日本泌尿器科学会雑誌
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87 巻, 7 号
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  • 経尿道的超音波断層法による画像解析
    鈴木 明彦, 加藤 裕二, 鈴木 和雄, 藤田 公生
    1996 年 87 巻 7 号 p. 947-955
    発行日: 1996/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) 近年, 前立腺肥大症に対して様々なエネルギー源による低侵襲治療法が開発されているが, いずれも従来のTUR-Pに比べて, 術後早期の排尿状態の改善と, 治療効果の継続性という点においては, 満足すべきものではない. 経尿道的YAGレーザー照射により前立腺組織を十分に蒸散させることにより, 手術中に尿道に確実に cavity を形成することを目的とした.
    (対象と方法) 1993年8月より1995年4月までに, 尿閉38例を含む91例の前立腺肥大に対して蒸散型の laser fiber である Ultraline™ を用いて laser prostatectomy を行った. 仙骨麻酔あるいは腰椎麻酔下に60W, contact-dragging 照射で, 膀胱頸部より精丘付近までの前立腺部尿道全周にレーザー照射を行った. 本法を安全に行いかつ手術の結果を評価するために経尿道的超音波断層法を用いて, 手術開始時に前立腺形態の観察結果より照射計画をたて, また終了時には蒸散による Cavity の形成を確認した.
    (結果) 平均照射熱量は132,035Jで, 生検・膀胱屡造設・レーザー照射を含めた平均手術時間は84.1分であった. 術後は5.8日でカテーテルフリーに出来た. 重篤な副作用はないが, 手術時間が長いためもあり, 精巣上体炎, 尿道狭窄の合併症がみられた. 術前・術後の各パラメーターは, I-PSSが15.3から5.6, Qmaxが9.3から15.8ml/s, Qaveが4.6から9.2ml/s, 残尿が76.0から15.9mlと改善し, 前立腺体積は39.3から26.6mlと31.5%の縮小をみた. 術後1年を経過しても良好な排尿状態を維持できた.
    (結論) われわれの laser prostatectomy は, TUR-Pよりも低侵襲でありまたその手術成績はTUR-Pにほぼ同等と思われた.
  • 吉川 裕康, 池内 隆夫, 甲斐 祥生
    1996 年 87 巻 7 号 p. 956-963
    発行日: 1996/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) 進行前立腺癌において抗 androgen 療法は有効な治療法であるが, 抗 androgen 療法抵抗性症例を治療前に確認することは治療法の決定や治療効果を予測する上で特に重要である. そこで, 著者らは前立腺組織における andorogen recepor (AR) の局在と陽性細胞率を求め, ARの分布によって抗 androgen 療法の効果の予測が可能か否かを検討した.
    (対象と方法) 未治療前立腺癌86例と再燃性前立腺癌7例 (全例低分化型腺癌), および前立腺肥大症26例 (コントロール) の針生検によるフォルマリン固定パラフィン包埋標本を用いて, 免疫組織化学染色を施行した.
    (結果) 抗AR抗体染色は細胞核が染色されるが, 染色陽性細胞と染色陰性細胞が混在していた. ARの陽性細胞率は前立腺肥大症 (86.4±6.3%) において高く, 腺癌組織 (57.8±14.5%) で低値を示した (P=0.0001). さらに, 腺癌組織では分化度が低くなるに従って低値を示し (P=0.0001), 再燃性前立腺癌組織ではさらに低下を認めた (P=0.0004). また, 治療効果の高い群でAR陽性細胞率は高く (P=0.0001) 陽性細胞率の低い群で生存率は低下を認めた (p=0.03).
    (結論) 以上より, 免疫組織化学的なARの測定は抗 androgen 療法の予後を予測する上で重要であると思われた. また, 前立腺癌組織には抗 androgen 療法施行前より androgen 非依存性細胞が存在し, 分化度が低くなるに従って非依存性細胞の比率が増加することが示唆された. このことは抗 androgen 療法において低分化の腫瘍の方が再燃しやすいことの一つの理由になるのではないかと思われる.
  • 藤井 昭男, 郷司 和男, 森末 浩一, 岡本 雅之, 乃美 昌司
    1996 年 87 巻 7 号 p. 964-972
    発行日: 1996/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 単一施設で治療した新鮮前立腺癌の臨床結果を解析すること.
    (対象と方法) 対象症例は142例で, その年齢中央値は72歳であった. 血尿を主訴しした12例中5例は尿路上皮癌の同時発生例であった.
