日本泌尿器科学会雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
ISSN-L : 0021-5287
81 巻, 9 号
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  • 片山 喬
    1990 年 81 巻 9 号 p. 1287-1301
    発行日: 1990/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
  • 中川 修一
    1990 年 81 巻 9 号 p. 1302-1308
    発行日: 1990/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    ラット膀胱からのADMの吸収と消失について, 蛍光顕微鏡を用いて組織学的に検討した. In vitro の吸収実験において, ADMは注入後15分以内に粘膜固有層から筋層の浅層にかけて浸透するものの, その後時間が経過してもそれ以上深くは浸透しないことがわかった. さらに, 粘膜固有層に存在する血管の上皮にADMが取り込まれることが蛍光顕微鏡にて観察された. このことはADMが血液循環に乗って全身に広がっていることを示唆していた. 以上の結果は in vivo の吸収実験においてもほぼ同様であった. 一方, いったん膀胱壁に吸収されたADMは粘膜固有層や筋層の浅層から消えはじめ, ADM排除後60分では粘膜のみに限局していた. その後時間が経つにつれてADMの蛍光は徐々に減少し, 48時間後には全く認められなくなった. また, BBN誘発ラット膀胱腫瘍を用いた吸収実験では, ADM注入後5分以内に乳頭状腫瘍の上皮全層に取り込まれていた.
    本法は, 正常膀胱および膀胱腫瘍におけるADMの浸透を組織学的に検討するのに適していた. 今後, その手技が単純かつ無侵襲であることから臨床例への応用も可能であり, 理想的な膀胱注入療法を開発する上で有用な手段になるであろうと思われた.
  • 今井 強一, 鈴木 孝憲, 小林 幹男, 高橋 修, 中田 誠司, 松尾 康滋, 土屋 清隆, 山中 英寿, 登丸 行雄, 三木 正也
    1990 年 81 巻 9 号 p. 1309-1316
    発行日: 1990/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    予後因子研究の重要性は各症例の予後予測といった意味のみならず, 治療法等における比較評価時にも有用な情報を提供する.
    前立腺癌353症例において, 年齢・歩行障害・赤血球沈降速度 (ESR)・酸性ホスファターゼ・病期・病理学的分化度の6因子からなる予後因子研究を行った. 検討法は全症例・死因別・病期別に対象を分け, 多変量解析数量化1・2類を用いて施行した.
    年齢・歩行障害といった全身状態を表す因子は全症例・非癌死・病期A, B, Cを対象とした時その重要度は高かった. 癌死例対象では病期が, また病期D症例対象においてはESRの重要度が高かった.
    ESRは病期Dにおいて観察年数3年目よりその重要度が高かった.
  • 篠原 充, 山本 理哉, 杉本 雅幸, 木下 健二, 田中 良明, 松田 忠義
    1990 年 81 巻 9 号 p. 1317-1321
    発行日: 1990/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    7例の高齢者膀胱癌患者 (79~88歳) に対して術中照射を行った. 膀胱鏡所見は全例, 無茎あるいは広基性の径2cm以上の腫瘍であり術前診断はすべてT2以上であった. 一般的に考えて, 膀胱全摘術の適応であったが年齢および合併症のため根治的治療は不可能と判断したため, 腫瘍切除と同所再発の予防を主目的に術中照射を行った. 全手術時間はおよそ2時間程度で, 出血も少なく合併症も認められなかった. この治療法は合併症のある高齢者にとっても侵襲は少ない手術と考えられた. 病理学的術後診断では, 5例は術前診断に一致したが2例はT1であった. 術後, 5例が死亡したが, そのうち4例は術後1年11ヵ月以降であり全例膀胱癌以外の原因で死亡した. 再発による再入院は1例のみであった.
    以上の結果は, 膀胱癌の存在による症状軽減を目的とした局所のコントロールとしては充分な効果があり, さらにある程度は根治的であると思われた. また再発予防効果もあると考えられた. 今後, 高齢者の患者増加が予想されるに当たり, 従来の根治的手術が不可能な症例に対する治療選択の一つとなると考える.
