日本泌尿器科学会雑誌
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81 巻, 2 号
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  • 古田 秀勝
    1990 年 81 巻 2 号 p. 161-169
    発行日: 1990年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    ラットおよびヒト副腎の細胞膜分画にカテコールアミン受容体が存在するか否かを, radioligand binding assay により検索した. ラット副腎細胞膜分画における3H-prazosin binding (α1受容体) は, 最大結合部位密度 (Bmax) が12.5fmol/mg protein, 解離定数 (Kd) は0.11nMであった. ヒト正常副腎皮質, ヒト正常副腎髄質と褐色細胞腫の膜分画への最大結合部位密度はそれぞれ, 16.3±3.3fmol/mg protein, 16.3±2.92fmol/mg protein, 25.6±3.7fmol/mg protein であり, 解離定数はそれぞれ0.34±0.02nM, 0.27±0.04nM, 0.15±0.02nMであった. 一方, ラット副腎における3H-yohimbine billding (α2受容体) は Bmax が22.9fmol/mg protein, Kdは4.28nMであった. ヒト正常副腎皮質, ヒト正常副腎髄質と褐色細胞腫膜分画における3H-yohimbine 結合の Bmax は, それぞれ40.4±3.44fmol/mg protein, 12.2±3.0fmol/mg protein, 35.8±3.2fmol/mg Protein であり, Kdではそれぞれ5.15±0.22nM, 5.39±0.33nM, 1.08±0.21nMであった. 以上の結果よりラット副腎およびヒト副腎にはそれぞれα1およびα2受容体が存在することが確認された. ヒト正常副腎髄質細胞とヒト褐色細胞腫を比較した場合, 3H-yohimbine 結合の Bmax は12.2に対し35.8fmol/mg protein と後者で有意に高く(p<0.01), Kd値は5.39に対し1.08nMと後者で有意に低値を示した (p<0.01). ヒト褐色細胞腫の, α2受容体は, 数, 親和性が正常副腎髄質細胞より高いことが示された.
  • 佐藤 滋彰, 佐藤 和宏, 折笠 精一, 前原 郁夫, 高橋 勝, 平松 正義
    1990 年 81 巻 2 号 p. 170-177
    発行日: 1990年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    膿精液症 (pyospermia) を精液中白血球数が検鏡400倍1視野に10個以上 (WBC≧10/hpf) と定めると, 不妊症患者 (無精子症は除外) 670名中10.8%にみられ, この群の精子運動能 (SMEI) は正常群に比べ有意に低下していた. 分割射精による検討により膿精液症は不顕性の慢性前立腺炎によると考えられ, 顆粒球 elastase が精子運動性に直接影響しているものと考えられた.
  • 加藤 修爾, 氏家 徹, 毛利 和富, 中嶋 久雄, 大西 茂樹, 丹田 均
    1990 年 81 巻 2 号 p. 178-181
    発行日: 1990年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1984年9月1日より1988年8月31日までの満4年間に, 1,866例 (両側125例) の尿路結石症例を Dornier HM3を用いて治療した. 破砕片の完全排石より3ヵ月以上招経過した1,056例のうち343例が当院外来で経過観察可能であった. その結果, 343例中30例 (再発率8.7%) に新たな結石の再発を認めた. 再発率は結石多発症例群では16.9%, 結石単発症例群では6.5%であった. 結石の手術, または自然排石の既往を有する症例は, 再発症例群では50.0%, 非再発症例群では27.8%であった. この差も統計学上, 有意であった. 結石の大きさ, 結石の存在部位, 術前の尿路感染症の有無は結石の再発とは無関係であった.