    (結果) 52例 (37%) に前立腺全摘除術を行い, その stage 別5年生存率はBが85%, Cが86%, D1が87%であった. Stage D2の初回治療としてホルモン単独療法を33例に, ホルモン・制癌剤併用療法を37例に行った. その中でホルモン・cyclophosphamide 併用療法 (18例) が有効率 (83%), 有効持続期間 (中央値29ヵ月) および生存期間 (中央値49ヵ月) において優れていた. 治療前PSA値は stage と相関し, 30ng/mlを cut off 値とすると, 転移がある場合の sensitivity は64%, specifisity は95%であった. 142例の3, 5, 10年生存率は67%, 51%, 26%で, stage 別および分化度別5年生存率はA37%, B90%, C40%, D42%, 高分化型73%, 中分化型45%, 低分化型42%で, stage Bは他の stage より, 高分化型は低分化型よりも明らかに予後良好であった. (p<0.01)
    (結論) 病理学的病期 stage CとD1の前立腺全摘症例に術後補助療法としてホルモン・放射線併用療法を行うことで, その5年生存率は86%, 87%となった. Stage D2症例に対する最も効果的な治療はホルモン・cyclophosphamide 併用療法であり, その有効率と有効持続期間中央値は83%と29ヵ月であった.
  • 外来通院治療の有用性
    山下 俊郎, 梅田 俊一, 松下 高暁
    1996 年 87 巻 7 号 p. 973-976
    発行日: 1996/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) ピエゾ型砕石器による体外衝撃波尿管結石破砕術の有用性, 特に外来治療の有用性を明らかにする.
    (対象と方法) 東芝社製ピエゾ型砕石装置 Echolith (ESL-500A) を用いて, 尿管結石患者110例を治療した. 無麻酔で行い, 補助的な治療は一切しなかった.
    (結果) 110例中98例 (89.1%) で外来通院にて治療を完遂できた. 12例 (10.9%) では, 疼痛発作等のために入院し, 確定診断後入院中に治療を行ったが, ESWL治療を目的としての入院や, 治療後の副作用のための入院例はなかった. 結石の長径が10mm以下の83例では, 平均1.24回の治療を行い, 平均総ショット数は3,227発であった. 10mmを越える27例では, 平均2.67回の治療を行い, 平均総ショット数は, 11,715発であった. 治療終了後1ヵ月の時点で評価したところ, 110例中107例 (97.3%) で完全排石した. 完全排石した例と砂状の残石を認めた例を併せて有効とすると, 110例中109例 (99.1%) で有効であった. 重大な副作用はなかった. 大きな結石や, 水腎水尿菅の経過が長い症例でも問題なく治療できた.
    (結論) ピエゾ型砕石装置による尿管結石破砕術は副作用が少なく, 外来通院治療が可能な有用な治療法と考えられた.
  • 入澤 千晴, 嘉村 康邦, 横田 崇, 山口 脩, 近藤 義政, 濱崎 隆志, 山田 陽司, 黒須 清一, 千葉 隆一
    1996 年 87 巻 7 号 p. 977-985
    発行日: 1996/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) 前立腺癌症例において, 内分泌療法開始後早期に起こる組織学的変化を観察した.
    (対象と方法) 短期間の内分泌療法 (治療期間は1ヵ月以内) の直後に前立腺全摘除術を施行された, 前立腺癌43症例の組織像を治療前の生検標本のものと比較した.
    (結果) 癌細胞の核や細胞質の膨化, 細胞質の崩壊や濃染した裸核の出現など, 変性性の変化は全ての症例に認められた. 特に, 生検標本で低分化癌とされた症例においては, 変性性の変化のみならず癌細胞死による癌細胞巣の破壊像も観察された.
    短期間の内分泌療法後の組織学的効果度は, 予後と相関しなかったが, 病期分類D2症例においては, 治療後の標本の組織学的分化度が予後推定に有用であることが判明した.
    (結論) 内分泌療法開始後早期から, 著しい組織学的変化が始まることが判明した.
  • 開放手術および他の副腎腫瘍に対する腹腔鏡下手術との比較
    牛山 知己, 新保 斉, 青木 雅信, 石川 晃, 影山 慎二, 麦谷 荘一, 大田原 佳久, 鈴木 和雄, 藤田 公生
    1996 年 87 巻 7 号 p. 986-991
    発行日: 1996/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    クッシング症候群に対する腹腔鏡下副腎摘除術の有用性を検討するため, 手術結果および術後経過について他の副腎腫瘍に対する腹腔鏡下副腎摘除術, およびクッシング症候群に対する開放手術と比較をおこなった.
    対象とした腹腔鏡下副腎摘除術症例は, クッシング症候群6例, プレクッシング症候群7例, 原発性アルドステロン症13例, 内分泌非活性腫瘍14例であり, クツシング症候群の開放手術は5例であった.
    腹腔鏡下副腎摘除術をおこなったクッシング症候群の手術結果は, 手術時間216±46分, 推定出血量180±194ml, 歩行開始2±1.2日, 食事開始1.8±1.1日, 退院可能日5.8±0.9日であった. 超音波手術装置を導入してからは推定出血量は減少し, 症例の経験とも合わせて手術時間は短縮した. 術中合併症は500ml以上の出血1例, 軽度の脾損傷1例, 術後合併症は軽度の麻痺性イレウス1例, 腹痛1例であった. 他の副腎腫瘍の腹腔鏡下手術と比べ退院可能日のみがやや遅れたが他に有意差はなかった. 開放手術と比較すると手術時間は長いが術後の回復は明らかに早くなった.
