日本泌尿器科学会雑誌
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107 巻, 4 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
原著
  • 千葉 量人, 鎌田 修平, 山本 賢志, 岡東 篤, 井上 敏史, 野積 和義, 宮崎 兼考, 井上 淳, 木藤 宏樹, 永田 真樹, 角田 ...
    2016 年 107 巻 4 号 p. 215-219
    発行日: 2016/10/20
    公開日: 2017/10/24
    ジャーナル フリー

    (目的) 腫瘍径7cmを越える腎癌に対する腹腔鏡下手術は習熟した術者により注意深く行うべきとされる.我々は上記腎癌に対する腹腔鏡下腎摘術の治療成績および長期予後を検討した.

    (対象) 1993年4月から2014年3月までに当院で手術を施行した7cmを越える腎癌症例79例を腹腔鏡下群37例と開腹群42例に分けて検討した.

    (結果) 腹腔鏡下群と開腹群で平均年齢(62.2歳vs 60.3歳)平均BMI(24.1 vs 23.4)平均腫瘍径(86.5mm vs 94.6mm)に有意差は認めなかった.手術時間は腹腔鏡下群が有意に長く(204分vs 168分:p<0.05),出血量は開腹群が有意に多かった(144ml vs 930ml:p<0.05).

    術後合併症は腹腔鏡下群で4例(10.8%),開腹群で10例(23.8%)認めたが統計学的有意差は認めなかった.Stage II,III症例の2年無再発生存率は腹腔鏡下群で85.6%,開腹群で83.8%と有意差を認めなかった.

    (結論) 大きな腎癌に対する腹腔鏡下手術は手術時間では劣るものの出血のコントロールでは優れていると考えた.また開腹手術と同等の制癌性を有し安全性も担保される手技と考えた.

  • 寒野 徹, 久保田 聖史, 大塚 一雄, 坂元 宏匡, 西山 隆一, 種田 倫之, 岡田 崇, 赤尾 利弥, 東 義人, 山田 仁
    2016 年 107 巻 4 号 p. 220-226
    発行日: 2016/10/20
    公開日: 2017/10/24
    ジャーナル フリー

    (目的) 局所浸潤性膀胱癌や悪性度の高い難治性膀胱癌に対する腹腔鏡下膀胱全摘除術(LRC)は本邦おいても標準治療となりつつあるが,中長期の制癌効果に関する報告は未だ不十分である.我々は以前にLRC初期30例の治療成績を合併症と短期の制癌効果に関して報告しているが,今回は更に30例の経験を加え,LRC 60例における中期制癌効果などの治療成績を検討した.また初期30例と今回追加した30例を比較し,術式変更の効果を検討した.

    (対象と方法) 2005年3月より2015年9月までに当院で施行したLRC 60例を対象とし,手術成績,制癌効果を検討した.またLRCの術式変更の効果を初期30例と後期30例を比較して検討した.

    (結果) LRC 60例において合併症を47%に認め,18%はClavien分類III以上の合併症であった.5年非再発生存率,癌特異的生存率,全生存率はそれぞれ56.2%,74.4%,63.6%であった.再発は19例(32%)に認め,遠隔転移のみの再発が12例,局所のみの再発が6例,遠隔転移と局所再発の両方が1例であった.術式変更の効果に関しては後期30例において出血量は減少し,術後早期に食事開始可能であった.

    (結論) LRCは中期制癌効果に関しても開腹術と比較して遜色なく,安全に施行可能であると考えられた.

  • 青木 勝也, 堀 俊太, 森澤 洋介, 中井 靖, 三宅 牧人, 穴井 智, 鳥本 一匡, 米田 龍生, 田中 宣道, 吉田 克法, 藤本 ...
    2016 年 107 巻 4 号 p. 227-232
    発行日: 2016/10/20
    公開日: 2017/10/24
    ジャーナル フリー

    (目的) 前部尿道狭窄に対する初期治療として施行した内尿道切開術や尿道ブジーによる拡張術で改善しなかった前部尿道狭窄症に対する尿道再建術の術式選択および治療成績について検討を行った.

    (対象と方法) 先行治療として内尿道切開または尿道ブジーによる拡張が行われた後に再狭窄を来した12例(小児3例,成人9例)を対象とした.狭窄原因は医原性4例,特発性4例,尿道下裂術後3例,カテーテル自己抜去による外傷性1例であった.11例では平均2.5回(1~5回)の内尿道切開が施行されていた.膀胱瘻管理は4例で行われていた.