  • 等速電気泳動法による腎組織ATP値と血中ピルビン酸/乳酸比の関係について
    浦 俊郎
    1990 年 81 巻 2 号 p. 182-187
    発行日: 1990年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    摘出保存腎の viability を判定するには mitochondria 機能を直接的または間接的に把握することが一つの方法と考えられている. 著者は直接的方法として温阻血腎の組織ATP値を等速電気泳動法にて測定し, 間接的方法として細胞内酸化還元状態 (NAD/NADH) を血中ピルビン酸/乳酸 (以下P/L) 比にて簡易的に算出し, mitochondria 障害の程度の相関について検討した. 平均体重3.4kgの家兎を用い warm ischemic time (WIT) 60分 (I群), WIT 90分 (II群), WIT 120分 (III群) を作製した. 阻血前 (control), 血流再開直前, 血流再開1時間, 2時間, 1日, 4日, 7日後に腎組織ATP値を等速電気泳動装置 (Tachophor LKB2127) にて測定し同時に血中ピルビン酸, 乳酸, LDH値を測定した. I群, II群, III群ともに血流再開直前の腎組織ATP値は control 値の1/10の低値を示し, 血流再開後にATP値は回復したがWITが長くなると回復は遅れた. 血中P/L比はIII群では mitochondria 障害を有意に反映した (P<0.05). 血中LDH値は mitochondria 機能を血中P/L比ほど反映しなかった. 組織ATP値を本法で測定すると組織採取の侵襲的手段に問題が残るが分析時間も30分前後と短く手技も簡便で有用な方法であった. 血中P/L比はすべて腎由来とは限らず, 直接, 腎の mitochondria 機能を反映していないと思われるがWITH 120分以上では十分判定可能である.
  • 長田 恵弘
    1990 年 81 巻 2 号 p. 188-195
    発行日: 1990年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    正常ラット膀胱移行上皮および0.05%N-Butyl-N-4-hydroxybutylnitrosamine (BBN) を投与した wistar 系ラットに発生した膀胱腫瘍から培養細胞株を樹立し, doubling time, 微細構造の比較検討を行った.
    1. BBNを32週間投与したラットの膀胱腫瘍から7株TU-B1 1~7の培養腫瘍細胞株を樹立した.
    2. 培養腫瘍細胞株の doubling time は各々43, 24, 28, 24, 25, 31, 45時間であった.
    3. ヌードマウス皮下に移植された培養腫瘍細胞株は様々の分化度を示す移行上皮癌であることが確認された.
    4. 培養腫瘍細胞株の透過型電子顕微鏡による水平および垂直セクションの観察では, 細胞間接着装置, 細胞表面の微絨毛, 細胞内小器管の発育が乏しいが, free ribsome, desmo some 等の接着装置の他, compressed vesicle を有し膀胱移行上皮の形態的特徴を示した.
    5. Attached Collagen Gel Matrix Method を細胞培養に応用することにより腫瘍細胞のみならず, in vivo の細胞と同様形態のラット正常膀胱移行上皮の培養細胞の樹立が可能となった.
    6. ラット正常膀胱移行上皮培養株は移行上皮の機能や膀胱発癌機構解明のための実験モデルとして有用であると考えられた.
  • 三枝 道尚, 那須 保友, 公文 裕巳, 松村 陽右, 大森 弘之
    1990 年 81 巻 2 号 p. 196-203
    発行日: 1990年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    初発表在性膀胱腫瘍54例について, PAP法にてBGAの染色を行い, 染色パターンの5型分類 (I, II, IIIa, IIIb, IV) とその予後との関連性について検討した.
    再発率については, BGA陰性であるTypeIIIb, IV, ならびに疑陽性であるTypeIIIaが抗原陽性例 (TypeI, II) に比し有意に高く, Stage-up 症例はBGA陰性例 (TypeIIIb, IV) のみに認められた. 染色パターンは初発時と再発時とでは変動を示す症例も認められたが, 予後予測に関しては, 治療の影響を受けていない初発の時点で行うべきであると考えられた. BGAの抗原構造の差異より, A, B, AB型群とO型群の2群間でのBGAの染色性と予後との関連性を比較検討したが, 両群間に明らかな差異は認められなかった.
