この研究の目的は夜間頻尿患者の昼夜尿産生量と血漿 Arginine vasopressin (AVP) 日内変動を調べ, 1-deamino-8-D-arginine-vasopressin (DDAVP) 点鼻療法の効果を検討することである.
対象は, 心, 肝, 腎疾患がないにもかかわらず夜間多尿に伴う夜間頻度を訴える8症例 (男7例, 女1例, 44歳~72歳) であり, うち3例は自律神経障害を伴っていた. 全例が, 抗コリン剤の内服治療, 水分制限を受けたにもかかわらず症状軽減が見られなかった. 全例, 就寝中の尿量が個々の膀胱容量を上まわっており, 血漿AVP日内変動では, 就寝中に上昇する正常なリズムは認められなかった. DDAVPは, 就寝前に5~10μgを点鼻にて投与した. 夜間尿回数は, 治療前平均4.6回から治療後2.5回となり有意に改善した (p<0.01). 覚醒中の尿量と就寝中の尿量の比率も治療前1.33から治療後3.22と有意に上昇した (p<0.01). また, 就寝中尿量の膀胱容量に対する割合も3.7から1.5と有意に減少した (P<0.01). 副作用では1例に頭痛, 鼻閉症状, 低Na血症を認めたが, 軽度であった.
DDAVPは夜間多尿による夜間頻尿を訴える患者のなかで, 血漿AVPの夜間上昇の見られない患者に有効な薬剤であると考えられた.
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