  • 安藤 正夫, 永松 秀樹, 谷沢 晶子, 大島 博幸, 四宮 謙一, 松岡 正, 水尾 敏之, 牛山 武久
    1990 年 81 巻 9 号 p. 1322-1329
    発行日: 1990/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    腰椎疾患について, 術前の神経因性膀胱合併の有無, 腰椎手術による早期および比較的長期に亙る排尿動態の変化を検討した.
    対象は腰椎間椎板ヘルニア66例, 腰部脊柱管狭窄症19例, 腰椎分離・辷り症21例, 腰部変形性脊椎症5例, 腰部黄色靱帯骨化症3例の計114例で, 男子88例, 女子26例, 年齢は17~73 (平均47) 歳である. 器質的下部尿路通過障害は身体所見およびレ線検査にて除外した.
    術前に神経因性膀胱合併と診断したのは114例中23例 (20%) であり, 膀胱内圧測定 (CM) を施行した22例では underactive type が8例 (36%) と最も多く, overactive type 5例 (23%), type の判別が困難な症例が7例 (32%) あった. 外括約筋筋電図は20例に行い, 15例 (75%) が overactive sphincter を呈していた. なお泌尿器科的自覚症状を訴えないのは9例 (39%) であった. 下肢腱反射の異常, 球海綿体反射の低下, 会陰部知覚障害のある症例に神経因性膀胱合併頻度が若干高かったが, 有意差は認めなかった.
    神経因性膀胱合併23例のうち18例に腰椎手術を施行し, そのうち15例に術後も尿流動態検査を行った. 過半数の症例では術後3ヵ月以内に尿流測定が改善し, 術後6ヵ月以降に検索し得た7例中4例でCMが正常化した. しかし, 術前にCMで overactive type を呈した3例中2例では, 術後6ヵ月以降でも overactive type のままであり, そのうちの1例は術後に無症候性脳梗塞の合併が確認された.
  • 上田 公介, 阪上 洋, 加藤 文英, 最上 徹, 大田黒 和生, 増井 靖彦
    1990 年 81 巻 9 号 p. 1330-1336
    発行日: 1990/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    12例の浸潤性膀胱癌に対して8MHz-RF波による電磁波温熱療法をおこない, その有用性について検討した. 対象症例の治療前の stage は, T2が5例, T3が3例, T4が2例, 膀胱全摘後の再発例が2例であった. 既治療として4例が radiation を, その他の症例ではTUR, 全身化学療法, 膀胱内注入療法などを受けていた. 病理組織型は, TCC grade 2が6例, grade 3が4例, grade 3とSCCの混在型が2例であった. 合併症は4例にみられ, 3例が心疾患, 1例が脳血管障害を有していた. 温熱療法は Thermotron RF-8を用い, 1例に対して2回から10回加温した. 併用療法としては5例に HPC-adriamycin の膀胱内注入療法を, 3例に免疫療法を, 4例には radiation などを行った. その結果, これらの治療効果はCRが4例, PRが5例, MRは2例であり, PDは1例であった. CRのえられた4例中, 3例はT2であり, いずれも温熱療法の前に radiation を受けていた. このことから温熱療法の前に radiation を行っておくことは有意義であると考えられた. また温熱療法の副作用は6例に腹壁の皮下硬結を認めたが, 重篤なものはみられず, 温熱療法は膀胱癌の治療として有用と考えられた.
