(目的) 近年,本邦ではさまざまなタイプの根治的前立腺全摘除術が施行されるようになった.手術成績,合併症,死亡率,周術期管理に関する全国調査を行った.
(対象と方法) 日本泌尿器内視鏡学会の協力を得て全国の泌尿器科医に調査を依頼した.本調査に参加した156施設から,集計ソフトを用いて集積された2007年のデータを解析した.
(結果) 従来の開腹根治的前立腺全摘除術は143病院で3,138例,ミニマム創内視鏡手術は15病院で361例,経腹膜到達法による腹腔鏡手術は11病院で143例,腹膜外到達法による腹腔鏡手術は13病院で337例に施行されていた.腹腔鏡手術と比較して,開腹手術とミニマム創手術では手術時間は短かったが,出血量は多かった.全体の周術期死亡率は0.05%,合併症発生率は23.4%であった.どの術式でも直腸損傷はまれであった.表層手術部位感染症の頻度は開腹手術が最も高かった.周術期管理方法は術式ごとに有意に異なっていた.腹腔鏡手術では尿道留置カテーテルは早期に抜去されていたが,急性尿閉の頻度は特に腹膜外到達法で高かった.
(結論) 本邦において,前立腺癌に対する手術として開腹前立腺全摘除術が最もよく行われていた.1施設あたりの手術件数は多くなかったが(26件),死亡率は低く,合併症の発生率も許容範囲であった.多施設の手術成績,合併症などの比較により,周術期管理の標準化が進むと考えられた.
抄録全体を表示