日本泌尿器科学会雑誌
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93 巻, 6 号
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  • 鈴鴨 よしみ, 筧 善行, 賀本 敏行, 荒井 陽一, 小川 修, 福原 俊一
    2002 年 93 巻 6 号 p. 659-668
    発行日: 2002/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 前立腺癌疾患特異的QOLを測定する尺度「UCLA Prostate Cancer Index (UCLA PCI)」を翻訳し, オリジナルと等価概念を現す日本語版を作成すること
    (対象と方法) 多段階のプロセスを経てオリジナル版の翻訳を行った. さらに, 前立腺癌患者6名を対象にパイロットテストを実施し, 翻訳上の問題点や実施上の問題点を抽出して改訂し, 原作者の了承を得た.
    (結果) 項目分析の結果, 無回答者がいた4項目, 一つのカテゴリーに片寄る1項目が抽出された. 無回答であった項目はその後の質的解析により回答選択肢に問題が見つかり, 改訂され解決された. 回答に偏りのある項目は, 対象が症状の安定した群であったためと考えられた. 他の項目は性機能を含め, 十分な回答率が得られた. 所用回答時間は5.5分と負担のないものであった.
    (結論) 理解しやすく負担のない, 且つオリジナル版の持つ概念と等価であると認められたUCLA PCI日本語版 version 1.2が完成した. また, 尺度開発におけるパイロットテストの有用性が示された.
  • 本間 之夫, 塚本 泰司, 安田 耕作, 大園 誠一郎, 吉田 正貴, 進士 恵美
    2002 年 93 巻 6 号 p. 669-680
    発行日: 2002/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) International Prostate Symptom Score (IPSS) とBPH Impact Index (BII) の日本語訳の言語的妥当性を検討する.
    (方法) IPSSとBIIの日本語訳の作成を多段階の手法で行った. 順翻訳の作成は, 5名の泌尿器科医師と2名の翻訳者と1名の看護師が, 各自で行った翻訳と日本の排尿障害臨床ガイドラインにある翻訳を討議して行った. これを2名の米語を母国語とする翻訳者によって逆翻訳し, 原著者と討議した. あわせて20名の前立腺肥大症患者を対象に詳しい個人面接を行った.
    (結果) 原作者からはおおむね同意が得られたが, 大きな問題点が2つよせられた. それは, IPSSの質問文すべてにある how often が日本語訳にはない点, および, QOL index の回答肢の日本語訳をより感情的な表現とすべきとする点であった. 前者については, 質問票の始めに回答は頻度で考える旨の説明文を置くことで合意が得られた. 後者については, 88名の患者で追加調査を行い, いくつかの選択肢についてはその訳をより感情的なものにして合意に達した.
    (結論) IPSSとBIIの日本語訳について言語的な妥当性を検討し, 妥当と思われる日本語訳を作成した.
  • 岸野 辰樹, 細川 幸成, 鳥本 一匡, 小野 隆征, 上甲 政徳, 百瀬 均
    2002 年 93 巻 6 号 p. 681-685
    発行日: 2002/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 二分脊椎症例に対する回腸利用膀胱拡大術の手術侵襲について Systemic Inflammatory Response Syndrome (SIRS) を用いて検討した.
    (対象と方法) 二分脊椎症例に対して行った回腸利用膀胱拡大術23例, その他の泌尿器科手術症例として前立腺全摘除術25例, 根治的腎摘除術20例を対象とした. SIRSは生体の非特異的炎症反応を表すとされており, 4つの診断基準のうち2つ以上の項目を満たした場合にSIRSであると診断される. われわれはこれを応用し, SIRS持続期間における陽性項目数の総和をSIRS score とし手術侵襲の強度を示すパラメーターとした. SIRS score と各因子との関連性を検討し, さらに回腸利用膀胱拡大術のSIRS score をその他の泌尿器科手術と比較した.
    (結果) 回腸利用膀胱拡大術のSIRS score と手術時間の間には, 手術時間が長くなるほどSIRS score が大きくなるという関連性がみられた. 脳室腹腔シャントを脳室心房シャントに変更する術式を併用した症例でSIRS score が有意に大きくなった. 手術時間はシャント手術併用の有無により有意差はみられなかった. また, 回腸利用膀胱拡大術のSIRS score はその他の泌尿器科手術に比べて有意に高かった.
