(目的) 泌尿器科系悪性腫瘍のスクリーニングとして健診における腹部超音波検査が果たす役割について検証する.
(対象及び方法) 1993年から1997年に東急病院健康管理センターで男性109,077人, 女性28,023人が健康診断の一環として超音波診断装置で腹部, 骨盤部疾患の検診を受けた.
(結果) 腎細胞癌12例, 膀胱癌7例, 前立腺癌4例, 精巣腫瘍1例の計34例の泌尿器科的悪性腫瘍が検出された. pTNM分類 (1997年) では腎細胞癌は全例pT1N0M0, 膀胱癌で7例中6例がpT1N0M0であったのに対し, 前立腺癌では3例全例がpT3N0-1M0で, 精巣腫瘍の1例もpT1N3M0であった. 腎細胞癌では全例無症状, 膀胱癌では1例をのぞき無症状であったが, 前立腺癌では4例中3例が排尿困難を自覚し, 精巣腫瘍例も陰嚢腫大を自覚していた. 膀胱癌で尿潜血陽性率29%, 尿細胞診陽性率29%, 前立腺癌でPSA陽性率100%であった. 健診発見腎癌, 膀胱癌例を症候性腎癌, 膀胱癌例と比較すると, 腎細胞癌で low grade, low stage 症例が有意に健診発見群で多く認められた.
(結論) 健診腹部超音波検査は泌尿器科の代表的悪性腫瘍をあまねくスクリーニング可能であったが, 癌の効率的な早期発見という検診の主目的を腎癌, 膀胱癌ではほぼ満たしうるのに対し, 前立腺癌, 精巣腫瘍の腹部超音波スクリーニングでは検出は可能なものの, 目的達成という点からみると限界がみられた.
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