  • 柿崎 弘, 山口 寿功, 鈴木 仁, 久保田 洋子, 石井 延久, 沼沢 和夫, 鈴木 騏一
    1990 年 81 巻 2 号 p. 204-209
    発行日: 1990年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    膀胱, 腎盂尿管の移行上皮癌の培養にかかわる腫瘍側の因子として腫瘍の発生臓器, 採取法, 腫瘍形態, grade などが初代培養の成功率に影響を与えるかどうかについて, retrospective に検討した. さらに腫瘍採取前の抗癌剤投与が培養に対し, どのような影響を与えるかについても検討した.
    対象は移行上皮細胞由来の膀胱癌42例, 腎盂または尿管癌11例で, 生検, 手術により得た組織の一部を機械的解離後, 単層培養とした. 初代培養は上皮性の増殖を認め, colony を形成した場合成功と判断した.
    初代培養成功例は全体で30例 (56.6%), 腫瘍の発生臓器別, 採取法別では差はなかった. 腫瘍形態で乳頭状腫瘍では初代培養の成功率が72.4%であったのに対し, 非乳頭状腫瘍では37.4%であり, 統計学的に有意差を認めた. またG1, 表在性腫瘍で成功率が高くなる傾向を認めた. さらに腫瘍採取前の抗癌剤投与では膀胱内注入療法は成功率に影響を与えなかったが, one-shot 動注療法を行なった群では dye exclusion 法で生細胞があるにもかかわらず, 初代培養の成功率は有意に低かった. これは下里・大里の組織学的効果の分類と関連しており, 組織学的効果が強いほど成功率が低かった.
  • 高橋 等
    1990 年 81 巻 2 号 p. 210-214
    発行日: 1990年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    尿流量測定の新しいパラメーターを考案し, 正常値を決定した. 153回の正常排尿と60回の閉塞性排尿を分析した. 153回の正常排尿は28人のボランティアの尿流量測定70回及び前立腺肥大症術後78人の83回より, 60回の閉塞性排尿は前立腺肥大症術前55人より得られた.
    Shiroky の示したノモグラムの下限の曲線を対数曲線にみたて, 排尿量の自然対数と平均尿流量率をプロットした. これにより正常群と排尿困難群に分ける直線が引ける. この直線はY=1.81(X-2.2) であった. 次に任意の排尿における点と (2.2,0) を結ぶ直線の傾きを求め, この傾きの値の大小で正常値が決定できると考えた. この傾きを排尿係数とすると, 排尿係数=平均尿流量率/(排尿量の対数-2.2) で示され, 正常は1.84以上, 境界域は1.81~1.84であった.
  • 森光 浩
    1990 年 81 巻 2 号 p. 215-220
    発行日: 1990年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    人培養腎癌細胞株; ACHNを用いて, 同細胞と, 軟寒天上で形成される colony 形成細胞との間の制癌剤感受性の差異について検討した. また人培養前立腺癌細胞株; PC-3, 人培養子宮頚部癌細胞株; HeLaについても併せて検討を加えた.
    各細胞を二重軟寒天上に播種し colony を形成させ, 2週間後に採取, 培養して実験に供し, 以下の3点につき親株と比較検討した. なお, 制癌剤は Vincristine (VCR) を用いた. (1) 経時的変化における差異, (2) 薬剤濃度依存性変化における差異, (3) 3H-thymidine 取り込みの抑制における差異. 結果: 経時的, 各薬剤濃度において, colony 形成細胞は親株よりも強く増殖が抑制された. また, 3H-thymidine の取り込みも, 薬剤濃度依存性に抑制され, かつ colony 形成細胞はより強く抑制された. 結論: ACHN, PC-3, HeLaの各細胞の colony 形成細胞は, 親株と比較してVCRに対する薬剤感受性が高く, またDNA合成阻害も強く認められた.