    (結論) SIRS score を指標として検討した結果, 回腸利用膀胱拡大術の手術侵襲には手術時間と脳室シャント手術の併用という2つの因子が関係していた. また, 回腸利用膀胱拡大術の手術侵襲はその他の泌尿器科手術に比べて大きく, 手術適応の決定に際してはこれらのことが考慮される必要がある.
  • 中田 誠司, 高橋 溥朋, 竹澤 豊, 小林 幹男, 松本 和久, 古作 望, 川島 清隆
    2002 年 93 巻 6 号 p. 686-693
    発行日: 2002/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 前立腺癌は進行例でも内分泌療法で一旦制癌されるが, 多くは再燃する. 再燃後の予後は不良だが, 症例により大きく異なる. 内分泌療法で一旦制癌された後にPSAが再上昇した74例につき, PSA関連パラメーターと病期, 予後との関係を.
    (対象と方法) 対象は, 初期治療として内分泌療法を含む治療により, PSAが10ng/ml以下に低下した後に再上昇した前立腺癌74例である. これらについて, 治療前PSA値, PSA nadir 値, 治療開始からPSA nadir までの期間, 治療開始から再燃までの期間, 再燃時のPSA倍加時間 (PSA-DT), 再燃後二次治療に対するPSAの反応をもとめ, 臨床病期, 予後との関係を検討した. 予後は, 病期Dの例のみについて再燃後の癌特異生存率を Kaplan-Meier 法にてもとめ, 生存率の差の検定はログランク検定で行った.
    (結果) 病期の進行とともに, 治療前PSA値は有意に高く, 再燃までの期間, PSA-DTは有意に短くなった. 二次治療に対するPSAの反応では, 病期B+Cでは病期Dに比べ有意にCR+PRが多かった. 再燃までの期間が10ヵ月未満の群, PSA-DTが2ヵ月未満の群は, それ以上の群に比べて有意に再燃後の予後は不良であった.
    (結論) 治療から再燃までの期間, 再燃時PSA-DTが再燃後の予後因子であり, 再燃後の治療方針をたてたり, 患者や家族に予後の見通しを説明する上で, 重要な判断材料になると考えられる.
  • 谷口 光宏, 三輪 好生, 竹内 敏視, 酒井 俊助, 高橋 義人, 石原 哲, 出口 隆, 山田 伸一郎, 伊藤 康久, 坂 義人, 蓑島 ...
    2002 年 93 巻 6 号 p. 694-701
    発行日: 2002/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 膀胱全摘除術後に Hautmann 法による neobladder が造設された患者に対し, 合併症および排尿, 尿失禁, 性生活について評価をおこなった.
    (対象と方法) 1993年1月より1999年12月までに岐阜大学およびその関連施設で, 膀胱全摘除術後に Hautmann 法による neobladder が造設された118例 (男性105例, 女性13例) について検討した. 排尿, 尿失禁, 性生活に関した調査表を作成し郵送で行った.
    (結果) 観察期間は平均50.4ヵ月 (6.8~88.2ヵ月) であった. 早期の術後合併症では, 17.8%に創部感染を, また10.1%にイレウスがみられた. 晩期合併症ではイレウス, 腎盂腎炎, パウチ結石, パウチ尿道吻合部狭窄をそれぞれ3.4%にみられた. 質問表に対して調査時点で生存していた90例のうち81例 (男性73例, 女性8例) 72.9%で回答が得られた. 自排尿は95.1%で可能であったが, 4.9%では間欠的自己導尿が必要であった. I-PSSスコアは平均11.6点であった. 排尿途絶については, 38%が全くないと答えたが, 25.0%がほとんどいつもあると答えていた. 尿線の勢いの弱さを36%では全く感じないと答えたが, 25.7%ではほとんどいつも感じると答えた. 昼間の尿の禁制は97.3%で保たれていたが, 夜間には61.3%に尿失禁がみられた. 回答が得られた73例の男性症例での性生活に関する質問では, 術前79.7%が性生活を行っていたと答えた. 術後には神経温存手術が行われた男性症例のうち63.6%で性生活が行われていたが, 神経温存が行われなかった症例では14.8%のみに性生活が行われていた.
    (結論) Hautmann 法による neobladder は多くの症例で機能的に問題なく, 合併症も許容できる範囲であった. しかし排尿困難の訴えには症例によりばらつきがみられた. さらに夜間の尿失禁, 性生活についても問題がみられた.
