日本泌尿器科学会雑誌
Online ISSN : 1884-7110
Print ISSN : 0021-5287
ISSN-L : 0021-5287
最新号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
原著
  • 関戸 哲利, 橘田 岳也, 仙石 淳, 高橋 良輔, 乃美 昌司, 松岡 美保子, 三井 貴彦
    2023 年 114 巻 2 号 p. 35-52
    発行日: 2023/04/20
    公開日: 2024/04/20
    ジャーナル フリー

    (目的)The Neurogenic Bladder Symptom Score(NBSS)の標準版と短縮版の日本語訳の作成

    (対象と方法)英語版NBSSの日本人医療従事者と非医療従事者による順翻訳,英語を母国語とする2名の翻訳者による逆翻訳,翻訳参加者によるハーモナイゼーション,脊髄障害患者15名を対象とした患者インタビューを行った.

    (結果)順翻訳,逆翻訳,ハーモナイゼーションの段階では,英語と日本語の構文の違いに起因する部分以外に,翻訳上大きな問題となった質問文や選択肢はなかった.患者インタビューにおいて,NBSSへの回答所要時間の中央値は,標準版が7.0分,短縮版が3.0分であった.質問票への回答が難しかったとした対象者はいなかったが,質問10(短縮版では質問7)の質問文,質問19と22の選択肢に関する指摘がそれぞれ,6名,3名,5名からあり,開発者と逆翻訳者への照会を行いつつ日本語訳を確定した.

    (結論)多段階の検討過程を経て,言語的に妥当と考えられるNBSSの日本語訳である神経因性膀胱症状スコア日本語訳 version 1.0の標準版と短縮版が完成した.本質問票が活用され,神経因性下部尿路機能障害患者の患者報告アウトカムに関する研究がより一層推進されることが望まれる.

  • 北原 遼, 平形 志朗, 松本 侑樹, 杵渕 芳明
    2023 年 114 巻 2 号 p. 53-56
    発行日: 2023/04/20
    公開日: 2024/04/20
    ジャーナル フリー

    (目的)当院では2019年7月より前立腺肥大症の外科的治療として接触式レーザー前立腺蒸散術(CVP)を導入,2021年4月までに45例へ施行した.

    (対象と方法)術前,術後1,3カ月でのIPSS,QOLスコア,Qmax,残尿量を比較した.

    (結果)術前術後1カ月,3カ月で比較しIPSS,QOLスコア,尿流測定,残尿量のそれぞれの項目で統計学的有意差(p<0.05)を持って改善を認めた.有害事象に関して初期に外尿道口狭窄を5例認めたが,後出血は2例,一過性尿閉は3例と少数であった.

    (結論)高齢者や抗血栓薬内服患者を含む地方病院の患者集団に対してもCVPは比較的安全に施行できた.

症例報告
  • 阿南 公輝, 黒田 健司, 瀬川 裕平, 新地 祐介, 辻田 裕二郎, 堀口 明男, 伊藤 敬一
    2023 年 114 巻 2 号 p. 57-60
    発行日: 2023/04/20
    公開日: 2024/04/20
    ジャーナル フリー

    症例は63歳男性.金属製指輪を陰茎にはめたところ,抜去不能となり陰茎腫脹を主訴に来院した.来院後リングカッターを用いて指輪の切断を試みたが切断不能であったため,string methodと呼ばれる手技を参考に陰茎の脱血を試みた.18G針2本を亀頭から陰茎海綿体に穿刺し用手的に脱血したところ,徐々に腫脹の改善が認められ指輪を切断することなく抜去することができた.絞扼時間は約5時間であった.自排尿を確認したのちに帰宅とし,その後の外来診察でも排尿障害等の明らかな後遺症のないことが確認された.

    本邦で報告された指輪等の硬性絞扼物による陰茎絞扼症では,ほとんどの症例で絞扼物の破壊が行われており,本症例のように陰茎穿刺・脱血により絞扼を解除した症例は稀である.陰茎穿刺・脱血は本邦ではあまり採用されていない手技だが,初期治療室において早急かつ低コストでの実施が可能であるため,硬性絞扼物による陰茎絞扼症に対して最初に試みてもよい手技であると考えられる.