    (結果) 端々吻合を4例(1例に球部尿道延長を追加),augmented anastomotic urethroplastyを1例,包皮内板フラップ利用onlay法を3例,tubed法を1例,口腔粘膜グラフト利用onlay法を3例に施行した.端々吻合例を除く尿道再建術の形成尿道長は平均42.5mm(20~90mm)であった.尿流量測定検査による術後最大尿流率は平均18.0ml/sec.(9.3~34.3ml/sec.)で,術前と比較して明らかな改善を認めた(p<0.0001).術後合併症は2例に皮下膿瘍を認めたが,保存的治療にて改善した.

    (結語) 尿道形成術には多くの術式があり症例に応じて選択する必要があるが,難治性前部尿道狭窄に対する再建術として有用である.

  • 竹下 英毅, 川上 理, 立花 康次郎, 平沼 俊亮, 杉山 博紀, 張 英軒, 矢野 晶大, 岡田 洋平, 永松 秀樹, 諸角 誠人, 山 ...
    2016 年 107 巻 4 号 p. 233-238
    発行日: 2016/10/20
    公開日: 2017/10/24
    ジャーナル フリー

    (目的) 精巣捻転症は,診断治療が遅れると精巣を喪失するため,臨床的社会的に重要な救急疾患である.近年,精巣捻転と外気温との関連が指摘されているが,その詳細は明らかでない.今回,急性陰囊症手術症例を後方視的に集計し,精巣捻転発症と外気温との関係について検討を行った.

    (対象と方法) 対象は2004年10月から2014年10月までに精巣捻転症が否定できず,手術が行われた急性陰囊症105例.患者病歴より年齢・居住地域・発症日時・手術検査所見等の情報を収集した.発症日の外気温は,気象庁ホームページより居住地域に最も近い気象台のデータを用いた.χ2乗検定,ウィルコクソンの順位和検定,ロジスティック回帰分析で解析を行った.

    (結果) 年齢中央値13(1~43)歳,患側は右側46例,左側58例,両側1例であった.術中所見で67例が精巣捻転症,38例が非精巣捻転症と診断された.発症日平均外気温は捻転群で中央値10.8℃(1.8~29.4℃),非捻転群で19.4℃(1.9~29.1℃)あり,捻転群で有意に低かった(p=0.006).精巣捻転症の割合は,発症日平均外気温が15℃未満の場合45/56(80%)で同15℃以上での22/49(45%)と比べ有意に高頻度であった(p<0.001).また平均外気温15℃以上でも,最高最低気温の差(日内気温差)が10℃以上の場合に13/21(62%)で,同10℃未満の9/28(32%)と比べ精巣捻転症が高頻度であった(p=0.037).多変量解析の結果,年齢・血清CRP値・発症日外気温が急性陰囊症手術症例中から精巣捻転症を予測する有意な因子であった.

    (結論) 低外気温または日内気温差が大きい日の急性陰囊症は,精巣捻転症の可能性が高く,注意すべきである.

  • 富永 悠介, 片山 聡, 安東 栄一, 竹中 皇, 近藤 捷嘉
    2016 年 107 巻 4 号 p. 239-244
    発行日: 2016/10/20
    公開日: 2017/10/24
    ジャーナル フリー

    (目的) 救急における泌尿器疾患の臨床統計を行った.

    (方法) 2013年1月から2014年12月までの2年間に当院救急外来を受診し,泌尿器疾患と診断された1,480例を対象とした.検討項目は,性別,年齢,主訴,救急区分,受診経路,入院の有無,検査内容,診断名とした.さらに初診患者のうち,泌尿器科でフォローアップされた症例において正診率を検討した.

    (結果) 泌尿器疾患は全体の2.6%であり,男女比は1.5:1であった.年齢は0歳から101歳まで(中央値53歳)であり,入院を必要とした症例は17.8%であった.診断は尿路結石(546例),膀胱炎(220例),腎盂腎炎(137例)の順に多かった.泌尿器疾患の正診率は72.3%であった.疾患別では尿路結石(91.2%),前立腺肥大症(75.0%),腎盂腎炎(71.9%)の順に高く,一方で精巣捻転(0%),泌尿器腫瘍(26.7%),前立腺炎(35.7%),精巣上体炎(35.7%)などは低かった.