  • 五十嵐 敦, 益山 恒夫, 渡辺 賀寿雄, 檜垣 昌夫, 倉本 憲明, 鈴木 康太, 吉田 英機
    2002 年 93 巻 6 号 p. 702-706
    発行日: 2002/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 自然破裂した腎血管筋脂肪腫 (以下AML) に動脈塞栓術 (以下TAE) を施行した症例の長期的な治療成績について検討した.
    (対象と方法) 1996年11月から2000年2月までに自然破裂したAMLに対しTAEを施行した男性1例, 女性4例を対象とした. TAEは, エタノール+リピオドール注入と金属コイルやゼルフォームを組み合わせて施行した. 個々の症例の治療効果は観察期間と腫瘍の縮小率 (1-TAE後TAE前) で比較した.
    (結果) 4例は1度のTAEのみで再破裂, 再出血を認めず, 腫瘍の縮小効果を認めた. 1例は, TAE後11日目に患者の希望にて腫瘍核出術を施行した.
    (結論) 今回経験した症例でのTAEでの治療成績を見てみると, TAEは止血処置および術前処置だけでなく, 定期的な経過観察は必要ではあるが長期的な腫瘍縮小効果もあり, 保存的治療として今後推奨されるべき治療法となるものと考えられた.
  • 本邦報告例との比較を中心に
    塩野 裕, 岸本 幸一, 古田 希, 三木 健太, 波多野 孝史, 五十嵐 宏, 大石 幸彦, 清田 浩
    2002 年 93 巻 6 号 p. 707-709
    発行日: 2002/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は3歳, 男児. 生下時より左停留精巣を指摘されていたが, 精巣の下降を認めないため, 手術目的に当科を紹介受診された. 左停留精巣の診断で手術行ったところ, 左側に精巣を2個認め多精巣症と診断された. 術中の生検では悪性所見を認めなかったため, 重複精巣を陰嚢皮下に固定し, 手術を終了した. 多精巣症は自験例が本邦21例目であった.
  • 鈴木 一也, 小瀬川 悦子, 星井 達彦, 宮島 憲生, 高橋 英祐, 渡辺 竜助, 小原 健司, 冨田 善彦, 高橋 公太, 吉田 実, ...
    2002 年 93 巻 6 号 p. 710-714
    発行日: 2002/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    38歳男性. 家族歴は, 叔父が von Hippel-Lindau (VHL) 病. 父が脊髄腫瘍. 既往歴は, 拡張型心筋症, 両側網膜血管腫. 1998年3月, 腹部CTにて両側副腎腫瘤を指摘され, 同年9月当科1回目入院. 血圧は正常も尿中カテコラミンの上昇がみられ, 頭部MRIにて小脳血管芽腫を認め, 画像診断より, VHL病に合併した両側副腎褐色細胞腫と診断し, 11月2日, 経腹的に右副腎全摘術, 左副腎部分切除術を施行した. 病理所見も褐色細胞腫であった. 1999年4月CTにて左腎腫瘍指摘され, 同年6月小脳血管芽腫切除後, 8月2回目入院. 9月1日左腎部分切除術施行し, 病理所見は腎細胞癌であった. 遺伝子解析では codon167番の missense 変異が同定された. 2000年12月, CTにて再び右腎腫瘍指摘されたが, 拡張型心筋症に伴う心機能低下により手術は困難と考え, 2001年8月現在経過観察中である.
    VHL病に合併した両側副腎褐色細胞腫, 両側腎細胞癌の報告例は, 本邦では自L験例が2例目である.
  • 井上 高光, 羽渕 友則, 下田 直威, 佐藤 滋, 佐藤 一成, 加藤 哲郎, 南谷 佳弘, 小川 純一, 松尾 重樹, 佐々木 秀平
    2002 年 93 巻 6 号 p. 715-718
    発行日: 2002/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    化学療法抵抗性の非セミノーマ精巣腫瘍に対して, AFP高値のまま肺および縦隔の残存腫瘍摘除術を行い, AFPが正常化する過程を3回繰り返し, 最終的に約3年間の長期寛解を得ている1症例を経験した. 化学療法によって腫瘍マーカーの正常化が望めない場合でも, 症例を選べば救済外科療法によって長期寛解が得られることが示唆された.
  • 2002 年 93 巻 6 号 p. 720
    発行日: 2002年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
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