日本泌尿器科学会雑誌
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113 巻, 3 号
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原著
  • 伊丹 祥隆, 影林 頼明, 大森 千尋, 井上 剛志, 松村 善昭, 三馬 省二
    2022 年 113 巻 3 号 p. 83-89
    発行日: 2022/07/20
    公開日: 2023/07/20
    ジャーナル フリー

    (目的) 当院ではCOVID-19に対する県基幹病院として,主に中等および重症患者の受け入れを行っている.また地域における救急医療も担い,がん診療連携拠点病院にも指定されている.2020年4月よりCOVID-19患者受け入れを開始した.今回,COVID-19蔓延が当院泌尿器科診療に与えた影響について,蔓延前と比較検討を行った.

    (対象と方法) 院内の診療統計資料をもとに泌尿器科手術件数やその種類および平均在院日数,外来・入院患者数,診療単価,紹介率,逆紹介率を算出した.

    (結果) 泌尿器科手術件数は2018年度,2019年度,2020年度でそれぞれ847,862,768件であった.2020年度において悪性腫瘍に対する手術件数に大きな変化はなかったが,良性疾患に対する手術件数は減少した.緊急手術に関しては2020年度に増加傾向であった.泌尿器科入院患者数および平均在院日数は2018年度,2019年度,2020年度でそれぞれ653人8.4日,690人8.8日,533人8.1日であった.2018年度を100とした場合の患者1人当たりの外来および入院診療単価は,2019年度,2020年度でそれぞれ119.5および104.9,133.7および119.1と増加した.

    (結論) COVID-19蔓延によって地域における当院の役割や使命がより明確になったと考えられた.

  • 古川 祥之, 丸 晋太朗, 豊田 裕, 作田 剛規, 前野 七門, 松村 欣也, 小柳 知彦
    2022 年 113 巻 3 号 p. 90-95
    発行日: 2022/07/20
    公開日: 2023/07/20
    ジャーナル フリー

    (目的) 膀胱頚部硬化症(BNC)は前立腺肥大症(BPH)の手術合併症の1つだが,経尿道的膀胱頚部切開術(TUI-BN)に関する報告は少ない.経尿道的前立腺手術後のBNCにTUI-BNを施行した症例の治療成績を検討した.

    (対象と方法) 2015年2月から2021年1月にTUI-BNを行った25例を対象に①患者背景②BPHの手術からTUI-BNを行うまでの期間③発見契機④術式・周術期経過⑤TUI-BN前後の排尿機能⑥術後の転帰について後方視的に検討した.

    (結果) ①年齢は77歳,BPHに対する術式は経尿道的前立腺切除術4例,電解質溶液下経尿道的前立腺切除術9例,経尿道的前立腺核出術12例.②TUI-BNまでの期間は中央値364日で18例(72%)が2年以内に施行.③有症状症例は21例で,そのうち尿勢低下を16例に認めた.④手術時間は14分,術式は4・8時方向の2切開が44%と最多であった.⑤4・8時を含む切開群で最大尿流量率は術前11.1mL/sから術後20.9mL/sへ改善した(P=0.004).また有症状症例21例中16例(76%)で尿流量率が改善した(P<0.01).⑥TUI-BN術後8例は経過良好で,観察期間は170日であった.2例に再手術を要した.

    (結論) BPHに対する手術後2年以内にTUI-BNを施行した症例は72%と多く,初回TUI-BNの成功率は92%と予後良好であった.

  • 森山 真吾, 小川 一栄, 篠﨑 哲男, 萩原 和久, 木田 智, 藤森 大志, 田畑 龍治, 川島 洋平, 福田 護, 藤田 喜一郎, 加 ...
    2022 年 113 巻 3 号 p. 96-102
    発行日: 2022/07/20
    公開日: 2023/07/20
    ジャーナル フリー

    (目的) 骨盤臓器脱に対するロボット支援下仙骨腟固定術(Robot-assisted sacrocolpopexy:RASC)について,当院における手術成績および下部尿路機能・症状,便秘症状を後方視的に検討した.

    (対象と方法) 2020年11月導入時から2021年10月までに骨盤臓器脱に対してRASCを施行した連続110例を対象とした.下部尿路機能は尿流測定と残尿測定で評価し,下部尿路症状および便秘症状については自記式質問票を用いて,術前,術後1カ月,術後6カ月の変化を検討した.