  • 少量ステロイドとアザチオプリン免疫抑制療法の長期成績
    小野 佳成, 平林 聡, 山田 伸, 大島 伸一, 絹川 常郎, 松浦 治, 竹内 宣久, 服部 良平
    1990 年 81 巻 2 号 p. 221-224
    発行日: 1990年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1982年4月より1986年7月までに社会保険中京病院泌尿器科と小牧市民病院泌尿器科で Thoracic duct drainage からのリンパ球除去による pretreatment を行い, 少量の steroid と azathioprine にて免疫抑制を施行したHLA 1 haploidentical donor からの生体腎移植症例28例の成績を報告した. TDDによる除去リンパ球数は平均±S. D.; 129.9±38.1×109, 除去期間は平均±S. D.; 35±4日であった. 移移腎生着率は腎移植後3ヵ月から2年までは96%, 3年89%, 5年84%であり, 移植患者生存率は3ヵ月から2年まで100%, 3年から5年までは96%であった. 腎移植後早期の急性拒絶反応は13例 (46.4%) に15回みられ, 不可逆性拒絶反応はみられなかった. 慢性拒絶反応は, 4例 (14.3%) に4回みられ, 移植腎機能は廃絶した. 合併症は, 重症感染症が5例5回, 糖尿病が2例に, 白内障が4例にみられた. 以上の結果より, TDD pretreatment と conventional 免疫抑制療法を施行したHLA 1 haploidentical donor からの生体腎移植患者では, steroid 投与量の減量により, 移植腎生着率は低下することなく, むしろ移植後3年から5年では, 良好な成績を示すことが知られた.
  • 大島 伸一, 絹川 常郎, 松浦 治, 竹内 宣久, 服部 良平, 橋本 純一, 小野 佳成, 渡辺 丈治, 山田 伸, 上平 修, 平林 ...
    1990 年 81 巻 2 号 p. 225-229
    発行日: 1990年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1986年8月よりHLA 1 haploidentical の組合せの生体腎移植患者20例に, 胸管ドレナージ法によるリンパ球除去を前治療として行い, 少量の ciclosporine と少量の steroid で免疫抑制を施行した. 胸管ドレナージ施行期間は平均35日, 除去リンパ球数は平均114×109であった. cyclosporine は6mg/kgで開始し, 4週間投与し, その後血中濃度を参考に3~5mg/kgで投与した. 移植日に methylprednisolone を1g投与し, prednisolone を20mg/日で投与開始し, 4週間後より15mg/日とした. 移植腎生着率は, 3, 6, 9ヵ月100%, 1年, 2年89%であり, 患者生存率も3, 6, 9ヵ月100%, 1年, 2年89%であった. 1例が移植後9ヵ月で肺癌で死亡した. 死亡時移植腎機能は良好であった. 腎移植後早期 (3ヵ月以内) の急性拒絶反応は全くみられておらず, 移植後6ヵ月で1例に急性拒絶反応がみられたのみである. 重篤な合併症は, 前述の肺癌以外には認められていない. HLA 1 haploidentical の組合せの生体腎移植では, 胸管ドレナージ法による前治療を行うことにより, 少量の cyclosporine と少量の steroid の免疫抑制により, 移植腎の完全生着が生ずる可能性が示唆された.
  • 坂本 亘, 岸本 武利, 西阪 誠泰, 飯盛 宏記, 和田 誠次, 安本 亮二, 山本 啓介, 前川 正信, 須加野 誠治, 梅山 馨, 西 ...
    1990 年 81 巻 2 号 p. 230-235
    発行日: 1990年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    我々の施設において, 1975年より1989年4月までの14年間に原発性上皮小体機能亢進症にて, 上皮小体摘出術を施行した症例は32例である. その内訳は男16例, 女16例, 年齢は20歳から84歳に及び, 50歳代が10例と最も多く認められた. 病型としては, 結石型が16例 (50%) と最も多く, 化学型が9例 (28%), 骨型が7例 (22%) であった. 術後の病理検査では, 腺腫が26例 (81%), 過形成が5例 (16%), 癌が1例 (3%) であった. 全例, 初回手術であったが. 術前画像診断としては, 超音波の成績が最も良く, 単腺腫大例の正診率は88%であった. しかし多腺腫大例では, 正診率は20%に低下した. 骨型以外の症例においても, 骨塩量の測定 (22例) にて, 有意な低下を示す症例が8例 (36%) 存在した. これらの骨変化は術後早期に改善し, 尿路結石の再発も認められなかった. 悪性腫瘍の合併は9例に認められ, その内訳は甲状腺癌が6例 (19%), 腎癌, 膀胱癌, および卵巣癌が各1例ずつであった. 合併症のうち, 術後, 消化器症状 (潰瘍9例, 膵炎1例) および高血圧 (9例) の改善は認められたが, 腎機能障害 (4例) の改善は認められなかった. 尿路結石の成因の危険因子の1つに, 高カルシウム尿症が認められた.
