下 茂夫, 山内 民男, 河合 恒雄
    1994 年85 巻4 号 p. 642-648
    発行日: 1994/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    東日本精巣腫瘍研究グループの進行精巣腫瘍例中, 導入化学療法にてCRの得られなかった例のその後の治療と予後につき検討した. また, 初回治療でCRを得た症例中再発の8例につき臨床的検討を行った.
    1. 導入化学療法にてCRの得られなかった症例について: セミノーマ stage IIは7例あり, うち2例は残存腫瘤切除にて, 4例は放射線療法にてNEDが得られた. また, 非セミノーマ stage IIでは10例中9例が, stage IIIでも17例中10例が残存腫瘤切除にてNEDが得られた. 一方, 残存腫瘤の切除が出来なかった例の予後は悪かった.
    残存腫瘤の組織診断は, 壊死, 繊維組織が13例, viable cell ありが4例, 奇形腫が6例, 不明が2例だった. 原発巣に奇形腫を含む15例中5例の転移巣に奇形腫の残存があった. 一方, 原発巣に奇形腫のない非セミノーマ5例には奇形腫の残存はなかった. セミノーマでは1例の転移巣に奇形腫の残存がみられた.
    2. 初回治療でCR例の再発について: 初回治療によるCR例からの再発はすべての stage に起こり得るが, stage IIIB, IIICに多かった. 導入化学療法のみでCRになった例より, PR後残存腫瘤切除にてCRとなった例の方が再発率が高かった. 導入化学療法後残存腫瘤組織に, viable cell のあった2例中1例に再発があったが, なかった12例では2例の再発のみであった. また, viable cell のない例で, 術後化学療法を追加しなかった6例中2例に再発があったが, 追加した6例には再発がなかった. われわれの再発例の治療成績は良く, 75%にNEDが得られた.
    以上により, 導入化学療法がPRでも, 残存腫瘤の完全切除ができれば予後は良い. 原発巣に奇形腫があれば, 転移巣にも奇形腫要素が存在する可能性が強く, 積極的に切除すべきである. 病期の進んでいる例, 残存腫瘤に viable cell のある例に再発が多く, 再発予防の必要性が示唆された.
  • 関 晴夫, 出村 孝義, 永森 聡, 野々村 克也, 小柳 知彦
    1994 年85 巻4 号 p. 649-654
    発行日: 1994/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    腎細胞癌36例から採取した組織の凍結切片を用いてモノクローナル抗体Ki-67による免疫組織化学染色 (avidin-biotin-peroxidase complex method) を行った. Ki-67抗体により増殖期 (G1, S, G2, M期) にある癌細胞の核が染色された. 腎細胞癌組織におけるKi-67染色陽性細胞の割合を増殖分画 (Growth Fraction; GF (%)) として算定し, 以下の結論を得た.
    1) GFと異型度との関係では, G1 (n=21) のGFが1.20±0.70 (mean±SD) であったのに対し, G2 (n=13) では6.58±4.57とG1よりも有意に高いGFを示した (p<0.01). G3の2例は9.2, 27.8と高いGFを示した.
    2) GFと進展度との関係では, pT2 (n=23) のGFは1.84±1.30であり, pT3 (n=13) では8.12±7.64とpT2のGFより有意に高い値を示した (p<0.01).
    3) リンパ節転移とGFとの関係ではリンパ節転移を有する5例のGFは13.84±8.48であり, リンパ節転移を認めなかった27例のGFは2.80±2.74であり, リンパ節転移を有する症例が有意に高いGFを示した(p<0.01).
    以上より, Ki-67を用いた免疫組織化学染色を行い求めた増殖分画は腎細胞癌の異型度, 進展度, およびリンパ節転移の有無とよく相関する事が判明した. 腎細胞癌における増殖分画はその増殖能を示すと共に悪性度の評価に有用であると思われる.
  • 冨田 京一, 赤座 英之, 野本 康二, 横倉 輝男, 松島 常, 本間 之夫, 阿曽 佳郎
    1994 年85 巻4 号 p. 655-663
    発行日: 1994/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    本実験では表在性膀胱腫瘍に対する乳酸菌製剤-Lactobacillus casei (L. casei) の抑制効果に関する基礎的検討を加えた. 実験系としては N-butyl-N (4-hydroxybutyl) nitrosamine (BBN) によるラット膀胱化学発癌モデルを使用した. 実験は二つからなり, 短期実験としてはBBNを1週間投与し, 膀胱発癌の早期に見られる Concanavalin A (Con A) による膀胱上皮細胞の凝集能の上昇を指標として, L. casei の6週間投与時の効果を検討した. その結果, 膀胱上皮細胞の Con Aによる凝集はL. casei 非投与群に比べ, L. casei 投与群では有意に抑制された (p<0.001). 長期実験としては, BBNを7週間投与し実験開始22週後に発生する膀胱腫瘍に対する効果についてL. casei の投与期間を変えて検討した. 長期実験では各群の膀胱重量および膀胱あたりの腫瘍体積は, L. casei 非投与群に比べ, L. casei 投与群は有意に少なかった (p<0.05). 膀胱重量, 膀胱あたりの腫瘍体積のL. casei による抑制効果は投与期間の長いものにより明らかであった. 腫瘍の進展度は各群間で有意差を認めなかったが, L. casei 非投与群のみに進展度が高い腫瘍 (T1b, T2) が発生し, 悪性度はL. casei 非投与群に比べBBN投与期間中にL. casei を投与した群で有意に低かった (p<0.05). 以上よりL. casei の経口投与による膀胱発癌抑制効果が示され, 臨床的有用性が示唆された.
