日本泌尿器科学会雑誌
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91 巻, 12 号
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  • 大内 秀紀, 三賢 訓久, 三好 康秀, 太田 純一, 長田 裕, 上村 博司, 矢尾 正祐, 武田 光正, 野口 純男, 窪田 吉信, 穂 ...
    2000 年 91 巻 12 号 p. 695-699
    発行日: 2000/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 前立腺癌の診断における, PSAのF/T比および free PSA (f-PSA) 値の臨床的有用性について検討した.
    (方法) total PSA (t-PSA) 値が4~20ng/mlの値を示し, 病理組織学的に前立腺肥大症または前立腺癌と診断された129人を対象とした. 血中のt-PSA値とfPSA値, さらにF/T比について調べた.
    (結果) 129人のうち21人に前立腺癌を認め, 108人は前立腺肥大症であった. t-PSA値の平均は, 前立腺癌患者と前立腺肥大症患者との間で有意差を認めなかった. f-PSA値の平均は, 前立腺癌患者で前立腺肥大症患者よりも有意に低く (p=0.043), F/T比の平均値では, 前立腺癌患者で前立腺肥大症患者よりも有意に低かった (p=0.0014). F/T比はほぼ全ての感度においてt-PSA値よりも特異度が高く, F/T比が12%の時の感度, 特異度, 正診率はそれぞれ90.4%, 51.8%, 58.1%であった. Receiver operating characteristic (ROC) curves analysis を用いた検討では, fPSA値はF/T比と同様に有用であった. f-PSA値が0.78ng/mlの時の感度, 特異度, 正診率はそれぞれ61.9%, 66.7%, 65.9%であった.
    (結論) t-PSA値が4~20ng/mlの値を示す患者において, F/T比およびf-PSA値は感度を損なうことなく特異度を改善した.
  • 村本 将俊, 岩村 正嗣, 石井 淳一郎, 馬場 志郎
    2000 年 91 巻 12 号 p. 700-707
    発行日: 2000/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 転移を認めない腎細胞癌患者の術後至適経過観察プロトコールを作成する為に, 腎摘除術を施行した患者における臨床経過を検討した.
    (対象と方法) 1972年3月から1999年7月に至る27年間に北里大学病院泌尿器科で根治的腎摘除術または腎部分切除術を施行された腎細胞癌pT1-3N0(Nx)M0の265例を対象とし, 臨床病理病期と初発再発期間, 転移部位, 再発時症状の有無を検討した.
    (結果) 平均観察期間50ヵ月 (1~244) のうち, 265例中45例 (17%) に術後1~108ヵ月 (平均33.3ヵ月) で再発を認めた. 再発は3年以内に60%, 6年以内に87%が診断された. 再発患者における原発巣の病理病期別再発率, 根治術後の平均再発期間はそれぞれpT1; 9.0%, 43.6ヵ月, pT2; 32.4%, 39.6ヵ月, pT3; 37.2%, 25.0ヵ月であった. 初発再発部位別再発率と平均再発期間は肺;46.7%, 40.6ヵ月, 骨; 17.8%, 26.1ヵ月. 後腹膜臓器; 11.1%, 18.6ヵ月, 肝;6.7%, 38.0ヵ月, 甲状腺; 4.4%, 51.0ヵ月, 脳; 2.2%, 31.0ヵ月, 多臓器転移: 6.7%, 48.0ヵ月であった. pT1およびpT2再発例は, その多く (89%) が経過観察中に無症状で発見されたが, pT3再発例では約半数 (44.4%) が転移による症状で発見された (p=0.0157). pT1, pT2における初発転移部位の内, 肺転移の占める割合は50%以上を占めていたが, pT3では6例33%とやや低い頻度であった. しかし, pT3では後腹膜臓器と肝への再発率がpT1, pT2よりも高い傾向を認めた.
    (結論) 悪性腫瘍の術後経過観察は再発の早期発見が主目的である事はいうまでもないが, 同時に cost-effectiveness を重視したものでなくてはならない. 今回の検討では腎細胞癌の再発の危険性と再発部位は, 原発巣の病期に依存しており, 病期が進行する程再発率は増加し, 再発期間は短縮する傾向を認めた. 従って, 術後の経過観察は病期別に考慮されるべきであると考えられた.
  • 川西 泰夫, 木村 和哲, 山口 邦久, 中逵 弘能, 岸本 大輝, 小島 圭二, 山本 明, 沼田 明, 十河 泰司
    2000 年 91 巻 12 号 p. 708-714
    発行日: 2000/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景) 勃起は血流動態に依存する機能であるので, 勃起不全は全身性動脈閉塞性疾患と関連の高い疾患であると予想される. 特に虚血性心疾患は重要であると思われるが, これまで十分な検討が行われていない.
    (対象と方法) 勃起不全を主訴に受診した58例を対象として虚血性心疾患に関する検討を行った. 勃起誘発試験とカラードプラ検査装置による海綿体動脈の血流測定を施行した. 虚血性心疾患の既往のある症例には循環器検査について主治医に照会し, 虚血性心疾患の既往のない症例には胸部レントゲン写真, 安静時心電図検査, 負荷心電図検査を行った. 必要に応じて心臓超音波検査, トレッドミル負荷心電図検査, エルゴメーター負荷心筋シンチグラフィ検査, 冠動脈造影検査を行った.