  • 後藤 章暢, 前田 盛, 武中 篤, 堀尾 光三, 郷司 和男, 守殿 貞夫
    1990 年 81 巻 9 号 p. 1337-1342
    発行日: 1990/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    活性炭は, リンパ節への移行性が極めて高く, また局所滞留性, 吸着薬剤の徐放性等の特性を有しており, 癌化学療法の一手段として用いられている. そこで我々はまだ検討されていない活性炭吸着シスプラチン (以下CDDP-CH) を作成し, その特性およびヒト膀胱癌培養株細胞に対する抗腫瘍効果を検討した. 方法は, CDDP溶液 (ランダ注®) と種々の濃度の活性炭 (Norit®) をそれぞれ混合し, 原子吸光法および高速液体クロマトグラフィー法にて吸着および脱離に関する検討を行った. 次にヒト膀胱癌培養株細胞 (KU-1, HTB9) を用い, MTT-assay および二層軟寒天コロニー形成法によりCDDP単剤とCDDP-CHの抗腫瘍効果を比較検討した. その結果, 活性炭使用量に比例してCDDP総吸着量は増加し, CDDP-CHからのCDDPの脱離は緩やかで, 徐放性抗癌剤の特性を有するCDDP-CHが得られた. またCDDP-CHによりヒト膀胱癌培養株細胞の増殖抑制が認められた. CDDP-CHは, 活性炭がリンパ節へ移行しやすいことから, 悪性腫瘍リンパ節転移症例に臨床応用が可能と考えられた.
  • 塚本 泰司, 熊本 悦明, 舛森 直哉, 宮尾 則臣, 矢谷 隆一, 丹田 均, 中嶋 久雄, 高塚 慶次, 高橋 敦, 丸田 浩, 岩沢 ...
    1990 年 81 巻 9 号 p. 1343-1350
    発行日: 1990/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    過去10年間に関連施設で治療を受けた偶発癌157例の検討を行った.
    前立腺肥大症の診断で被膜下前立腺剔除あるいは経尿道的切除を行った5,212例のうち, 偶発癌は157例 (3.0%) に認められた. この頻度はこれまでの報告と比較するとやや低かった. このうちstage A1は30例, A2は127例に認められた.
    組織学的分化度では高分化癌, 中分化癌, 低分化癌がそれぞれ44.6%, 36.9%, 18.5%に認められたが, 低分化癌の割合がやや高い傾向があった. この組織学的分化度は特にTUR-P症例において癌陽性チップ数の割合と明らかな関係を有していた.
    偶発癌組織における atypical hyperplasia, intraductal dysplasia の出現頻度はそれぞれ36.9%, 85.3%であった. Atypical hyperplasia, intraductal dysplasia とも低分化型になる程, また癌病変の拡がる程その出現頻度が低下した. このようないわゆる atypical hyperplasia, intraductaldysplasia と偶発癌の発生病理に関し, 今後の検討が必要であろう.
    臨床癌への進展は157例中6例に認められた. いずれも stage A2の症例であり, 1例以外は中ないし低分化癌の症例であった.
    Stage A2の症例に対しては, 内分泌療法のみならず, staging lymphadenectomy で骨盤リンパ節に転移のない場合には根治的前立腺剔除, 放射線療法を治療の一つとして考慮すべきであろう.
  • 特に超音波断層法下に測定した後部尿道膀胱角による吊り上げ張力の設定について
    山田 拓己, 蔵 尚樹, 川上 理, 渡辺 徹, 根岸 壮治, 水尾 敏之
    1990 年 81 巻 9 号 p. 1351-1356
    発行日: 1990/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    10例の腹圧性尿失禁症例に, 超音波断層下に観察した後部尿道膀胱角を吊り上げ度の指標にし, Polytetrafluoroethyrene 製の人工血管を用いた Suburethral sling 法を行なった. 10症例のうち, 後部尿道膀胱角を90~110°に設定した9症例で尿失禁の完全な消失が得られた. 術後の自覚的な排尿困難は全例でみられず, 術後に尿流量測定を施行した7例でみても, peak How rate の低下は, ほとんどみられなかった. 吊り上げ張力と後部尿道膀胱角の関係をみると, 吊り上げ張力の増加に伴って, 後部尿道膀胱角の減少がみられたが, 正常な後部尿道膀胱角を得る吊り上げ張力は症例によって差がみられた. 腹圧性尿失禁に対する膀胱吊り上げ術は, 後部尿道膀胱角の矯正を目的のひとつとするので, 後部尿道膀胱角を吊り上げ度の指標とする方がより正確で合理的であると思われた.