  • 和田里 章悟, 市川 孝治, 平沢 晃, 白石 裕雅, 徳永 素, 窪田 理沙, 久住 倫宏, 津島 知靖, 神農 陽子, 古屋 充子
    2023 年 114 巻 2 号 p. 61-65
    発行日: 2023/04/20
    公開日: 2024/04/20
    ジャーナル フリー

    Birt-Hogg-Dubé(BHD)症候群には未診断の病的バリアント保持者も多く存在すると推定される.腎癌を契機にBHD症候群と確定診断した患者の無症状家系員に対し,遺伝学的検査を施行した経験を報告する.発端者は実父に大腸癌,自然気胸の家族歴を有する65歳女性.近医で行われた超音波検査で左腎臓に腫瘤を指摘された.左腎上極から突出する10cm大の腫瘍と右腎の長径1.5cm大の埋没型腫瘍はそれぞれ腎癌が否定できない所見であった.両側の腎臓には多数の血管筋脂肪腫を疑う病変も認め,両側の多発性肺囊胞も指摘されたが,腎癌の転移を疑う所見はなかった.腹腔鏡下根治的左腎摘除術を施行し,右腎腫瘍は小径のため経過観察とした.左腎腫瘍は嫌色素性腎癌であった.局所再発や転移性病変の出現は認めず右腎腫瘍径の増大も無く経過した.腎癌と多発性肺囊胞からBHD症候群を念頭にfolliculin(FLCN)遺伝学的検査を施行した.サンガー法ではバリアントは認められなかったが,次世代シークエンサーによりexon 14の部分的な欠損が指摘され,既報のない病的バリアントを原因としたBHD症候群と診断した.診断当時は無症状の家系員に対する遺伝学的検査は行えず,一般的な検査等で経過をみていくように指示した.手術より3年後,当院で遺伝診療が可能になり,再度の情報提供を行った.結果,次女の病的バリアントが確定し,定期的な画像検査による健康管理を行っていく方針となった.

  • 佐井 裕紀, 加藤 久美子, 百田 絢子, 松山 愛佳, 黒須 春香, 加藤 隆, 井上 聡, 平林 裕樹, 鈴木 省治
    2023 年 114 巻 2 号 p. 66-69
    発行日: 2023/04/20
    公開日: 2024/04/20
    ジャーナル フリー

    中部尿道スリング手術は女性腹圧性尿失禁の標準手術と評価されているが,メッシュ合併症のリスクに関しインフォームドコンセントと医療従事者への啓発が必要である.症例は59歳閉経後女性.当科で15年前にTVT手術を実施していた.5年前から不正性器出血が起こり,総合病院婦人科で腟壁びらんを指摘され当院紹介となった.内診で前腟壁に索状物を触知し,膀胱鏡を使った腟壁観察でメッシュ露出を確認した.腟壁メッシュ露出の診断で経腟的メッシュ部分切除を行った.術後6カ月の経過観察でメッシュ露出や腹圧性尿失禁の再発はない.本邦報告は少ないが,中部尿道スリング手術においては,術後長期間を経てメッシュ露出が起こる可能性に注意する必要がある.

  • 吉武 倫太郎, 馬塲 雅人, 窪田 成寿, 影山 進, 河内 明宏
    2023 年 114 巻 2 号 p. 70-74
    発行日: 2023/04/20
    公開日: 2024/04/20
    ジャーナル フリー

    症例は76歳,女性.発熱,膀胱刺激症状で当科紹介受診となった.CTで膀胱左前壁に不均一な腫瘤性病変を認め,病変内部には線状の高吸収陰影を含んでいた.当初は尿膜管癌や軟部肉腫等の悪性腫瘍を疑ったが,過去のCTを確認すると,線状高吸収陰影が腸管内から膀胱周囲へと経時的に移動していたことが確認できた.異物による膿瘍形成等の良性疾患を考え,経尿道的に生検を行う方針とした.病理結果は膿瘍形成の所見であった.誤飲魚骨の迷入による膀胱周囲膿瘍と診断し,抗菌薬治療を行うことで病変は著明な縮小を認めた.悪性疾患との鑑別が困難であったが,画像検査による適切な診断により侵襲的な治療を回避できた.

feedback
Top