  • 松浦 治, 竹内 宣久, 服部 良平, 橋本 純一, 大島 伸一, 田中 国晃, 三宅 弘治
    1990 年 81 巻 2 号 p. 236-242
    発行日: 1990年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    社会保険中京病院において, 尿路結石及び胆石治療用として開発された体外衝撃波結石破砕装置の Dornier 社製MPL-9000を導入し, 尿路結石治療の経験を得た. 本装置の特徴としてHM-3と異なる点は, 第1に水槽の代わりに water cushion を使用していること, 第2に結石探査に超音波を使用していること, 第3に無麻酔下で治療が行える点である.
    1988年6月より1988年11月までに, 35症例の尿路結石症 (腎結石30例, 尿管結石4例, 腎・尿管結石1例)に対し, MPL-9000によるESWL治療を施行した. 治療対象結石数は64結石で, 腎杯48結石 (75%), 腎盂11結石 (17%), 尿管5結石 (8%) であった. 24症例が1回のESWL治療で, 11症例が2回, 3回のESWL治療を必要とした. 衝撃波数は1回の治療につき1,337回から3,050回, 平均2,403回で, 電圧は15~18kvで施行した. 20回 (42%) の治療が鎮痛剤を必要とせず, 28回 (58%) の治療で pentazocine を使用した. 5mm以下の破砕効果を成功とすると, 64結石中56結石 (88%) で満足のいく結果を得た. 結石の完全消失は1ヵ月で34例中16例47.1%, 3ヵ月で29例中18例62.1%であった. 副作用として, 4例に不整脈, 1例に腎被膜下血腫を認めた.
    以上よりMPL-9000は無麻酔及び鎮痛剤のみで治療が可能であり, 腎内, 上部尿管及び下部尿管の尿路結石症に対し, 有効なESWL装置と考えられた.
  • 安藤 正夫
    1990 年 81 巻 2 号 p. 243-250
    発行日: 1990年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    頚髄圧迫疾患に合併する神経因性膀胱 (以下NB) の有無を検索し, 頚椎手術の排尿動態に及ぼす近接効果を検討した.
    対象は頚椎後縦靱帯骨化症32例, 変形性頚椎症14例, 頚椎柱間板ヘルニア14例, 頚部脊柱管狭窄症2例の計62例で, 男子46例, 女子16例, 年齢は39~73 (平均57) 歳である. 62例中術前のNB合併例は22例 (35%) であった. NB合併22例の膀胱内圧測定 (以下CM) では, overactive 10例 (45%), underactive 6例 (27%) であり, 括約筋筋電図21例のうち14例 (67%) が overactive を呈していた. 下肢・会陰部知覚障害のある例, 下肢病的反射陽性例, 下肢運動機能障害の強い例にNBが高率に合併していたことより, 慢性的頚髄圧迫により錐体路 (後側索部) および脊髄視床路 (前側索部) に障害が及んでくると膀胱・尿道機能障害が合併してくるものと推察された. また, 下肢深部知覚障害が強い例にCMで under active type を示す例が多いことより, 圧迫が高度となり後索部にも障害が及ぶと膀胱固有知覚障害により underactive type の膀胱を呈する可能性が示唆された.
    頚椎手術施行17例のNB合併例中, 11例に術後1.1~2.3 (平均1.6) ヵ月の時点で尿流動態検査を行ったが, 排尿動態の改善する例が多かった. ただ, 術前数年来にわたり排尿障害を認めた1例や神経症状の改善が十分に得られなかった1例では, 排尿動態の改善は不良であった.
