日本泌尿器科学会雑誌
Online ISSN : 1884-7110
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102 巻, 1 号
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論説
原著
  • 奥木 宏延, 牧野 武朗, 加藤 春雄, 大山 裕亮, 岡崎 浩, 中村 敏之
    2011 年 102 巻 1 号 p. 2-8
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/06/11
    ジャーナル フリー
    (目的) 前立腺肥大症に対して施行した,バイポーラーシステムを利用した経尿道的前立腺核出術(TUEB)の治療成績について検討した.
    (対象と方法) 2008年2月より2009年8月までの間にTUEBを施行した45例を対象にした.周術期治療成績および手術前後の国際前立腺症状スコア(IPSS),QOL index,過活動膀胱症状スコア(OABSS),最大尿流量率(Qmax),残尿量(PVR)や合併症を検討した.
    (結果) 平均年齢は71.6歳(60~84歳),平均推定前立腺重量は53.2g(11.8~105.6g),平均手術時間は125.5分(76分~212分),平均核出時間は96.1分(56~169分),平均核出重量は32.3g(6~82g),平均尿道カテーテル留置期間は2.5日(2~7日)であった.周術期合併症として輸血症例や低ナトリウム血症例は認めなかった.1分間あたりの平均核出重量は症例を重ねるにつれ有意に増加していた(P<0.001).手術前と比較してIPSS,QOL index,OABSS,PVRは術後1カ月で有意に改善し,その後12カ月まで持続していた.Qmaxは術後1カ月で有意に改善したものの12カ月では有意差を認めなかった.術後合併症は術直後の尿閉を2/45例(4.4%)に認めたが,数日後にカテーテル抜去可能であった.術後1カ月目に保存的治療で治癒可能な後出血を1/45例(2.2%)に認めた.術後6カ月時点まで観察しえた中で1パッド以上必要な尿失禁を1/17例(5.9%)に認めた.術後3カ月のPSA低下率は89.8%であった.
    (結論) TUEBは合併症が少なく切除率の高い治療法と考えられた.中期的な臨床成績も良好なことからも,前立腺肥大症の有効な治療法の1つとして定着しうると考えられた.
  • 赤倉 功一郎, 松崎 香奈子, 小林 孝至, 木藤 宏樹, 溝口 研一, 富川 聖恵麗, 田倉 智之, 川渕 孝一
    2011 年 102 巻 1 号 p. 9-13
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/06/11
    ジャーナル フリー
    (目的) 局所前立腺癌の治療法として様々な選択肢があるが,その比較には医療経済的評価が不可欠である.また,費用対効用分析においては,単なる生存期間の比較ではなくQOLを加味した質調整生存年(QALY:quality adjusted life year)の評価が重要である.そこで,QALY算出に最も広く用いられているQOL効用値指標であるEuroQol-5D(EQ-5D)ならびにvisual analogue scale(VAS,0~100 points)の前立腺癌患者における有用性を検討した.
    (対象と方法) 前立腺癌患者81例を対象として,包括的および前立腺癌特異的QOL調査票であるSF-36とEPICを用いて,EQ-5DとVASとの関連を調べた.
    (結果) SF-36の全ての下位尺度においてEQ-5DおよびVASとの有意な相関を認めた.一方,EPICの下位尺度である排尿,排便,性,ホルモンに関してはQOL効用値指標に大きな影響はなかった.SF-36の結果からVAS効用値を変換算出すると,実際に得られた値と有意で強い相関がみられた(相関係数0.53,p<0.0001).
    (結論) 前立腺癌患者においてEQ-5DならびにVASを用いたQOL効用値指標の算出が妥当であり,費用対効用分析に用いる可能性が示された.また,これまでに蓄積されているSF-36のデータを用いてQOL効用値指標を変換算出できる可能性が示唆された.