  • 瀬口 利信, 岩崎 明, 菅尾 英木, 中野 悦次, 園田 孝夫
    1990 年 81 巻 9 号 p. 1357-1361
    発行日: 1990/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    当院でPVB療法を初期治療として行った20例の進行性精巣腫瘍について検討した. PVB療法によりCRは9例 (45%), PRは3例 (15%), MRは3例, NCは3例, PDは2例であった. 3剤 (cisplatin, vinblastine, bleomycin) の実際の投薬量を, 始めの3コースについて計算したところ, 有効群 (CR+PR, n=12) と非有効群 (MR+NC+PD, n=8) との間でほとんど差が無かった. また各コースの間隔については, 予想に反して有効群の方が非有効群より長かった (p<0.02). 次に幾つかの臨床因子による予後を検討した. 5年生存率 (Kaplan-Meier) は, stage IIでは100% (n=6), stage IIIでは68.6% (n=14), また巨大転移 (-) 例では90% (n=10), 巨大転移 (+) 例では58.3% (n=10) であった. 絨毛癌成分を含む5例の2年生存率は40%で, 他の組織型 (15例) のそれ (86.8%) に較べ有意に悪かった (p<0.05). 以上の結果から, PVB療法は絨毛癌成分や巨大転移巣を伴う症例に対しては, 十分な治療でない事が示唆された.
  • 吉村 一宏, 友岡 義夫, 前田 修, 細木 茂, 木内 利明, 黒田 昌男, 三木 恒治, 宇佐美 道之, 中村 麻瑳男, 古武 敏彦
    1990 年 81 巻 9 号 p. 1362-1366
    発行日: 1990/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1964年4月から1988年12月までの間に大阪府立成人病センター泌尿器科で治療した原発性膀胱移行上皮癌患者795例のうち, 続発性上部尿路癌の発生をみた18例につき臨床統計的検討を加えた. 症例は男性14例, 女性4例, 計18例で全発生頻度は2.3%であり, 年齢は43歳から84歳 (平均65.4歳) であった. 膀胱癌に対する初回治療法は経尿道的腫瘍切除術が13例, 膀胱全摘術が3例, 膀胱部分切除術が2例であった. 膀胱癌初回治療時の組織学的異型度ではG2の症例が多い傾向にあった. 膀胱保存的療法群では膀胱保存的療法中に尿管口付近の腫瘍を切除した症例, 膀胱腔再発を繰り返し長期間膀胱保存的療法を施行している症例に上部尿路癌の発生する傾向が見られた. 膀胱癌の初回治療から上部尿路癌診断までの期間は, 2ヵ月から74ヵ月, 中央値は20ヵ月であった. 上部尿路癌に対する治療法は, 腎尿管全摘術が13例, 腎摘除術が2例, 経尿道的腫瘍切除術が1例, 腎瘻造設術などの姑息的腫瘍切除術が2例であった. 上部尿路癌の組織学的異型度, 深達度では, T2以上の症例が9例と膀胱癌の初回治療時に比べ筋層まで癌が浸潤している症例が多かった. Kaplan-Meier 法による18症例の上部尿路癌治療後の5年生存率は31.7%であった.
  • 鈴木 和雄, 千葉 琢哉, 宇佐美 隆利, 須床 洋, 田島 惇, 河邊 香月, 阿曽 佳郎
    1990 年 81 巻 9 号 p. 1367-1371
    発行日: 1990/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    1989年3月より1989年12月までに126例の149腎・尿管結石に対して, ウルフ社製 Piezolith を用いた無麻酔・外来通院による体外衝撃波結石破砕治療を施行した. ESWL当日の食事制限や鎮痛剤・鎮静剤投与などの前処置は一切行わなかった. 膿尿を認める症例に対しては数日間抗菌剤の予防投与を行った. 衝撃波投与数は超音波断層像により結石破砕の程度をモニターしながら2,000から6,000発投与した. 尿管結石は全て in situ にて破砕した. 2cm以上の結石に対しては数回に分けて破砕を行った. 1週間後に再受診させ, 砕石不十分な場合はさらに数回ESWLを追加した.