  • 宮永 直人, 阿弥 良浩, 大谷 幹伸, 小磯 謙吉, 辻 比呂志, 有本 卓郎, 辻井 博彦, 稲田 哲雄, 北川 俊夫
    1990 年 81 巻 2 号 p. 251-257
    発行日: 1990年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    陽子線 (proton) はX線 (photon) と比較して, 病巣に集中する線量分布を形成しうることに特徴がある. 当科では, 1985年6月から1989年3月までに筑波大学粒子線医科学センターにおいて, 泌尿器癌に対し陽子線照射を行なった. 内訳は腎癌4例, 前立腺癌5例, 膀胱癌6例の計15例である. 効果判定は照射後3ヵ月または6ヵ月で行ない, 腎癌は全例が不変 (NC), 前立腺癌は有効 (PR) 2例, 不変 (NC) 3例, 膀胱癌は著効 (CR) 3例, 有効 (PR) 2例, 不変 (NC) 1例であった. 局所コントロールは全例で良好であったが, 前立腺癌1例と膀胱癌3例が転移のために死亡した. また, 放射線性膀胱炎などの副作用も少なくなかった.
    陽子線照射は線量分布を生かすことによって高線量の照射が可能であり, 将来的にはX線照射に変わるものとして期待される. しかし現段階ではその特徴が充分に生かされておらず, より一層の改良が望まれる. また, 症例によっては全身療法との併用が必要と思われた.
  • 宗像 昭夫, 木下 健二, 前田 義治
    1990 年 81 巻 2 号 p. 258-261
    発行日: 1990年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1975年4月から1985年12月まで前立腺被膜下摘除を施行した244例に対し step section にて標本を作製し, 偶発癌を日本泌尿器科学会前立腺癌取扱い規約に従い病理組織学的に検討した. 分化度, 臨床病期, 癌巣の大きさ, 辺縁までの距離を検討した. 35例 (14.3%) に偶発癌が発見され加齢と共に増加した. A121例, A214例であった. 4例がびまん性増殖を示した. 孤立性癌巣は40ヵ所で, 高・中・低分化腺癌がそれぞれ33, 3, 4ヵ所に認められ, 大きさは80%が最大径5mm以下であり, 癌巣中心部より外科的切除断端迄の距離は90%が3.5mm以内であった. 複数の病巣を持つ症例が, 7例に認められた. 癌の被膜下近傍よりの発生と多中心発生を支持する所見であった.
  • 中川 修一, 中尾 昌宏, 大西 克実, 斎藤 雅人, 大江 宏, 渡辺 泱, 喜多 正和, 岸田 綱太郎
    1990 年 81 巻 2 号 p. 262-267
    発行日: 1990年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    全血を用いたIFN産生能測定法を用いて, 47例の前立腺癌患者のα型IFN産生能を測定した. 前立腺癌患者のα型IFN産生能 (平均3,657IU/ml) は, 50歳以上の男子健常者のそれ (平均4,988IU/ml) と比較して有意に (p<0.005) 低下していた.
    Stage とIFN産生能との関係は, Stage D の患者のα型IFN産生能は, Stage A, BおよびCの患者のそれと比較して低下していた. Grade については, 組織型が未分化になるにつれα型IFN産生能は低下する傾向がみられた. また一般に, IFN産生能が低下している症例では予後不良であり, stage, grade をそろえた症例に限っても, 同様の結果が得られた. α型IFN産生能は, 前立腺癌患者の予後を決定する因子のひとつなのではないかと考えられた.
  • 三次元モルフォメトリーを用いた検討
    金藤 博行, 折笠 精一, 高橋 徹
    1990 年 81 巻 2 号 p. 268-274
    発行日: 1990年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    先天性水腎症の腎盂尿管移行部における尿管筋層の構造について検討した. 2歳から58歳の手術材料 (12例) から標本を採取し, 尿管を縦方向に切開して伸展固定後, 壁に平行な方向で連続切片を作製した. 三次元モルフォメトリーの方法を導入して, 筋層の三次元画像再構成および筋束のベクトル表現を行った. その結果, 先天性水腎症の筋層には正常例には見られない構造異常があり, 12例中4例に平滑筋の減少と間質結合組織の増加などの量的な異常, 8例に縦走成分主体, 輪走成分主体, 不規則な配列などの方向性の異常が見出された. これらの所見より, 腎盂尿管移行部における構築面での成熟障害, 通過障害との関連が示唆される.