  • 阿部 豊文, 吉岡 俊昭, 佐藤 元孝, 森 直樹, 関井 謙一郎, 板谷 宏彬
    2011 年 102 巻 1 号 p. 14-22
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/06/11
    ジャーナル フリー
    (目的) 膀胱温存を目的とした局所浸潤性膀胱癌に対する放射線化学療法の治療成績,およびその予後予測因子について検討した.
    (対象と方法) 2000年から2005年に住友病院泌尿器科で膀胱温存を目的に放射線化学療法を行った局所浸潤性膀胱癌患者32例(男性30例,女性2例,平均年齢68.1歳)を対象とした.病期はT2が13例,T3が16例,T4が3例であった.治療プロトコールとして,まず可能な限り経尿道的に腫瘍を切除した後,骨盤腔に46Gyを照射,同時にCisplatin 20mg/dayを1週目と4週目に5日間連続で経静脈的に計200mg投与した.効果判定はMRI,尿細胞診,経尿道的膀胱生検を行い,浸潤癌が認められない場合は膀胱を温存,浸潤癌が残存した場合は膀胱全摘術を行った.また初回手術で得られた病理標本で,腫瘍細胞のBcl-2,Bax,Bcl-xの発現を調べた.平均観察期間は54.6カ月であった.
    (結果) 全症例の疾患特異的生存率は,3年,5年でそれぞれ84.0%,66.9%であった.近接効果として膀胱を温存できた症例は27例(84.4%)で,3年以上浸潤癌再発や遠隔転移なく膀胱を温存できたのは18例(56.3%)であった.Bcl-xが陽性であった症例は陰性例と比較し有意に予後不良であった.
    (結論) 当科における放射線化学療法は,膀胱全摘術と比較し遜色のない良好な結果であった.Bcl-xの発現の有無は予後予測因子となりうる可能性が示唆された.
  • 柳原 豊, 三浦 徳宣, 東 浩司, 佐々木 豊和, 西田 智保, 菊川 忠彦, 佐藤 秀樹, 島本 憲司, 青木 克徳, 丹司 望, 武田 ...
    2011 年 102 巻 1 号 p. 23-27
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/06/11
    ジャーナル フリー
    (目的) ホルモン抵抗性前立腺癌に対して低用量ドセタキセル+デキサメタゾン併用療法を施行し,効果と安全性についてレトロスペクティブに検討した.
    (対象と方法) 内分泌療法に対して再燃をきたした16例の前立腺癌症例を対象とした.60~80mg/bodyあるいは50mg/m2のドセタキセルを3~4週間毎に投与するとともに,デキサメタゾン1mgを連日投薬した.LH-RHアナログは継続した.
    (結果) 16例中13例(81.3%)にProstate Specific Antigen(PSA)値の低下を認め,16例中11例(68.8%)にPSA値の50%以上の低下を認めた.無増悪生存期間は0.7~36.1カ月(中央値7.1カ月),生存期間は4.7~55.4カ月(中央値20.3カ月)であった.血液毒性として,G3の好中球減少2例(12.5%)に認めたのみで,G3以上の非血液毒性として,感染性心内膜炎,脳出血,消化管出血,圧迫骨折を1例ずつに認めた.
    (結論) 低用量ドセタキセル+デキサメタゾン併用療法の効果は諸家の報告と同程度であった.血液毒性は軽微であったが,両剤を併用することで非血液毒性は高度になる可能性もあり,注意が必要である.