    ESWL治療終了直後に排石可能の大きさまで破砕されたものは149件中144件, 96.6%であった. 砕石不能あるいは不十分であった5件のうち, 2件は内視鏡を用いた経尿道的腎・尿管砕石術 (f-TUL) の併用, 1件は硬膜外麻酔下での高出力ESWLにて結石破砕に成功した. 他の2例はf-TUL, ESWLを追加予定である.
    外来治療にて砕石可能であった144件のうち, 治療終了後3ヵ月を経た92例, 96件における完全排石率は, 腎結石67%, 尿管結石96%となり, 全体では80.2%であった.
    重篤な合併症は認められなかった. 超音波断層法による結石の走査はレ線に劣らず有用であった.
    ウルフ社製 Piezolith を用いた尿路結石に対する外来治療ESWLは安全かつ有用と考えられた. また, 腎サンゴ状結石や長期嵌頓結石に対して, f-TULとESWLの併用療法の有用性が示唆された.
  • 後藤 百万, 辻 克和, 長井 辰哉, 加藤 久美子, 近藤 厚生, 三宅 弘治
    1990 年 81 巻 9 号 p. 1372-1378
    発行日: 1990/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    前立腺小腺腫 (腺腫重量15g以下) による outnow obstruction を有する患者22例に対し, 経尿道的前立腺・膀胱頚部切開術 (TIPBn: Transurethral Incision of Prostate and Bladder Neck) あるいは経尿道的前立腺切除術 (TUR-P) を行い, 両術式を比較した. TUR-P群では全例膀胱頚部切開を併用し, 11例に対しTIPBn, 11例にTUR-Pを施行した. 手術前および術後3ヵ月の時点で尿流動態学的所見と自覚症状を評価した. 尿流動態学的所見では尿流量計にもとづいて, パラメーターとして最大排尿率, 平均排尿率, 排尿時間, 排尿開始時間および残尿率を評価した. TIPBn群では全例において, 術後すべてのパラメーターで有意な改善を示した (最大排尿率: 6.1から10.8ml/sec, 平均排尿率: 3.1から5.8ml/sec, 排尿時間: 95.5から24.2sec/100ml, 排尿開始時間: 34.3から10.2sec, 残尿率: 31.6から17.8%, 平均値). 11例中10例で症状の自覚的改善を認めた. 尿流量計の各パラメーターの改善はTUR-P群に比べ有意差を認めず, 排尿時間, 排尿開始時間の改善はTIPBn群でより良好な傾向がみられた. TIPBnは小腺腫による outflowo bstruction において選択すべき術式と考えられた.
  • 片山 孔一, 梅川 徹, 石川 泰章, 児玉 光正, 高村 知諭, 高田 昌彦, 加藤 良成, 片岡 喜代徳, 郡 健二郎, 井口 正典, ...
    1990 年 81 巻 9 号 p. 1379-1383
    発行日: 1990/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    近畿大学医学部泌尿器科開設以来, 14年間に経験した16歳未満の小児尿路結石症32例について検討した. これらは全尿路結石症の0.8%であった. 性別は男児18例, 女児14例で男女比は1.29:1であった. 平均年齢は男児8.7歳, 女児10.4歳であり明らかなピークは認めなかった. 主訴は血尿が最多で15例 (47%) に見られた. 膿尿が見られたものは7例 (22%) であったが, 尿細菌培養が陽性であったものは5例であった. 原因疾患は13例 (41%) で判明したが, 代謝異常は8例 (62%) であった. 結石の部位は29例 (91%) で判明したが, 28例 (98%) が上部尿路結石であった. 手術療法は16症例にたいし17回施行したが, 尿管切石術が5例と最も多く, ついで腎孟形成術が4例であった. 腎摘術は1例であった. また体外衝撃波砕石術 (ESWL) は1例であった. 結石成分は21例 (66%) で判明し, カルシウム含有結石が13例 (57%) と過半数を占めたが, 高カルシウム尿症は認めなかった. 本邦におけるこれまでの報告に比べて, 上部尿路結石, カルシウム含有結石の頻度が高いことが特徴的であった. 治療に関しては今後ESWL症例が増加するものと考えられた. また高カルシウム尿症を診断する上で, 統一的な基準設定が望まれる.