  • 須山 一穂, 熊野 和雄, 呉 幹純, 酒井 糾
    1994 年85 巻4 号 p. 664-667
    発行日: 1994/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    33歳男, シスプラチン腎症のため血液透析を施行中であったが頭部外傷にて緊急入院. CTにて硬膜下血腫を認めたためCAPD療法に変更した. CAPDは2,000mlを1日4~6回交換し水分に関しては, 1日約2Lの負のバランスとなり著しい限外濾過能の低下を認めた. カテーテル機能には問題なく腹膜平衡試験では, 腹膜の著しい透過性亢進を認めた. またリンパ吸収率は, 3.7ml/minと通常のCAPD患者の2倍以上の高値を示した. 以上より本症例の限外濾過能の喪失は, 腹膜透過性の亢進に加えてリンパ吸収の増加が関与していると思われた. そこでサイクラーを用いた間欠的な腹膜透析 (16L/8時間) に切り替えたところ水分, 小分子量物質ともに良好に維持が可能となった.
    このような症例は, サイクラーを用いた間欠的な腹膜透析の良い適応となり得ると思われた.
  • 三宅 修, 辻畑 正雄, 伊東 博, 若月 晶, 板谷 宏彬
    1994 年85 巻4 号 p. 668-671
    発行日: 1994/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    膀胱原発悪性リンパ腫の2例を報告する. 1例目は1989年にTURで治療した膀胱移行上皮癌 (Grade2, Stage pTa) の経過観察中に高度の血尿をきたした64歳の女性である. 今回の腫瘍は膀胱鏡で広基性, 非乳頭状で右側壁に出血を伴い存在していた. 経尿道的 biopsy で non-Hodgkin リンパ腫, diffuse large, B cell type と診断され, CAPによる化学療法を4クール施行したところ, 著効をきたし現在にいたるまで disease free である. 2例目は51歳女性で, 肉眼的血尿を主訴に来院した. 膀胱鏡で左側壁に粘膜面は正常の充実性球状の腫瘤を認めたため, TURで腫瘤を可能なだけ切除した. 病理組織検査で non-Hodgkin リンパ腫 diffuse medium, B cell type と診断され, 他臓器に腫瘍の存在を認めなかったので, 術後VEPAによる化学療法を3クール施行した. 患者は術後約9ヵ月経過した現在も再発の兆候はない.
    膀胱原発悪性リンパ腫は欧米で約70例, 本邦で自験例を含め23例の報告しかない. 悪性リンパ腫の膀胱限局症例では放射線, 化学療法を用いて膀胱機能を温存させて完治可能と考える.
  • 溝口 裕昭, 奈須 伸吉, 福永 良和, 野村 芳雄, 緒方 二郎
    1994 年85 巻4 号 p. 672-675
    発行日: 1994/04/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は10ヵ月, 男児. 主訴, 陰嚢内容腫脹. 1990年5月, 39℃の発熱と共に陰嚢内容の腫脹を認め, 急性精巣上体炎の診断で当科に紹介された. IVPで左腎盂尿管移行部狭窄による中等度の水腎症, 膀胱部の球状の陰影欠損を認める. CT, 超音波検査で膀胱後部に嚢胞状腫瘤を認める. 用手圧迫による膀胱尿道造影では膀胱三角部に陰影欠損を認めるほかは尿道弁, 尿道狭窄, VUR等は認めない. 右側からのみの精嚢造影で膀胱正中部に嚢状の造影剤の貯留を認めた. 尿道, 膀胱への造影剤の流出はみられなかったが, 両側の精嚢が充影されたことから, 単一の嚢胞に両側の精嚢が開口した Urogenital sinus cyst と診断した. TUR-vermontanum による開窓術を行った. 嚢胞状腫瘤は縮小したものの消失しなかった. 現在, 排尿状態, 尿所見に異常なく, 精巣上体炎の再発もみられないことから, 外来にて経過観察中である.
    本症例は本邦8例目で, しかも乳児で発見されたきわめて希な症例である.
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