    (結論) 泌尿器疾患の82.2%が入院を必要としない軽症例であった.急性陰囊症の正診率が低く,救急部での診断・対応は困難であった.我々泌尿器科医も救急部と連携を図り,急性陰囊症の迅速なコンサルテーションを注意喚起することが必要である.

症例報告
  • 安井 将人, 服部 裕介, 植村 公一, 石田 寛明, 寺西 淳一, 湯村 寧, 三好 康秀, 近藤 慶一, 上村 博司
    2016 年 107 巻 4 号 p. 245-250
    発行日: 2016/10/20
    公開日: 2017/10/24
    ジャーナル フリー

    (症例1) 31歳女性.妊娠19週時に高血圧を指摘され,精査にて左副腎腫瘍を認めた.血中・尿中カテコラミンが高値を示し,褐色細胞腫と診断した.ドキサゾシン4mg/日内服で血圧はコントロール良好であり,妊娠34週で帝王切開にて分娩した.出産2カ月後に後腹膜腔鏡下副腎摘除術を施行した.術後血圧は安定して経過している.

    (症例2) 31歳女性.妊娠初期より動悸・頭痛を認め,妊娠29週で症状増悪し,血中・尿中カテコラミン高値とMRIで下大静脈背側に腫瘍を認め,異所性褐色細胞腫と診断された.ドキサゾシン4m/日,ラベタロール塩酸塩200mg/日にて血圧管理を行い,妊娠35週で帝王切開にて分娩した.出産1カ月後に開腹後腹膜腫瘍切除術を施行した.術後は降圧薬内服せず血圧は安定して経過していたが,術後7年後に同部位に再発を認め,再び開腹後腹膜腫瘍切除術を施行した.その後,再発無く経過している.

    妊娠中に発見された褐色細胞腫の本邦報告例は少なく,母児ともに高い死亡率を示すとの報告もあるが,2例とも術前に十分な血圧管理を行い,二期的に腫瘍摘出術を施行することで母児ともに良好な経過を得た.

  • 黒瀬 浩文, 植田 浩介, 大西 怜, 小笠原 尚之, 築井 克聡, 陶山 俊輔, 西原 聖顕, 名切 信, 松尾 光哲, 末金 茂高, 井 ...
    2016 年 107 巻 4 号 p. 251-255
    発行日: 2016/10/20
    公開日: 2017/10/24
    ジャーナル フリー

    後腎性腺腫(metanephric adenoma)は極めて稀な腎良性腫瘍であり,画像診断では悪性腫瘍との鑑別が困難である.今回我々は,2例の後腎性腺腫を経験したので報告する.症例1は57歳,女性.検診時の腹部超音波検査にて右腎腫瘍を指摘され当科受診.造影CTにて右腎上極に造影早期相で造影増強効果は乏しく,経時的に不均一な造影効果を示す26mm大の腫瘤性病変を認めた.右腎細胞癌(cT1aN0M0)の術前診断にて腹腔鏡下右腎部分切除術を施行した.症例2は79歳,女性.両側乳癌術後の腹部CTにて偶発的に左腎腫瘍を指摘された.左腎中極腹側に不均一な造影効果を示す24mm大の腫瘤性病変を認めた.左腎細胞癌(cT1aN0M0)の術前診断にて腹腔鏡下左腎摘除術を施行した.両症例の病理組織診断は共に後腎性腺腫であった.これまでの後腎性腺腫に対する報告においては,術前腎細胞癌との鑑別が困難であり外科的切除が選択されていることが多い.画像検査にて本疾患などの良性腫瘍も疑われる際には,術前の腎腫瘍生検を含めた比較的低侵襲な診断ならびに術式を考慮することが肝要と思われる.

  • 田畑 真梨子, 浦上 慎司, 高橋 真太朗, 阪口 和滋, 池田 勝臣, 黒澤 和宏, 岡根谷 利一, 本間 之夫
    2016 年 107 巻 4 号 p. 256-260
    発行日: 2016/10/20
    公開日: 2017/10/24
    ジャーナル フリー

    (目的) 今回我々はGemcitabin/Docetaxel併用化学療法(GD療法)により著明なPSの改善と画像上約5カ月SDを維持した症例を経験したので報告する.

    (症例) 51歳女性.左側腹部腫瘤を主訴に受診,MRIとCTにて左後腹膜に巨大腫瘤を認めた.後腹膜腫瘍切除術を施行,粘液型脂肪肉腫,FNCLCC分類Grade2であった.術後2カ月に局所再発および腹膜播種が出現,急速に増大し術後5カ月には腹部膨満による食思不振,左胸水貯留が出現した.GD療法(4週1サイクルとしてGEM:800mg/m2をday 1, 8に,DTX:60mg/m2をday 8に投与.)を4コース施行.腹囲縮小や左胸水減少により食事摂取可能となりPSは施行前3から施行後1まで改善した.