  • 寿美 周平, 福井 厳, 関根 英明, 山田 拓己, 木原 和徳, 野呂 彰, 大島 博幸
    1990 年 81 巻 9 号 p. 1384-1388
    発行日: 1990/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    表在性乳頭状膀胱腫瘍293例の臨床経過を初回治療時の腫瘍数別に分析した. 初回治療法は, TUR179例, 膀胱高位切開による腫瘍切除もしくは膀胱部分切除術100例, 膀胱全摘術8例, 放射線治療4例, 膀胱内注入療法2例であった. 経過観察期間は, 6ヵ月~22年2ヵ月 (中央値4年11ヵ月) であった. 全症例中171例 (58%) が単発性, 122例 (42%) が多発性の腫瘍を有していた. 単発例と多発例の臨床病理所見についてみると, 60歳以上の高齢者の割合およびG2以上の腫瘍の頻度が, 多発例の方に高率であった (p<0.01およびp<0.05). 初回治療として膀胱保存手術を施行した279例中, 膀胱内再発は128例 (46%) に認めたが, 5年累積再発率は単発例では39%, 多発例では68%と, 多発例の方が高率であった (p<0.01). 悪性進展は21例 (上記279例中の8%, 再発例の16%) にみられたが, 多発例の方が単発例より高率であった (p<0.01). 10年実測生存率も単発例の76%に比し多発例は54%と不良であった. 一方, 癌死率は多発例に高かったが有意差はなかった.
    以上より表在性乳頭状膀胱腫瘍における多発例の予後が単発例より不良である背景には, 多発例の方にG2以上の high grade の腫瘍の頻度が高く, 再発率, 悪性進展率も高いという腫瘍側因子に加え, 高齢者が多いという患者側因子も関ちしていろと考元られた.
  • 畠 亮, 馬場 志郎, 斉藤 史郎, 橘 政昭, 出口 修宏, 実川 正道, 田崎 寛
    1990 年 81 巻 9 号 p. 1389-1395
    発行日: 1990/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    腎細胞癌8症例から手術的に摘出した8腫瘍のうち, コラゲナーゼ法による短期培養に成功した7腫瘍から, 130個の分裂中期細胞を抽出してG分染法による染色体分析を行った. 核型は4例が diploid 中心, 2例は hypodiploid, 1例が aneuploid であった. 染色体数の異常でもっとも頻度が高いのは#3染色体で, 7例中5例, うち4例がクローン性異常としてモノソミー, 1例は非クローン性ながらトリソミーを示した. 染色体数の過剰でもっとも多かったのは#7染色体のトリソミーで, 7例中4例に認めた. 手術時すでに転移を有していた症例は2例であるが, いずれも#7染色体のトリソミーを示していた. マーカー染色体は7例中6例に認めた. 染色体の構造異常は数の異常と比べて出現頻度は少なく, クローン性異常は#2と#6染色体の長腕異常 (2q+, 6q+) と#3と#8染色体の短腕異常 (3p-, 8p-) をそれぞれ1例ずつ認めるのみであった. 文献上多いとされる3p-は1例のみで, しかも triploid 細胞で観察したものである. ただし, 2q+と6q+を示す分裂細胞は全て#3染色体のモノソミーを随伴していた. しかも#2, #6染色体の過剰部は#3染色体長腕のバンドパターンによく一致していた. 従って, 3q12~qterが#2, #6染色体へ転座したことに伴い, 3pが欠失したものと考えられる. マーカー染色体の成因にも同様の機序が考えられる. すなわち, 欠失した#3染色体がマーカー染色体に関与している可能性がある.
