日本泌尿器科学会雑誌
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99 巻, 4 号
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  • 木村 元彦, 笹川 亨
    2008 年 99 巻 4 号 p. 571-577
    発行日: 2008/05/20
    公開日: 2011/01/04
    ジャーナル フリー
    (目的) ESWLによる尿路結石治療において, 患者の年齢が完全排石率に与える影響を解析する.
    (対象と方法) Siemens Lithostar Multiline で治療を行った腎結石138例と尿管結石463例を対象とした. 患者の年齢とその他 (部位, 長径, 左右, 性, 水腎症の程度, 診断時の疼痛の有無, 結石の既往) が, 3ヵ月後の完全排石に対する予後因子となりうるかを多重ロジスティック回帰分析にて検討した.
    (結果) 全体の完全排石率は77.2%であった. 39歳以下, 40~49歳, 50~59歳, 60~69歳, 70歳以上の完全排石率はそれぞれ87.4%, 84.4%, 75.0%, 71.1%, 66.3%であった. しかし高齢者では診断時の疼痛に乏しい例が多く, 水腎症が多かった. そこで, 多重ロジスティック解析を行うと, 部位 (中部・下部尿管), 長径 (小さい), 水腎症 (軽度以下), 発症時の症状 (疼痛あり) に加え, 年齢 (若い) も,上部尿路結石のESWL治療における独立した (より良い) 予後因子と判明した. また高齢ほど治療時に鎮痛剤を要しなかった.
    (結論) 加齢とともに, ESWLによる完全排石率は低下した. しかし高齢者では治療時の鎮痛剤の必要頻度が低いため, ESWLは高齢者の尿路結石治療として簡便で一定の有用性があるものと考えられた.
  • 堀 淳一, 山口 聡, 渡邊 成樹, 小山内 裕昭, 北瀬 卓也, 米村 克彦, 垣内 時子, 杵渕 貴洋
    2008 年 99 巻 4 号 p. 578-583
    発行日: 2008/05/20
    公開日: 2011/01/04
    ジャーナル フリー
    (目的) 重症尿路感染症には, 時に敗血症に至る症例があり, 感染源のドレナージに加えて全身性炎症反応症候群に対応した処置が必要である. その一つの治療手段として, エンドトキシン吸着療法を中心とした血液浄化療法が有用とされており, 本法を適用した症例について検討した.
    (対象と方法) 当院において, 過去6年間に敗血症の診断でエンドトキシン吸着療法を施行した症例は22例であった. そのうち, 尿路感染症を原疾患とする6例を対象とした.
    (結果) 患者は男性4例, 女性2例, 原疾患は腎盂腎炎5例 (1例で前立腺炎を合併), 膿腎症1例であった. 尿路ドレナージは, 尿管ステント留置3例, 腎瘻造設1例, 膀胱瘻1例であり, 1例に持続的血液濾過透析を併用した. 血中エンドトキシン値は平均3.2pg/mlであり, エンドトキシン吸着療法後全ての症例で基準値以下となった. 起炎菌として同定しえたものは, 大腸菌4例, 肺炎桿菌1例であった.
    (結論) 全例において, エンドトキシン吸着療法により循環動態が安定化し, DIC管理や抗菌薬の併用などにより救命しえた. エンドトキシン吸着療法は尿路感染症から敗血症に至った症例において, 早期に考慮すべき治療手段と考えられた.
  • 伊藤 敬一, 水口 靖規, 佐藤 全伯, 黒田 健司, 堀口 明男, 木村 文宏, 住友 誠, 浅野 友彦, 早川 正道
    2008 年 99 巻 4 号 p. 584-592
    発行日: 2008/05/20
    公開日: 2011/01/04
    ジャーナル フリー
    (目的) 腎癌副腎転移症例の臨床的特徴と予後について検討した.
    (対象と方法) 根治的腎摘除術を行った症例中, 副腎転移を認めた18症例 (同側性13例) について検討した. 同側副腎転移症例と Controll 群の臨床病理学的因子を比較した. 疾患特異的生存率を検討した.