    (結果) 58例のうち18例, 31.0%が虚血性心疾患もしくはそのハイリスク群と診断された. これら18例のうち16例が1つ以上の虚血性心疾患の危険因子を有しており, 高年齢, 高脂血症, 糖尿病が有意な因子であった. 海綿体動脈の収縮期最大血流速度が35cm/sec. 以上の症例の3.7%が, 35cm/sec. 未満の症例の54.8%が虚血性心疾患もしくはそのハイリスク群であった.
    (結論) 勃起不全患者が虚血性心疾患を合併している頻度は高い. 海綿体動脈の血流速度が低値の症例や危険因子を有する症例に勃起不全の治療を行う場合には運動負荷試験を行い, 虚血性心疾患の有無を診断するべきである.
  • 膀胱蓄尿状態による仙髄反射活性の変化に関する検討
    海法 康裕, 浪間 孝重, 内 啓一郎, 中川 晴夫, 相沢 正孝, 竹内 晃, 西村 洋介, 大沼 徹太郎, 折笠 精一
    2000 年 91 巻 12 号 p. 715-722
    発行日: 2000/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 球海綿体反射の誘発電位反応 (BCR-EP: evoked potential of bulbocavernosus reflex) を用いて, 蓄尿期 (横紋筋性尿道括約筋の収縮時) の仙髄反射活性を膀胱空虚時と対比して検討した.
    (対象と方法) 正常男性11例と脊髄損傷 (C3~C7) による神経因性膀胱男性13例 (完全脊髄損傷5例, 不完全脊髄損傷8例) を対象とした. 陰茎背神経を電気刺激し, 尿道周囲横紋筋から導出したBCR-EPを, 膀胱空虚時と蓄尿 (膀胱充満) 時にそれぞれ測定して, 振幅の変化について検討した. また, 膀胱充満がおよぼす振幅の変化について, 膀胱充満時振幅/膀胱空虚時振幅比を求めて, 正常例とSCI例間で比較検討した.
    (結果) 膀胱空虚時に比し充満時には, 正常例および脊髄損傷例ともに有意な振幅の増大を認めた. さらに, 脊髄損傷例の膀胱充満時振幅/膀胱空虚時振幅比は4.73±3.90, 正常例のそれは1.32±0.44で, 脊髄損傷例では膀胱充満による振幅の増大が顕著であった.
    (結語) 正常例及び脊髄損傷例ともに膀胱充満によって仙髄反射活性は亢進し, さらに, 脊髄損傷例は正常例より亢進が顕著であった. 従来の球海綿体反射の有無による仙髄反射弓の妥当性の評価に加え, 膀胱充満による球海綿体反射の変化を観察することで, 仙髄と上位排尿中枢との連続性を評価できると考えられた.
  • 野澤 宗裕, 斉藤 延治, 深澤 瑞也
    2000 年 91 巻 12 号 p. 723-726
    発行日: 2000/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は29歳独身男性. 残尿感と会陰部痛を主訴に当科を受診. 超音波検査上, 膀胱内右側に嚢胞性変化を認め, CT, MRI検査では右腎の欠損と右尿管下端の嚢胞様拡張, それに連続した右精嚢腫大を認めた. 腰椎麻酔下に膀胱尿道鏡を施行したところ, 三角部右側に多数の水胞を有する隆起性病変を認め, 右尿管口は確認できなかった. レゼクトスコープで嚢胞壁を径10mm程切除減圧した. 嚢胞造影では精嚢に連続する右尿管がL5のレベルで盲端に終わっており, 嚢胞内容物に精子と多数の古い赤血球を認めた. また, 切除した嚢胞壁の膀胱粘膜は前立腺組織を含んでいた. 尿管異所開口は, 胎生期に中腎管屈曲部より起こる尿管芽の発生異常が原因であり, 同側無形成を伴ったものは稀である. さらに膀胱内に異所性前立腺組織を合併した症例の報告はなく1例目である.
  • 西川 全海, 片岡 晃, 湯浅 健, 岡本 圭生, 若林 賢彦, 吉貴 達寛, 岡田 裕作
    2000 年 91 巻 12 号 p. 727-730
    発行日: 2000/12/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    症例は65歳, 男性. 糖尿病性腎症による慢性腎不全にて12年間血液透析を受けていた. 1999年6月2日, 右側腹部痛および肉眼的血尿を主訴として当科を受診した. 腹部超音波検査, 腹部CTおよびMRI検査にて両側腎に多発性嚢胞と右腎および腎周囲に著明な血腫がみられたが, あきらかな腫瘍性病変は認められなかった. 止血のため腎動脈塞栓術を施行後, 右腎摘除術を行ったところ, 病理組織診断にて血腫内に腎細胞癌を認めた. 自然腎出血を契機として発見されたACDKに合併する腎細胞癌は本邦では2例目である. 出血を呈したACDKの診断と治療にあたっては, 腎細胞癌の合併を念頭に入れ, 可能な限り積極的な治療を考慮すべきであると考えた.
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