症例報告
  • 加藤 琢磨, 山本 議仁, 松岡 祐貴, 桑田 善弘, 田岡 輝久, 香月 奈穂美, 串田 吉生, 筧 善行
    2011 年 102 巻 1 号 p. 28-33
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/06/11
    ジャーナル フリー
    播種性骨髄癌腫症は固形癌のびまん性骨転移によって播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation;DIC),白赤芽球症(leukoerythroblastosis),最小血管障害性溶血性貧血(microangiopathic hemolytic anemia;MHA)を呈し,急激に予後不良な経過をたどる病態である.本症を併発した前立腺癌の2例を経験した.前立腺癌による播種性骨髄癌腫症の報告は稀であり,若干の文献的考察を加え報告する.症例1:61歳男性.PSA高値にて当科を紹介された.前立腺生検,画像検査にて前立腺癌(T3N1Mx)と診断された.MAB(maximum androgen blockade)療法がおこなわれたが,原因不明の消化管出血,治療抵抗性のDICを呈し,初診より2カ月後に癌悪液質にて死亡した.死亡後の骨髄生検にて骨髄への前立腺癌転移が確認された.症例2:68歳男性.血尿を主訴に当科を紹介された.膀胱鏡にて前立腺部尿道に非乳頭状腫瘍を認め,経尿道的生検を施行した.前立腺癌(T4N0M1)と診断され,MAB療法,ゾレドロン酸投与にて加療が開始された.治療開始8カ月後,倦怠感,貧血,血小板減少を認め,骨髄生検にて癌の骨髄転移と診断された.ホルモン交代療法,ドセタキセル療法が行われ,血球減少症は改善し,全身状態も回復した.
  • 小幡 淳, 菊地 栄次, 金子 剛, 宮嶋 哲, 亀山 香織, 陣崎 雅弘, 大家 基嗣
    2011 年 102 巻 1 号 p. 34-38
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/06/11
    ジャーナル フリー
    68歳男性.1994年肉眼的血尿にて近医を受診し膀胱腫瘍を指摘され,加療目的に当院を受診した.TUR-BTにてUC,G2>G3,pT1と診断しBCG膀胱内注入療法を施行したが,1996年に再発しその際前立腺浸潤(cT4a N0 M0)を認めた.1997年,膀胱全摘,舟状窩を除く尿道摘除術,骨盤内リンパ節郭清,Indiana pouch造設術を施行した.2006年,左鼡径・傍大動脈リンパ節腫大,左下肢のリンパ浮腫を認めた.鼡径リンパ節は摘除し,UCの転移と診断された.その後MVAC療法を3コース施行した.2007年に右鼡径リンパ節転移を認め,これを摘除したが,2008年にも再度左鼡径リンパ節転移を認めた.同時期に亀頭部の発赤を認め,生検したところ,UCの病理像であった.Gemcitabine,Paclitaxelによる全身化学療法を4コース施行した.その後も鼡径リンパ節腫脹,リンパ浮腫を伴う左下肢蜂窩織炎を発症した.尿道再発巣からのリンパ行性転移により鼡径リンパ節腫脹が繰り返し生じている可能性が考えられ,陰茎部分切除術および鼡径リンパ節郭清術を施行した.膀胱全摘,舟状窩までの尿道摘除後に残存尿道へ再発し,鼡径リンパ節転移を呈した症例は稀であり,文献的考察を含め報告する.
  • 千菊 敦士, 村上 薫, 岡所 広祐, 澤田 篤郎, 柴崎 昇, 奥村 和弘
    2011 年 102 巻 1 号 p. 39-42
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/06/11
    ジャーナル フリー
    83歳男性.CTにて偶然,左腎に淡い造影効果をもつ約2cmの腫瘤を認め当科受診.転移性腎腫瘍や悪性リンパ腫の可能性も考えFDG-PETを施行し同腫瘤に集積を認めたが,他の部位に集積なし.4カ月前のCTにて同腫瘤は2mm程度であり,急速に増大していることから腎悪性腫瘍の診断で腹腔鏡下左腎摘除術を施行した.病理は多数の小リンパ球や組織球を背景に比較的大型の細胞が散在し,それらはEBER-ISH陽性であった.臨床的に明らかな免疫不全状態ではなく,高齢化に伴う免疫力低下を背景に発症したと考えられる加齢関連EBV陽性リンパ増殖性疾患と診断した.腎に限局した症例の報告は本邦で初となる.
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