    クッシング症候群に対する腹腔鏡下副腎摘除術は, 慎重な操作, 手技の慣れ, 新たな器械の導入により, 他の副腎腫瘍とほぼ同じ手術侵襲でおこなうことができ, 開放手術よりも著明に術後の回復を早め, 合併症を減らす可能性のある有用な術式である.
  • 鴨井 和実, 寺崎 豊博, 小島 宗門, 納谷 佳男, 渡辺 泱
    1996 年 87 巻 7 号 p. 992-996
    発行日: 1996/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) 糸球体性腎疾患の存在が疑われる無症候性顕微鏡的血尿患者について, 血尿および蛋白尿の頻度から糸球体性腎疾患の有無を予測することを目的とした.
    (対象と方法) 無症候性顕微鏡的血尿患者のうち, 泌尿器科学的疾患を有する症例を除外した55例を対象とした. 血尿 (蛋白尿) は, 試験紙で1+以上と判定されたものを陽性とし, -もしくは±と判定されたものを陰性とした. 自己判定の結果にもとづいて, その頻度から血尿 (蛋白尿) を3つの型に分類した. すなわち持続性血尿 (蛋白尿) は7日間続けて血尿 (蛋白尿) が陽性であったもの, 散発性血尿 (蛋白尿) は血尿 (蛋白尿) が7日間のうちに1+以上の日と±以下の日があったもの, 偶発性血尿 (蛋白尿) は7日間続けて血尿 (蛋白尿) が陰性であったものとした (7日間連続早朝尿自己判定法). 以上の結果と, 腎生検組織からみた糸球体性腎疾患の有無とを比較検討した.
    (結果) 検尿の自己判定は55例中53例 (96%) において1回目の施行で評価可能であった. これら55例のうち, 持続性血尿は32例 (58%), 散発性血尿は14例 (26%), 偶発性血尿は9例 (16%) であった. 糸球体性腎疾患の検出率は, 持続性血尿群 (81%, p<0.0001) と散発性血尿群 (71%, p<0.01) において, 偶発性血尿群 (0%) より高値であった.
    (結論) 以上のことから偶発性血尿を示す症例では, 糸球体性腎疾患が存在する可能性は非常に低いと考えられた.
  • 柿沼 秀秋, 佐々木 隆聖, 佐藤 一成, 平野 繁, 三浦 邦夫, 佐々木 秀平, 加藤 哲郎
    1996 年 87 巻 7 号 p. 997-1003
    発行日: 1996/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) 内分泌療法に反応した Stage D2前立腺癌症例の血清前立腺特異抗原 (PSA) と予後との関係を検討した.
    (対象と方法) 内分泌療法を施行した新鮮 Stage D2前立腺癌61症例を対象とした.
    (結果) PSAパラメーターの中央値は, 初期値77.6ng/ml, 最大減少率91.8%, 最低値2.7ng/ml, 半減時間1.1ヵ月, 最低値到達時間3.0ヵ月, 再燃後の倍加時間3.2ヵ月ならびに初期値に対する死亡前PSA値の比0.39であった. 非再燃期間は中央値15ヵ月, 再燃後の生存期間は中央値24.9ヵ月であり, 再燃率に有意に関与するPSAパラメーターは治療後の最低値 (正常化の有無, p<0.001) と初期値であった (p<0.05). また再燃後の生存期間にはPSA倍加期間が有意に関与した (p<0.05). PSAの正常化には, PSAの初期値, 最大減少率と半減時間が関与したが, 組織悪性度は関与しなかった. PSA倍加時間はいずれのPSAパラメーターおよび非再燃時間とも相関しなかった.
    (結論) 以上より前立腺癌の予後因子としてPSAの初期値, 治療後の正常化の有無ならびに再燃後倍加時間が有用と考えられた. なお初期値に対して死亡直前のPSA値が相対的に低く未分化型 stem cell 分画の増加を示唆すること, また再燃後のPSA倍加時間が未治療例と同等ないしそれ以上速いことは, ホルモン再燃腫瘍の増殖能の高さを裏付けると考えた.
  • 紺屋 英児, 島田 憲次, 細川 尚三, 松本 富美
    1996 年 87 巻 7 号 p. 1004-1007
    発行日: 1996/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は日齢8日男児, 出生時より, 両側陰嚢内容の腫脹を産科医により指摘されていたが, 改善傾向を認めないため生後8日目に当科を紹介受診した. 陰嚢皮膚は暗赤黒色を呈し, 両側陰嚢内に透光性のない鳩卵大の硬結を触知した. 同日手術を施行したが, 両側とも精巣固有鞘膜外に捻転を認め, 精巣は暗い紫色を呈し, 捻転を解除してもこの色調は改善を認めなかった. 両側性であるため両側精巣固定術を施行したが, 精巣シンチグラフィーで血流は全く認められず, 約1年後のHCG負荷試験は無反応であった. 文献上, 出生時発症の精巣捻転症は本邦報告例で47例であり, 特にこのうち両側発症例は自験例を含めて2例と非常に稀である. これら47例は受診までの期間が平均8.7日と長く, 精巣を温存できたのは49精巣中2精巣 (2/49) と予後不良であった.
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