日本泌尿器科学会雑誌
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102 巻, 6 号
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原著
  • 岡村 菊夫, 津島 知靖, 川喜田 睦司, 野尻 佳克, 内藤 誠二, 松田 公志, 服部 良平, 長谷川 友紀, 海法 康裕, 荒井 陽一
    2011 年 102 巻 6 号 p. 713-720
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/20
    ジャーナル フリー
    (目的) 近年,本邦ではさまざまなタイプの根治的前立腺全摘除術が施行されるようになった.手術成績,合併症,死亡率,周術期管理に関する全国調査を行った.
    (対象と方法) 日本泌尿器内視鏡学会の協力を得て全国の泌尿器科医に調査を依頼した.本調査に参加した156施設から,集計ソフトを用いて集積された2007年のデータを解析した.
    (結果) 従来の開腹根治的前立腺全摘除術は143病院で3,138例,ミニマム創内視鏡手術は15病院で361例,経腹膜到達法による腹腔鏡手術は11病院で143例,腹膜外到達法による腹腔鏡手術は13病院で337例に施行されていた.腹腔鏡手術と比較して,開腹手術とミニマム創手術では手術時間は短かったが,出血量は多かった.全体の周術期死亡率は0.05%,合併症発生率は23.4%であった.どの術式でも直腸損傷はまれであった.表層手術部位感染症の頻度は開腹手術が最も高かった.周術期管理方法は術式ごとに有意に異なっていた.腹腔鏡手術では尿道留置カテーテルは早期に抜去されていたが,急性尿閉の頻度は特に腹膜外到達法で高かった.
    (結論) 本邦において,前立腺癌に対する手術として開腹前立腺全摘除術が最もよく行われていた.1施設あたりの手術件数は多くなかったが(26件),死亡率は低く,合併症の発生率も許容範囲であった.多施設の手術成績,合併症などの比較により,周術期管理の標準化が進むと考えられた.
症例報告
  • 北島 和樹, 小池 淳樹, 小泉 宏隆, 宇田川 剛, 工藤 浩也, 中澤 龍斗, 佐々木 秀朗, 堤 久, 宮野 佐哲, 佐藤 雄一, 力 ...
    2011 年 102 巻 6 号 p. 721-725
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/20
    ジャーナル フリー
    46歳の女性.1カ月前に発熱を主訴に近医を受診し加療により症状改善した.1週間前から再度発熱が認められたため近医で加療を試みたが症状が改善せず,さらに黄疸を発症したため当院を紹介された.左尿管結石に伴う左急性腎盂腎炎,両側腎膿瘍および敗血症と診断された.緊急左尿管ステント留置術を施行し,同時に抗菌剤を投与開始した.治療開始後も発熱が改善しないため入院16日目に施行した腹部造影CTで,両側腎実質に多発する低吸収領域とともに著明な左腎腫大が認められたことにより,保存的治療では両側腎膿瘍の治癒は困難であると考えられた.入院18日目に左腎摘除術が施行した.摘出腎の病理学的検索により一部の組織球細胞内にMichaelis-Gutmann小体を認め,腎マラコプラキアと診断に至った.術翌日から発熱は消失し,術後11日目に退院した.退院後経過は良好である.
  • 田岡 利宜也, 水野 桂, 松岡 崇志, 北 悠希, 仲西 昌太郎, 浅井 聖史, 宗田 武, 井上 幸治, 寺井 章人
    2011 年 102 巻 6 号 p. 726-730
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/20
    ジャーナル フリー
    症例は,64歳女性.膀胱瘤と直腸瘤の診断にて,2007年11月にTVM(tension-free vaginal mesh)手術を行い,前後腟壁を修復した.2008年10月,左臀部の出血にて皮膚科受診となった.潰瘍病変を認め開始された外用療法は奏功せず,便臭分泌を契機に直腸皮膚瘻が発見された.直腸メッシュ迷入に起因する感染がメッシュ左脚部に波及し,直腸皮膚瘻を形成したものと考えられた.2009年3月,経皮経肛門的にメッシュ左脚部を摘除し直腸壁を修復するとともに,人工肛門を造設した.しかし,術後4カ月目の大腸鏡にて,修復部より口側の直腸左壁に新たなメッシュ迷入を認めた.同年12月,メッシュ迷入部の拡大を認めたため,経肛門的に直腸壁を修復した.その後の再発を認めず,2010年2月に人工肛門を閉鎖した.2011年2月現在,メッシュに関わる新たな合併症を認めていない.稀と思われるが,本症例のような経過がある事も念頭に置きながらTVM術後の経過を観察すべきと考えられた.
  • 福井 真二, 渡辺 仁人, 吉野 薫
    2011 年 102 巻 6 号 p. 731-734
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/20
    ジャーナル フリー
    症例は11歳,男児.肉眼的血尿および左腰背部痛が出現し,超音波検査およびCT検査で左水腎水尿管症を認めたため当科紹介となった.MRIで左尿管は中部まで拡張し,拡張尿管下端にポリープを疑う陰影欠損を認めた.中部尿管閉塞に対し後腹膜アプローチで手術を施行した.術中所見では,尿管閉塞部には,約5cmにわたり全周性に有茎性の尿管ポリープが群生して存在した.腫瘍の存在する尿管を完全に切除したのち尿管端々吻合術を施行した.病理学的検査はfibroepithelial polypであった.術後,側腹部痛や肉眼的血尿の再発なく,現在外来で経過観察中である.
  • 千葉 修治, 沼倉 一幸, 里吉 清文, 齋藤 満, 堀川 洋平, 高山 孝一朗, 奈良 健平, 神田 壮平, 三浦 喜子, 米田 真也, ...
    2011 年 102 巻 6 号 p. 735-739
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/12/20
    ジャーナル フリー
    症例は69歳,男性.家族歴から内分泌腺腫症(MEN)1型の精査をすすめられ,当院内分泌内科を受診した.CTおよび超音波検査で,後腹膜腫瘍(43mm×34mm)と副甲状腺腫瘍を指摘された.その時点で,後腹膜腫瘍の手術を希望しなかったが,3年後のフォローアップCT検査で,腫瘍の増大(55mm×50mm)を認めた.諸検査から内分泌非活性と考えられたが,悪性を否定できず,腫瘍摘除術を行った.病理組織学的診断は後腹膜カルチノイドであった.現在,術後21カ月経過したが,再発,転移を認めない.多発性内分泌腺腫症1型に合併した後腹膜カルチノイドの1例を経験したので報告した.MEN1型に合併した後腹膜カルチノイドの報告は非常に稀である.
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