日本泌尿器科学会雑誌
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90 巻, 10 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 羽渕 友則, 筧 善行, 寺地 敏郎, 小川 修, 吉田 修
    1999 年 90 巻 10 号 p. 809-817
    発行日: 1999/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 膀胱移行上皮癌に対する膀胱全摘除術の補助療法である adjuvant chemotherapy (以下AdjCTxと略す) と neoadjuvant chemotherapy (以下 NeoCTx と略す) の成績と適応について検討した.
    (方法) 当科にて膀胱移行上皮癌に対して膀胱全摘除術が施行された229症例を検討対象とした. 42例に AdjCTx (VPMCisCF, CisCA, MVAC, MEC) を1~4コース行い, 23例に NeoCOx (CisCA, MVAC, MEC) を1~4コース行った. 対象を病期, 化学療法施行の有無により群化し, Kaplan-Meier 法にて疾患特定生存率を算出し, 有意差の検定は一般化 Wilcoxon 法を用いて検討した.
    (結果) pT3a以上, さらにはpT3b以上, pT4以上の症例群に限定しても, AdjCTx 施行により生存亡率に有意な差を認めなかった. AdjCTx はpN2以上の症例群では有意に生存率を改善していた. NeoCTx では, 施行群全体では有意な生存率の改善は認められなかったが, 施行後にpT1以下に down staging された例や clinical PR 以上の反応の得られた症例の生存率は, 非施行群に比べて有意に高かった.
    (結論) AdjCTx や NeoCTx は, 現状の適応よりさらに限定された症例に行うと, 有意な survival benefit が得られると考えられた. response が得られない症例に無用な化学療法を施行しないためにも, 化学療法に対する response を予知できるマーカーが必要と考えられた.
  • High grade VURとの鑑別診断の重要性
    浅沼 宏, 中井 秀郎, 宍戸 清一郎, 田島 英治, 河村 毅, 川村 猛
    1999 年 90 巻 10 号 p. 818-825
    発行日: 1999/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 従来より high grade VURと診断されてきた乳児症例のなかには本来概念を異にすべき refluxing megaureter 症例が混在している.
    今回, 我々は乳児期 refluxing megaureter 症例の臨床的特徴を明らかにし, その management について検討した.
    (対象と方法) 最近10年間に都立清瀬小児病院泌尿器科で診断した乳児期の原発性VUR症例のうちIVPで最大尿管径が10mm以上の megaureter を伴い, 利尿レノグラムでは非閉塞型であった15症例17尿管を対象とした. それらの症例の臨床経過, 画像検査所見および治療成績を検討し, high grade VURのみの症例と比較した.
    (結果) 対象症例の性別は男児13例, 女児2例で, 14例が有熱性UTIを契機として発見された. megaureter の最大尿管径は10~21mm (平均13.6mm) であった. 9例 (60.0%) で breakthrough infection の併発を認め, high grade VUR症例の発症率 (21.3%) に比べ有意に高率であった (p=0.02). 膀胱尿管新吻合術は13例に施行され, 尿管径が16mm, 21mmと高度の拡張を伴い Politano-Leadbetter 法または Paquin 法を施行した2症例で逆存とUTIの再発を認め Psoas-hitch 法による再手術を要した. 一方, high grade VUR症例には再手術を必要とした例はなかった.
    (結論) breakthrough infection の頻度や手術成績の違いから乳児期の refluxing megaureter と high grade VURの鑑別診断は重要である. refluxing megaureter に対しては high grade VURにも増して十分な粘膜下トンネルの形成が必要で, 尿管形成術の併用または Psoas-hitch 法が積極的に考慮されるべきである.
  • インターフェロン-αの術前投与の影響について
    瀬島 健裕, 宮川 征男
    1999 年 90 巻 10 号 p. 826-832
    発行日: 1999/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 腎細胞癌における術前インターフェロン (IFN)-α療法が Fas/Fas ligand (FasL) system に与える影響を検討するために, 我々は手術標本を使って, IFN-αの術前投与群と対照群における Fas 抗原, FasL の発現とアポトーシスを調べた.
    (対象および方法) 術前投与群は10例, 対照群は16例であった. 術前投与群においては IFN-α(OIF: 大塚) 500万単位の連日筋注を2週間行った. 両群において Fas, FasL の発現を免疫組織化学的に, アポトーシスの同定を terminal-deoxynucleotidyl-transferase (TdT)-mediated digoxigenin-dUTP nick end-labeling (TUNEL) 法により検討した. なお Fas, FasL 発現の評価のために, 免疫染色陽性細胞の癌細胞に占める割合を Labeling Index (LI) とし, 同じくアポトーシス細胞の癌細胞に占める割合を Apotpotic Index (AI) とした.
    (結果) 26例全例における Fas のLIとAIとの関連では, 両者に有意な相関関係が認められた. 術前投与群における Fas のLIおよびAIは, 対照群のそれらに比べ有意に高値であった. また FasL の発現は術前投与群の10例中9例において, 対照群16例中14例において認められたが, LIは両群間で差がなかった.
    (結論) 腎細胞癌において functional な Fas/FasL system の介在と, IFN-αの術前投与が Fas/FasL system を賦活する可能性があることが示唆された. また FasL の高頻度な発現が実際に認められたことを踏まえ, この FasL の発現が免疫逃避機構につながっているかどうかを今後検討していく必要があると思われた.