    (結論) GD療法は平滑筋肉腫や多形型脂肪肉腫などでその有効性が確認され,欧米のガイドラインで治療の第一選択として推奨されている.今回,再発粘液型脂肪肉腫症例に対してGD療法を施行したところ,一定期間のSD維持と明らかなPS改善を認めた.

  • 袴田 康宏, 神田 裕佳, 杉浦 皓太, 今井 伸, 米田 達明
    2016 年 107 巻 4 号 p. 261-265
    発行日: 2016/10/20
    公開日: 2017/10/24
    ジャーナル フリー

    症例は65歳男性.肉眼的血尿を認め近医受診しCTにて多発肺腫瘤,膵頭部腫瘤,骨硬化像を認め,血液検査でPSA著明高値であり当院消化器内科,泌尿器科に精査加療目的で紹介となった.当科受診時の直腸診では左葉中心に硬結を触知し,前立腺針生検で左葉よりGleason score 4+4=8の腺癌を認めた.造影CTでは多発肺腫瘤,膵頭部に造影効果の乏しい腫瘤を認め,骨シンチでは多発骨転移を認めた.膵MRIでは膵頭部に18mm大の腫瘤を認め腫瘤より末梢側の主膵管は拡張していた.膵腫瘤は原発性膵癌の他,転移性膵癌の可能性を考えた.前立腺癌の治療を優先し,膵頭部腫瘤に対する組織診断はビカルタミド・デガレリクスによるアンドロゲン遮断療法(ADT:androgen deprivation therapy)の効果をみて行うこととし,その間腹部超音波検査を2~4週間の頻度で行い膵頭部腫瘤を経過観察していたが,治療により膵頭部腫瘤は7mmに縮小し,膵頭部腫瘤は前立腺癌の膵転移と判断した.現在もADTを継続中である.

  • 森 啓一郎, 木村 高弘, 鈴木 英訓, 後藤 博一, 小野寺 昭一, 頴川 晋
    2016 年 107 巻 4 号 p. 266-270
    発行日: 2016/10/20
    公開日: 2017/10/24
    ジャーナル フリー

    症例は78歳,男性.前医にてPSA高値で経過観察されており,過去に前立腺針生検歴が2回施行あり,いずれも悪性所見を認めていない.尿閉を主訴に当科初診した.直腸診および超音波検査で悪性所見は認めず,前立腺体積は30ccであった.前立腺肥大症の診断で経尿道的前立腺切除術を施行した.病理組織診断では癌腫と肉腫の混在を認め前立腺carcinosarcomaと診断された.前立腺carcinosarcomaは稀な疾患であり,本症例は本邦17例目であった.また癌腫は扁平上皮癌を主としており本邦では初の報告となる.術後急速な病状の進行を認め,5カ月の経過で死亡している.

  • 馬塲 雅人, 富田 圭司, 吉田 哲也, 影山 進, 上仁 数義, 成田 充弘, 河内 明宏
    2016 年 107 巻 4 号 p. 271-275
    発行日: 2016/10/20
    公開日: 2017/10/24
    ジャーナル フリー

    症例は25歳,男性.主訴は左陰囊痛.小学生の頃より左右の精巣の大きさや形状の違いを自覚していたが,放置していた.2011年1月,陰囊痛を自覚し当科受診,触診で左陰囊に有痛性の表面平滑な硬い腫瘤を認めた.採血上,精巣腫瘍マーカーは正常で,超音波断層検査では正常精巣を圧排する形で,陰囊内に囊胞性病変と結節病変を認めた.造影MRIで多囊胞性病変と内部に出血性変化,充実性の結節病変を認めた.以上より,良性腫瘍を疑い精巣温存手術を予定し,術中迅速病理診断で悪性であれば高位精巣摘除術に移行することとした.精巣を冷阻血し,腫瘍を核出した.術中迅速病理診断は成熟奇形腫で,悪性所見がないことより予定通り正常精巣組織を温存した.全割病理検査の結果は単一型成熟奇形腫であった.術後5年経過して再発を認めていない.成人においても,思春期以前に発症したと考えられる成熟奇形腫に対しては精巣温存手術も考慮できる.

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