  • I. 腎における核酸代謝, 蛋白代謝に対する影響を中心に
    斉藤 真介, 石川 博通, 大谷 幹伸, 河合 弘二, 宮永 直人, 小磯 謙吉
    1990 年 81 巻 2 号 p. 275-281
    発行日: 1990年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    抗菌性抗生物質の腎毒性を調べるため, ウイスター系ラット腎を用いその蛋白代謝, 核酸代謝に及ぼす影響を検討した. 研究に用いた抗菌性抗生物質は, アミノ配糖体 (ストレプトマイシン, カナマイシン, ゲンタマイシン), テトラサイクリソ系 (ドキシ・テトラサイクリン), クロラムフェニコール系, セフェム系 (セファロシン, セファロリジン, セブテゾール, ラタモキセブ) である.
    ウィスター系成熟ラットに各種抗菌性抗生物質を5日投与した後, 核酸前駆物質C14-6-オロチン酸, 蛋白前駆物質C14-1-ロイシンを投与, 60分後にリボゾーム (ポリゾーム) を分離し, その転入率を検討した.
    一方正常ウィスター系ラット腎より, リボゾームを分離し in vitro での蛋白合成系を再構成した上で, 各種抗生物質 (10μg/ml) 及びC14-1-ロイシソを加えて60分培養後その転入率をみた.
    核酸代謝 (in vivo) 及び蛋白代謝 (in vivo, in vitro) ともにリボソームの代謝レベルでアミノ配糖体により障害をうけた.
    このことよりアミノ配糖体は核酸代謝, 蛋白代謝に障害を与えることにより, 腎障害を惹起する可能性のあることが示唆された.
  • II. 腎におけるリソゾーム膜に対する影響を中心に
    斉藤 真介, 石川 博通, 大谷 幹伸, 河合 弘二, 宮永 直人, 小磯 謙吉
    1990 年 81 巻 2 号 p. 282-288
    発行日: 1990年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    抗菌性抗生物質の腎毒性を調べるためウィスター系ラットを用い, 腎リソゾーム膜を指標としてその安定性について種々の条件下で検討した.
    ウィスター系成熟ラットに各種抗菌性抗生物質を5日投与した後,腎における酸性フォスファターゼを指標としてリソゾーム膜安定性を検討した. また腎阻血及びリソゾーム膜安定剤 (コーチゾール) についてもその影響を観察した.
    一方ウィスター系ラットの腎リソゾームを分離し in vitro にてこれら抗菌性抗生物質を添加しその膜安定性につき検討した.
    使用した抗生物質は, アミノ配糖体 (ストレプトマイシン, カナマイシン, ゲンタマイシン), テトラサイクリン (ドキシテトラサイクリン), クロラムフェニコール, セフェム系 (セファロシン, セファロリヂン, セフテゾール, ラタモキセフ) である. その結果, アミノ配糖体はリソゾーム膜の安定性を in vivo, in vitro ともに障害することが明らかになった. それ以外の抗生物質は殆んど影響を与えなかった.
    次に腎動脈60分間阻血後これら抗生物質を5日間投与し, 腎毒性の変化を追求した. その結果はアミノ配糖体にリソゾーム膜安定性を障害する作用があることが判明した.
    従って腎リソゾーム膜安定性を維持する薬剤としてコーチゾールにつき検討した. 抗菌性抗生物質投与前, 投与中 (併用), 投与後に分けて, コーチゾールの作用をみたが, 同時併用がリソゾーム膜安定性に最も効果のあることが判った.