    (結果) 手術時間,出血量の平均はそれぞれ146分,14.8mlであった.また,術中合併症は認めず,術後合併症を10例(9.1%)に認め,GradeIIIa以上の合併症は認めなかった.最大尿流率,残尿量,OABSS,ICIQ-SF,QOLスコア,UDI-6は術後1カ月で術前より有意に改善がみられ,術後6カ月も維持していた.一方,便秘症状に関してはCSS,PAC-QOLが術後1カ月で術前より悪化する傾向があり,術後6カ月で術前と同等まで回復あるいは有意に改善した.術後1カ月の時点でde novo症例はOAB 8%,SUI 33%,便秘10%であった.

    (結論) 当院のRASCは安全性,治療効果ともに問題ないものと考えられた.

  • 横川 秀平, 田部井 正, 山口 克哉, 堤 壮吾, 今野 真思, 三山 健, 伊藤 悠城, 小林 一樹
    2022 年 113 巻 3 号 p. 103-109
    発行日: 2022/07/20
    公開日: 2023/07/20
    ジャーナル フリー

    (目的) ロボット支援前立腺全摘除術における術後アセトアミノフェン定時静脈・経口投与の効果を検討した.

    (対象と方法) 2019年4月から2020年12月にロボット支援前立腺全摘除術を行った173症例を対象とした.アセトアミノフェンを疼痛時のみ使用したA群,手術日~術後2日まで静脈投与したB群,B群に加え術後3~7日まで経口投与したC群に分け,予定外の鎮痛薬使用に対する因子を多変量解析で検討した.

    (結果) A群110例,B群33例,C群30例だった.A群とB群でリンパ節郭清の有無(70.9% vs 36.4%,P=0.001),A群とC群でリンパ節郭清の有無(70.9% vs 33.3%,P<0.001)と術前ホルモン療法(20% vs 3.3%,P=0.029)で有意差を認めた.ロジスティック回帰分析により術後0~2日では,アセトアミノフェン定時静脈・経口投与の有無(A群vs B群OR=0.127;0.046~0.355,P<0.001,A群vs C群OR=0.133;0.046~0.390,P<0.001)が術後疼痛の独立因子であった.術後3~7日においてA群とB群の予定外の鎮痛薬使用に有意差は認めず,C群で予定外の鎮痛薬使用は1例のみだった.

    (結論) ロボット支援前立腺全摘除術においてアセトアミノフェンの定時静脈・経口投与を行うと,術後予定外の鎮痛薬使用を減らすことができると考える.

症例報告
  • 苅部 勇大, 田部井 正, 林 宏行, 杉村 留美子, 滝澤 弘樹, 寺尾 秀行, 舩橋 亮, 太田 純一, 森山 正敏
    2022 年 113 巻 3 号 p. 110-114
    発行日: 2022/07/20
    公開日: 2023/07/20
    ジャーナル フリー

    症例は71歳男性.嗄声と右上肢のしびれへの精査で施行した胸部レントゲン撮影とCTで,腎癌と肺転移,胸壁転移を疑われ当科紹介となった.腎生検と気管支鏡下肺生検を施行し,右腎細胞癌多発肺転移の診断となった(臨床診断:renal cell carcinoma,clear cell type,G2,cT3aN0M1).IMDC分類でpoor risk(貧血,補正Ca高値,診断から全身治療開始までが1年未満の3項目に該当)に分類されたためイピリムマブ+ニボルマブ併用療法を開始した.イピリムマブ+ニボルマブ併用療法4サイクル投与後のCTでは,原発巣及び他転移巣とも縮小した.また,初診時より認めていた嗄声や,右上肢のしびれも消失した.一方で,イピリムマブ+ニボルマブ併用療法開始後より下痢や皮疹,貧血とCRPの上昇を認めた.下痢と皮疹は免疫関連有害事象と考え,プレドニゾロンの内服とステロイド軟膏の塗布で軽快したが,さらなる貧血の悪化とCRPの上昇を認めたためイピリムマブ+ニボルマブ併用療法はニボルマブ単独投与4コース以降を中止とした.同療法の開始から6カ月後,便秘と腹部膨満感を自覚した.CTで小腸腫瘍による腸重積を指摘され,小腸部分切除術を施行,病理学的に腎癌小腸転移の結果であった.術後,貧血とCRPはいずれも改善傾向を示し,小腸転移に伴うものと考えられた.イピリムマブ+ニボルマブ併用療法を開始から12カ月の時点で,原発巣・転移巣ともに縮小を維持している.

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