  • 池本 庸, 波多野 孝史, 梁田 周一, 富田 雅之, 武内 宏之, 斑目 旬, 吉野 恭正, 大石 幸彦, 川口 安夫, 成澤 達朗
    1999 年 90 巻 10 号 p. 833-837
    発行日: 1999/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 泌尿器科系悪性腫瘍のスクリーニングとして健診における腹部超音波検査が果たす役割について検証する.
    (対象及び方法) 1993年から1997年に東急病院健康管理センターで男性109,077人, 女性28,023人が健康診断の一環として超音波診断装置で腹部, 骨盤部疾患の検診を受けた.
    (結果) 腎細胞癌12例, 膀胱癌7例, 前立腺癌4例, 精巣腫瘍1例の計34例の泌尿器科的悪性腫瘍が検出された. pTNM分類 (1997年) では腎細胞癌は全例pT1N0M0, 膀胱癌で7例中6例がpT1N0M0であったのに対し, 前立腺癌では3例全例がpT3N0-1M0で, 精巣腫瘍の1例もpT1N3M0であった. 腎細胞癌では全例無症状, 膀胱癌では1例をのぞき無症状であったが, 前立腺癌では4例中3例が排尿困難を自覚し, 精巣腫瘍例も陰嚢腫大を自覚していた. 膀胱癌で尿潜血陽性率29%, 尿細胞診陽性率29%, 前立腺癌でPSA陽性率100%であった. 健診発見腎癌, 膀胱癌例を症候性腎癌, 膀胱癌例と比較すると, 腎細胞癌で low grade, low stage 症例が有意に健診発見群で多く認められた.
    (結論) 健診腹部超音波検査は泌尿器科の代表的悪性腫瘍をあまねくスクリーニング可能であったが, 癌の効率的な早期発見という検診の主目的を腎癌, 膀胱癌ではほぼ満たしうるのに対し, 前立腺癌, 精巣腫瘍の腹部超音波スクリーニングでは検出は可能なものの, 目的達成という点からみると限界がみられた.
  • 永江 浩史, 大田原 佳久, 鈴木 和雄, 藤田 公生
    1999 年 90 巻 10 号 p. 838-842
    発行日: 1999/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) 近年, ラットやマウスの N-Butyl-N-(4-hydroxybutyl) nitrosamine (以下BBNと略) 誘発膀胱発癌モデルを用いた種々の薬剤の投与による発癌予防実験が試みられている. レチノイドの代謝を阻害することにより抗腫瘍効果を示す liarozole が, BBN誘発ラット膀胱発癌初期におよぼす効果につき検討した.
    (対象と方法) 生後7週齢 Wistar 系雄ラットを次の4群に分けた. BBN群 (n=5): 0.05% BBNを自由飲水として9週間投与. Lz40群 (n=5) およびLz80群 (n=5): 0.05% BBNの自由飲水に加え liarozole 40mg/kg/日 (B群), 80mg/kg/日 (C群) を経口強制同時期投与を9週間. Control 群 (n=4): 両薬剤とも投与しない群. いずれの群も9週終了後屠殺, 膀胱を摘出し, 10%緩衝ホルマリンで固定後パラフィン包埋切片を作製した. PCNA免疫組織染色を行い, 陽性細胞率を算出し, 各群間で比較検討した.
    (結果) A群のPCNA陽性細胞率は23.5±3.7%であった. これに対し, B群およびC群ではそれぞれ16.4±4.3%, 9.8±2.6%と陽性細胞率は有意に減少した.
    (結論) liarozole は, BBN誘発ラット膀胱発癌初期にみられる細胞増殖活性を用量依存的に抑制すると考えられた.
  • 藤田 義嗣, 平田 裕二, 星野 鉄二, 奈須 伸吉, 今川 全晴, 中川 昌之, 野村 芳雄, 花岡 雅秀, 唐原 和秀
    1999 年 90 巻 10 号 p. 843-846
    発行日: 1999/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    63歳, 男性. 右腰部痛, 体重減少のため近医受診, 右腎腫瘤を指摘され当科紹介受診. 血液検査にて貧血, 炎症所見を認めた. 超音波検査, CT, MRIにて右腎に充実性腫瘤を認め, また胸部CTにて肺に数個の結節性病変を認めた. 腎腫瘍, 炎症性疾患の鑑別を考え, 右腎摘除術施行. 病理組織学的検査にて腎放線菌症と診断された. 術後, ペニシリン系抗生剤による化学療法を施行し, 現在まで経過良好である. 腎放線菌症は極めて稀であり, 本邦第8例目であった.
  • 白井 純宏, 川上 茂生, 吉田 正貴, 上田 昭一, 中村 武利, 本田 由美
    1999 年 90 巻 10 号 p. 847-850
    発行日: 1999/10/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    透析患者に合併した膀胱肉腫様癌の1例を経験したので報告する. 症例は65歳女性. 平成8年3月, 慢性糸球体腎炎による腎不全のため血液透析導入となった. 平成9年6月より肉眼的血尿が出現し, 膀胱鏡検査にて右側壁から後壁にかけて広範囲に隆起性病変を認め, TUR-Btによる病理組織診は sarcoma であった. 臨床病期T3bN0M0, Stage III の診断にて同年9月10日, 膀胱子宮全摘術を施行した. 最終的な病理組織診断は移行上皮癌 (Grade 3) の成分と異型紡錘形細胞の増殖をみる肉腫様の部分とで構成された肉腫様癌 (sarcomatoid carcinoma) であった. 透析患者に合併した膀胱原発の肉腫様癌は極めて稀であり, 調べ得た限りでは本症例は本邦2例目である.
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