  • 佐藤 信, 福士 泰夫, 大山 力, 斎藤 誠一, 折笠 精一, 栃木 達夫, 菅原 邦夫, 益子 高, 橋本 嘉幸
    1990 年 81 巻 2 号 p. 289-295
    発行日: 1990年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    前立腺癌, 前立腺肥大症組織より, クロロホルムーメタノール系, イソプロパノールーヘキサンー水系を用いて糖腹質分画を抽出した. 抽出した糖脂質を Folch 分配法により upper lower 成分に分け, そのおのおのを酸処理したサルモネラミネソタと conjugate, BALB/cマウスの皮下と腹腔内に, 最後に尾静脈に注射して免疫した. このマウス脾細胞とマウスミエローマP3×63を細胞融合することにより, 前立腺上皮の糖鎖抗原と特異的に反応するモノクローナル抗体APG1が得られた. APG1 (IgG3) は種々のヒト組織を用いた免疫組織学的検討から,前立腺組織に組織特異性を有することが確認された.
    また, 前立腺肥大症組織の酵素処理及び酸処理後の染色, さらに前立腺組織から抽出した糖脂質を用いた TLC-immunostaining の結果より, APG1はシアル酸を含む糖鎖構造を認識することが示唆された.
  • 藤岡 知昭, 工藤 卓次, 石倉 功一, 白石 正彦, 丹治 進, 岡本 知士, 鈴木 薫, 小池 博之, 熊谷 幸三, 大堀 勉, 久保 ...
    1990 年 81 巻 2 号 p. 296-303
    発行日: 1990年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    転移巣を有する進行性腎細胞癌14症例に対し遺伝子組かえインターロイキン2 (rIL-2: S-6820) の全身投与を施行し, その免疫能の変動と輸血の関係とともに治療効果を検討した. PR 1例, NC 10例およびPD 3例であり, 奏功率は, 全体で7.1%であった. この症例を, 肺転移例に限ると12.5%あり, また1年以内に輸血の既往を有しない症例に限ると14.3%と奏功率の向上が認められた. なお副作用は精神症状の1例を除き重篤なものはなかった. rIL-2投与中, NK活性の変動は, 輸血の既往による影響を受けなかったが, LAK活性は輸血群で有意に抑制された. 末梢血リンパ球およびサブセットの有意な変動を認めなかった. 輸血の原因となった貧血および根治的腎摘除の既往は, NKおよびLAK活性に影響を与えなかった. よって輸血により免疫能の抑制されることが示唆されるが, rIL-2治療効果発現を阻害するとは断定できなかった.
  • 山中 望, 今井 敏夫, 藤沢 正人, 守殿 貞夫
    1990 年 81 巻 2 号 p. 304-307
    発行日: 1990年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    腎血管筋脂肪腫は結節性硬化症の腎合併病変として知られているが, 腎血管筋脂肪腫と腎細胞癌を合併した症例はきわめて稀である. 結節性硬化症に合併した両側腎血管筋脂肪腫と右腎細胞癌の1例を報告するとともに, 主に鑑別診断について文献的考察を加えた.
  • 源吉 顕治, 岡田 弘, 中西 建夫, 荒川 創一, 松本 修, 守殿 貞夫, 山中 望, 石神 襄次, 羽間 稔
    1990 年 81 巻 2 号 p. 308-311
    発行日: 1990年
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    近年, 出血性疾患の病態解明・治療が進歩し, 出血性素因患者に対する外科治療が可能になってきた. 1979年以来10年間に, 神戸大学医学部泌尿器科において, 泌尿器科学的手術を要する3例の出血性素因症例を経験したので報告する.
    血友病Aと膀胱腫瘍の合併例では, TUR-BTの直前に第VIII因子濃縮製剤2,500単位投与, 術後7日間に8~12時間間隔で1,000単位ずつ投与することにより出血のコントロールは良好であった. von Willebrand 病と膀胱腫瘍の合併例では, 従来の第VIII因子濃縮製剤ではコントロール困難で, 近年出現したvW因子の multimer 構造の比較的保たれた製剤が有効であると思われた. ITPと前立腺肥大症の合併例では, 手術前6日目よりγ-グロブリン大量療法 (400mg/kg) を施行することにより血小板数は正常範囲まで増加し, 異常出血なく手術が可能であった.
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