  • 冨田 京一, 保坂 義雄, 阿曽 佳郎, 赤座 英之, 白井 智之
    1990 年 81 巻 9 号 p. 1396-1403
    発行日: 1990/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    N-Nitroso-N-methylurea (NMU) を用いた前立腺発癌実験を行い前立腺および精嚢腺の組織学的所見とフローサイトメトリー (FCM) 解析結果を比較検討した. 10週齢の Wistar rat を用いてNMU 30mg/kgを2回静脈内投与し, 1群: LH-RH analogue (100μg/kg b. w.) 投与, 2群: testosterone enanthate (10mg/body) 投与, 3群: 無処置, 対照群に分けた. NMU投与後, 34週より1群ではLH-RH analogue, 2群では testosterone enanthate のそれぞれを投与継続群; (+) と投与中止群; (-) に分けた. NMU投与後44週と53週に各群の前立腺, 精嚢腺を摘出し, 組織学的検査およびFCM分析を施行した. 前立腺の組織学的所見では hyperplasia は各群に認められたが2 (+) 群, 2 (-) 群にそれぞれ87.5%と特に多く認められた. Atypical hyperplasia は各群に散見されたが有意差はみられなかった. 51週時, 2 (+) 群の死亡ラット1例に重さ11gの肉眼的な前立腺癌が発生していた. 精嚢腺の組織学的所見では hyperplasia は各群に認められ2 (+) 群, 2 (-) 群では全例に観察された. また, 53週時, 2 (+) 群の2例に atypical hyperplasia が認められ同群の他の1例に肉眼的な精嚢腺癌が発生していた. 前立腺および精嚢腺のFCM解析では各群に aneuploid pattern が観察されたが有意差はなく組織学的所見との相関性は見い出せなかった.
  • 人工肝臓併用術前制癌剤大量動注療法と術前放射線療法を中心に
    郷司 和男, 杉野 雅志, 荒川 創一, 松本 修, 守殿 貞夫, 藤井 昭男, 森下 真一, 中野 康治, 小田 芳経, 濱見 学, 安成 ...
    1990 年 81 巻 9 号 p. 1404-1411
    発行日: 1990/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    浸潤性あるいはTURで切除不能な多発性膀胱癌100例を対象に, 術前補助療法とし全身性副作用を軽減しすみやかに根治的膀胱全剔除術を施行するため活性炭よりなる人工肝臓を併用した術前制癌剤大量動注療法, あるいは照射後すみやかに手術を行うために short course の術前骨盤部放射線照射 (400rad×5days; total 2,000rad) を施行しそれらの有用性を検討した. 5年生存率は, 人工肝臓併用制癌剤動注療法群では69.8%, 他方前治療非施行群および術前放射線照射群では共に48.6%であった. 特にCDDPを用いたものでは77.4%とCDDPを用いないものの58.3%に比べ良好な成績であった. これは, 主にT2の予後が改善されたためで, T3以上の癌でこれら術前補助療法は, 術後の局所および遠隔転移を抑制することができず本症の予後を改善することができなかった. それゆえ, T3以上の癌では, 術前既に存在すると思われる“微小転移巣”を早期に治療し予後を改善するため, M-VAC療法等のCDDPを含む強力な全身術前制癌化学療法施行後, 根治的膀胱全摘除術を行う治療様式が望ましいと思われた.
  • 川村 繁美, 熊坂 康二, 佐久間 芳文, 大日向 充, 久保 隆, 笹生 俊一
    1990 年 81 巻 9 号 p. 1412-1415
    発行日: 1990/09/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は61歳, 男性. 35年前右腎結石にて右腎摘出術. 6年前より左腎結石, 水腎症による腎不全で血液透析療法を施行していた. 3ヵ月前より肉眼的血尿, 残尿感が出現し当科に入院した. 膀胱鏡にて広基性乳頭状腫瘍を認め, 生検では腺癌であった. KUB及びCTscan上, 巨大な左水腎症及びサンゴ状結石を認めた. 膀胱腺癌, 左結石性水腎症と診断し膀胱全摘出術, 術中放射線療法及び左腎瘻造設術を施行した. 組織診では膀胱粘液腺癌であった. 術後17日目に脳出血を併発し死亡した. 剖検により左腎盂, 中部及び下部尿管に腫瘍を認め, 組織診では膀胱と同様, 腺癌であった. 腎盂, 膀胱に同時に腺癌が発見された報告はなく, 自験例は国内外の文献上, 第1例目と考えられる.
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