    (結果) 同側副腎転移症例の原発巣は control群と比較し, 有意に5.5cm超の腫瘍上極の腫瘍, pT3以上, リンパ節転移や同側副腎外の遠隔転移を認める症例が多く, grade 3や微小血管侵襲を認める症例が多かった (p<0.05). この結果から, 大きい腫瘍 (特に55cm超), 上極の腫瘍, T3症例 (特に腫瘍塞栓症例), リンパ節転移や遠隔転移の存在などが術前に判断できる同側副腎転移の risk factor の候補と考えられた. 769%の同側副腎転移がCTで診断され, 副腎切除の適応を決める際の画像所見の重要性は大きいと考えられた. またCTで診断できなかった微小副腎転移3症例の予後は不良であった. 孤立性副腎転移症例は他臓器転移を有する症例に比較し予後が良い傾向にあった. 副腎転移出現後2年以上生存した4症例中3例が孤立性転移症例であった.
    (結語) 1施設の加検討から, 画像所見, 腫瘍径, 腫瘍の位置, Tstage, リンパ節と遠隔転移の有無が同側性副腎切除の適応の決定に重要な因子である可能性が示唆された. また孤立性副腎転移は切除により予後の改善が期待できる.
  • 三浦 徳宣, 沼田 幸作, 白戸 玲臣, 橋根 勝義, 住吉 義光, 小田 剛士, 飯尾 昭三
    2008 年 99 巻 4 号 p. 593-596
    発行日: 2008/05/20
    公開日: 2011/01/04
    ジャーナル フリー
    75歳男性. 前立腺生検にて前立腺癌と診断され, 治療目的にて当院紹介受診した. 当院病理医による生検組織の再検では, 前立腺導管内の尿路上皮癌と診断された. さらに膀胱ランダム生検では, 前立腺部尿道からのみ尿路上皮癌を認めた. 以上から前立腺原発尿路上皮癌 (cTis pd cN0 M0) と診断し, 膀胱前立腺尿道全摘除術+回腸導管造設術を施行した. 病理学的所見では, 前立腺導管内を, 尿路上皮癌が前立腺部尿道, 前立腺, 精嚢まで進展していたが, 前立腺間質への浸潤は見られなかった. 病理学的病期はpTis pd pN0 M0であった. 術後アジュバント治療は行っていないが, 再発兆候は認めていない.
  • 金子 智之, 小串 哲生, 朝蔭 裕之, 北村 唯一
    2008 年 99 巻 4 号 p. 597-600
    発行日: 2008/05/20
    公開日: 2011/01/04
    ジャーナル フリー
    症例は59歳, 女性. 肺炎にて入院中にCTにて左腎腫瘍を指摘された. CT, MRIにて左腎背側に径1.5cmの造影効果を伴う腫瘍を認めた. 左腎細胞癌が疑われ, 左腎部分切除術を施行した. 病理組織検査にて, 硝子血管型の Castleman 病と診断された. 腎臓に限局した Castleman 病は稀であるが, 腎腫瘍の鑑別診断として考慮すべき疾患のひとつと考えられた.
  • 福本 亮, 今西 治, 常森 寛行, 日向 信之, 大場 健史, 結縁 敬治, 山中 望
    2008 年 99 巻 4 号 p. 601-605
    発行日: 2008/05/20
    公開日: 2011/01/04
    ジャーナル フリー
    68歳, 女性. 2002年9月他院にてIUD抜去時の子宮穿孔のため腹腔鏡下膣式子宮摘出術施行. 2003年3月より下腹部痛, 尿失禁を自覚し, 膀胱膣瘻と診断され当科紹介. 瘻孔は径3cm以上で三角部から尿道まで波及し, 右水腎症を合併していた. 瘻孔及び周囲の炎症により切除範囲が非常に広く, 瘻孔が閉鎖されたとしても十分な膀胱容量が得られないことから膀胱亜全摘し, 回腸を利用して膀胱および右尿管を再建した. 術後経過は良好で, 軽度の尿失禁を認めるものの自排尿可能で, 良好なQOLが獲得された.
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